SNSやネット掲示板で「今日も一日がんばるぞい!」というフレーズを目にしたことはありませんか?朝の挨拶代わりに使われたり、仕事前の気合入れとして投稿されたり、今やすっかりネット上に定着したこのセリフ。実はあるマンガのたった1コマから生まれたインターネットミームなんです。
この記事では、「がんばるぞい」の意味や元ネタ、なぜここまで爆発的に流行したのかを詳しく解説していきます。
「がんばるぞい」の意味
「がんばるぞい」は、漫画『NEW GAME!』の主人公・涼風青葉(すずかぜ あおば)が作中で発したセリフ「今日も一日がんばるぞい!」が元ネタのインターネットミームです。2014年にTwitter上で爆発的に広まり、今では「今日も一日頑張ろう」という気持ちを表すネットスラングとしてすっかり定着しています。
朝の挨拶代わりにSNSに投稿したり、仕事や勉強の前に気合を入れるときに使ったりと、使い方は自由。「頑張るぞ」だと力みすぎるけれど、「がんばるぞい!」なら力が抜けていてゆるく使えるのがポイントです。本気で気合を入れたいときも、ちょっとしたネタとしても、どんな場面でも使える万能さが人気の理由になっています。
ちなみに「ぞい」は終助詞「ぞ」に「い」が付いた言葉で、大辞林によると江戸時代から柔らかみを持たせる表現として使われてきました。金沢や福島の方言にも見られるほか、フィクションではアニメ『星のカービィ』のデデデ大王や『名探偵コナン』の阿笠博士など、おじいちゃんキャラの語尾としてもおなじみです。
元ネタは漫画『NEW GAME!』のワンシーン
「今日も一日がんばるぞい!」の元ネタは、得能正太郎(とくのう しょうたろう)による4コマ漫画『NEW GAME!』の主人公・涼風青葉(すずかぜ あおば)のセリフです。
『NEW GAME!』は『まんがタイムきららキャラット』(芳文社)にて2013年7月号から連載が開始され、2021年10月号で完結した作品です。単行本は全13巻で、2021年3月時点でシリーズ累計発行部数320万部を突破しています。2016年と2017年にはテレビアニメ版が放送され、大きな話題となりました。
作品の舞台はゲーム会社「イーグルジャンプ」。高校を卒業したばかりの青葉が、幼い頃に大好きだったゲームを作った会社に就職し、キャラクターデザイナーとして働きながら成長していく姿を描いた「お仕事4コマ」です。作者の得能正太郎氏自身も約2年間ゲーム会社で働いた経験があり、その実体験が作品に活かされています。
問題の「がんばるぞい」シーンは、単行本第1巻の82ページに登場します。青葉がゲーム会社に出勤してデスクに着いたとき、気合を入れるように「今日も一日がんばるぞい!」とつぶやくという、何気ない1コマです。実は物陰にいた先輩の八神コウから「ぞいってなに?」と笑われていたことには、青葉本人は気づいていません。アニメ版では第1期第4話でこのシーンが映像化されました。
重要なのは、このセリフは作中でこの1回きりしか登場しないという点です。青葉は普段「ぞい」という語尾を使うキャラクターではなく、このシーンだけの特別な一言でした。
なぜ「がんばるぞい」はここまで流行したのか
きっかけはTwitterでの画像拡散
単行本第1巻は2014年2月27日に発売されましたが、「がんばるぞい」が話題になり始めたのは約3ヶ月後の2014年5月末頃からです。青葉が両手を胸の前で握りしめて「今日も一日がんばるぞい!」とつぶやいているコマの画像が、元ネタの情報なしにTwitter上に出回ったのがきっかけでした。
当時、ネット上ではこの画像の出典を突き止められない状態が続きました。Googleの画像検索では、なぜか別の作品のキャラクターと関連づけられていたため、「この可愛い女の子は誰なんだ?」「元ネタは何のマンガだ?」という謎解き状態が発生し、それ自体が拡散の燃料になったのです。
「ぞい」の語感と画像の破壊力
流行の背景には、いくつかの要因が重なっています。
まず、「ぞい」という語感の絶妙さです。「頑張るぞ」だと力みすぎるし、「頑張ろう」だと周囲への圧力にもなりかねません。「がんばるぞい」は、頑張る気持ちを表現しつつも力が抜けていて、本気で頑張る時もネタとしても使える万能さを持っていました。
次に、画像そのものの魅力です。両手をぎゅっと握りしめた可愛らしい女の子のイラストは、SNSのタイムラインを流れてくると思わず目を止めてしまうインパクトがありました。絵の温かみとセリフの親しみやすさがセットになって、人に伝えたくなる力を持っていたんですね。
さらに、「伝聞で広がる言葉は使いやすい」という法則も働きました。自分で「頑張る」と言うのは照れくさくても、キャラクターのセリフとして「がんばるぞい!」と使うなら気軽に言えます。他人の言葉を借りる形になるので、心理的なハードルが低かったわけです。
異例の社会現象に
流行の勢いは凄まじいものでした。漫画ファン向け書店COMIC ZINでは、2014年10月の売上ベスト1を2月発売の『NEW GAME!』第1巻が獲得するという異例の事態が発生。2014年8月から9月にかけては何度重版しても即完売の状態が続き、出版社も問屋も受注停止になるほどの品薄になりました。インターネット上では転売価格が高騰し、作者自ら転売に対する警告を出す事態にまでなっています。
さらに、『まんがタイムきらら』系列の作品としては初となる「未アニメ化時点でのコミックスオリコンランキング入り」も記録。たった1コマのセリフが、作品全体の知名度を一気に押し上げたのです。
そして「今日も一日がんばるぞい」は、ガジェット通信とniconicoが主催する「ネット流行語大賞2014」にもノミネートされました。
作者・得能正太郎氏の反応
作者の得能正太郎氏は、このコマについて「次の場面のための繋ぎとして描いたもので、特に上手く描けたコマという訳でもない」「人気はラッキーパンチに過ぎなかった」と語っています。
また、流行が過熱する中で、2014年10月にはTwitterで「ぞい発言を作中ですることは今後ないです」と明言しました。青葉はもともと「ぞい」が口癖のキャラクターではなく、このセリフだけが独り歩きすることへの懸念があったようです。
ただし、作品外の宣伝では「がんばるぞい」のフレーズが使われることもありました。アニメ版第4話でこのシーンが映像化された際には、得能氏自身がTwitterで関連イラストを公開しています。
アニメ版では作者の意向を尊重しつつ、ファン人気にも応えるという絶妙なバランスが取られました。青葉が何かを決意したり元気を出そうとするシーンで、「がんばるぞい!」とは口にしないものの、同じ両手ガッツポーズの仕草をする演出が何度も登場。オープニングアニメでも第1期・第2期ともにこのポーズが取り入れられています。アニメで青葉を演じた声優の高田憂希氏は、第4話の収録にあたり人気セリフであることを意識して何度も練習していたものの、本番は1回でOKが出たと語っています。
他作品への影響とパロディ
「がんばるぞい」の影響力は『NEW GAME!』の枠を超えて広がりました。
特に有名なのが、大川ぶくぶの4コマ漫画『ポプテピピック』でのパロディです。登場人物のポプ子が「今日も一日がんばるぞい!」を何度も使用するネタが定番化しており、元ネタの『NEW GAME!』ですら1回しか使っていないセリフをあらゆるバリエーションで乱用しています。
アニメ『ポプテピピック』第3話では、ばいきんまんやフリーザの声で知られる声優・中尾隆聖氏がポプ子として「今日も一日がんばるぞい!」を披露するシーンが話題になりました。これには得能正太郎氏も「がんばるぞい見ちゃったわ…」とツイートし、1万件以上のいいねが付くほどの反響がありました。
2021年のリミックス版第3話では中村繪里子氏や斉藤壮馬氏も加わり、さらにバリエーションが増えています。最終話の挿入歌「心の大樹」では、ぞいのポーズをしながら「がんばるぞーい」と歌うシーンまで登場しました。
その他にも、pixivでは2014年6月末頃から「今日も一日がんばるぞい!」タグでのイラスト投稿が急増。当初は『艦隊これくしょん』のキャラクターによるトレスネタが中心で、「NEW GAME!」や「涼風青葉」タグよりも多く使われるという、元ネタよりもミームの方が大きくなる逆転現象が起きていました。
「がんばるぞい」が今も愛される理由
原作漫画は2021年に完結を迎えましたが、「今日も一日がんばるぞい!」というフレーズは今もネット上で現役で使われ続けています。
その理由は、このフレーズが持つ普遍的な魅力にあるのでしょう。誰でも朝は来るし、誰でも「よし、やるか」と自分を奮い立たせる瞬間があります。そんなときに「がんばるぞい!」は重すぎず軽すぎず、ちょうどいい温度感で背中を押してくれます。
元ネタを知っている人にとってはニヤリとできるネタであり、知らない人にとっても意味が伝わる分かりやすさ。この「開かれた」性質こそが、10年以上経った今も色褪せない秘密なのかもしれません。
まとめ
- 「がんばるぞい」は漫画『NEW GAME!』の主人公・涼風青葉のセリフが元ネタ
- 単行本第1巻82ページに登場する、作中でたった1回きりのセリフ
- 2014年5月頃にTwitterで画像が拡散し、爆発的に流行
- 「ぞい」は終助詞「ぞ」+「い」で、江戸時代から使われる柔らかい表現
- 作者の得能正太郎氏は「ラッキーパンチだった」と語り、今後のぞい発言を否定
- ネット流行語大賞2014にノミネートされるなど社会現象に
- 『ポプテピピック』をはじめ、多くの作品でパロディされた
- 原作完結後も、ネットミームとして現役で使われ続けている
参考情報
この記事で参照した情報源
一次資料
- 得能正太郎『NEW GAME!』第1巻(芳文社、2014年2月発売)- 82ページに該当シーン
- 得能正太郎氏のX(旧Twitter)アカウント – 「ぞい発言を作中ですることは今後ないです」(2014年10月28日)
参考にしたメディア記事
- エキサイトニュース「Twitterで大流行『がんばるぞい!』の謎を検証してみるぞい」 – 流行の背景分析
- ウレぴあ総研「意外と知らない『今日も一日がんばるぞい!』の伝説」 – ミームとしての広がりの解説
- よろず〜ニュース「漫画作者・得能正太郎氏が吐露 連載8年半の振り返り」 – 作者インタビュー
- コミックナタリー「NEW GAME!完結報道」 – 連載完結の公式情報
辞典・百科事典
- pixiv百科事典「今日も一日がんばるぞい!」 – ミームの詳細な経緯
- ニコニコ大百科「今日も一日がんばるぞい!」 – ネット文化としての情報
- Wikipedia「NEW GAME!」 – 作品の基本情報・売上データ

コメント