Midori(ミドリ)は、軽量で高速な動作を目的としたオープンソースのウェブブラウザです。
名前の由来は日本語の「緑色」で、その名の通り緑色をイメージカラーとしています。
複雑な歴史を持つこのブラウザは、WebKitからElectron、そして現在のGeckoエンジンへと大きな変遷を遂げてきました。
この記事では、Midoriブラウザの歴史、特徴、メリット・デメリット、論争点まで、中学生でも理解できるよう詳しく解説します。
Midoriブラウザとは
Midoriは、現在Astian, Incが開発・提供している無料のウェブブラウザです。
軽量で高速、プライバシー保護に重点を置いた設計が特徴です。
Midoriの意味と名前の由来
「Midori」という名称は、日本語の「緑色(みどり)」に由来します。
ブラウザのイメージカラーも緑色で、アイコンやUIにも緑が使われています。
日本語由来の名前を持つ数少ない海外開発ブラウザの一つです。
開発元:Astian, Inc
現在のMidoriは、Astian, Incという組織が開発しています。
Astian, Incは、Astian Foundationに属する組織で、フリーソフトウェアとテクノロジーの開発、プライバシーを重視したサービスの提供を専門としています。
Astianは、Midori以外にも以下のようなプロジェクトを展開しています。
- AstianGO(プライバシー重視の検索エンジン)
- Midori VPN(VPNサービス)
- その他プライバシー関連ツール
対応プラットフォーム
Midoriは、以下のプラットフォームに対応しています。
- Windows
- macOS
- Linux(Ubuntu、Fedoraなど)
- Android
- iOS
クロスプラットフォーム対応で、すべてのデバイス間でコンテンツが自動的に同期されます。
Midoriの複雑な歴史
Midoriは、その開発史において何度も大きな変化を遂げてきました。
WebKit時代(2018年以前)
当初のMidoriは、WebKitレンダリングエンジンを採用した軽量ブラウザでした。
特徴
- レンダリングエンジン:WebKit
- ツールキット:GTK+2
- Xfce Goodiesコンポーネントの一部
- 「利用可能なリソースを最大限に活用する」というXfceの原則に従って開発
WebKitは、SafariやOperaなどでも使用されているレンダリングエンジンです。
MidoriはAcid3テスト(ブラウザの標準準拠性を測るテスト)にも合格していました。
WebKit版の機能
- 柔軟なウェブ検索設定
- ユーザースクリプトとユーザースタイルのサポート
- カスタマイズおよび拡張可能なインターフェース
- スピードダイアル
- Maemoのサポート
- C言語による拡張モジュールの作成が可能
WebKit版の課題
プロセスの分離がなされていないなど、安定性に課題がありました。
時々クラッシュするという批判があり、利用可能な拡張の数が少ないことも問題視されていました。
Electron時代(2019年)
2019年、Astian, IncがMidoriを統合し、Electronを用いて再構築しました。
変更点
- レンダリングエンジン:WebKitからBlinkへ変更
- フレームワーク:Electronベース
Electronは、ChromiumとNode.jsを組み合わせたフレームワークで、デスクトップアプリケーションの開発に使われます。
この変更により、WebKitを採用したMidoriは公式サイトからダウンロード不可となりました。
Gecko時代(2023年〜現在)
2023年8月1日、AstianはMidoriにGeckoエンジンを採用すると発表しました。
変更の経緯
- 2023年9月13日:新機能発表
- 2023年9月19日:Linux向け評価版公開
- 2023年10月28日:正式に11.0をリリース
現在のMidori
- レンダリングエンジン:Gecko
- ベース:Mozilla Firefox派生ブラウザの「Floorp」
- バージョン:11.0以降
Geckoは、Firefox、Thunderbirdなどで使用されているMozilla開発のレンダリングエンジンです。
歴史のまとめ
Midoriは以下のような変遷を経ています。
- WebKit時代:軽量を重視した独自開発
- Electron(Blink)時代:クロスプラットフォーム対応の強化
- Gecko(Floorp)時代:Firefoxエコシステムへの参入
それぞれの時代で、エンジンもアーキテクチャも大きく異なるため、実質的には全く別のブラウザと言えるかもしれません。
現在のMidori(11.0以降)の特徴
2023年以降の現行版Midoriの主な特徴を見ていきましょう。
軽量・高速
Midoriは「軽量で高速」を最大の特徴としています。
低スペックのシステムでもスムーズに動作します。
起動が早く、ページのレンダリングも高速です。
CPU負荷、システムメモリ使用量ともに抑えられています。
ユーザーレビューでは「ChromeやFirefoxより軽い」という評価が多く見られます。
プライバシー保護機能
プライバシー保護がMidoriの中核的な特徴です。
情報収集の禁止
開発者(Astian)は、ユーザー情報を商品化しないことを保証しています。
侵襲的な広告やプロファイリングを販売しないと約束しています。
テレメトリなし
Midoriには一切のテレメトリ(使用状況の追跡・送信機能)が含まれていません。
多くのブラウザがデフォルトで有効にしているテレメトリが、Midoriには存在しません。
デフォルト検索エンジン:DuckDuckGo
プライバシーを重視したDuckDuckGo検索エンジンがデフォルトで設定されています。
DuckDuckGoは、ユーザーの検索履歴を追跡せず、プロファイリングを行わない検索エンジンです。
DNS over HTTPS(DoH)
デフォルトでHTTPSブラウジングとDNSナビゲーションが有効化されています。
ISP(インターネットサービスプロバイダー)による追跡を防ぎます。
その他のプライバシー機能
- トラッカーブロック
- 広告ブロック(内蔵)
- マイニングブロック(暗号通貨マイニングスクリプトのブロック)
- クッキーブロック
- 悪意のあるサイトのブロック
Midori VPN
Midori独自のVPNサービスが統合されています。
追加のソフトウェアをインストールすることなく、ブラウザから直接VPN接続を保護できます。
無料プランと有料サブスクリプションが用意されています。
Midori VPNは、ブラウジングだけでなくデバイス全体のトラフィックを保護します。
クラウド同期とストレージ
Astianの独自サービスと統合されています。
エンドツーエンド暗号化を使用して、以下のデータが同期されます。
- ブックマーク
- 履歴
- パスワード
- その他のユーザーデータ
複数デバイス間で常にデータが最新の状態に保たれます。
カスタマイズ性
様々な外観モードが用意されています。
- デフォルトモード
- ライトモード
- ダークモード
その他、各種設定や好みに合わせたカスタマイズが可能です。
タブとウィンドウを効率的に整理する機能があり、異なるラベルやカテゴリを設定できます。
Firefox拡張機能の利用
GeckoエンジンとFloorpベースのため、Firefox拡張機能(アドオン)が使用できます。
豊富なFirefoxエコシステムの恩恵を受けられます。
uBlacklist、その他多くの人気拡張機能がインストール可能です。
オープンソース
Midoriは完全にオープンソースで開発されています。
ライセンスは以下を採用しています。
- MPL(Mozilla Public License 2.0)
- GPL(General Public License)
- AGPL(Affero General Public License)
透明性が高く、誰でもコードを監査、報告、貢献できます。
開発に参加することも可能です。
クリーンなインターフェース
ユーザーフレンドリーで、ナビゲーションを簡素化したクリーンなインターフェースが特徴です。
不要な装飾や複雑な機能を排除し、シンプルさを追求しています。
Midoriのメリット
Midoriを使用する主な利点をまとめます。
軽量で低リソース消費
古いPCや低スペックのシステムでも快適に動作します。
メモリ使用量が少ないため、他のアプリケーションと並行して使用しやすいです。
高いプライバシー保護
テレメトリなし、トラッカーブロック、DuckDuckGoデフォルトなど、徹底したプライバシー保護が特徴です。
個人情報の収集・販売を行わないという明確な方針があります。
無料でオープンソース
完全に無料で、機能制限もありません。
オープンソースなので、コードの透明性が保証されています。
クロスプラットフォーム対応
Windows、macOS、Linux、Android、iOSすべてに対応しています。
デバイス間でデータが同期されます。
Firefox拡張機能が使える
現行版(Gecko)では、Firefox拡張機能が利用できます。
豊富なアドオンエコシステムの恩恵を受けられます。
統合VPN
ブラウザに統合されたVPN機能で、追加ソフトなしでプライバシーを保護できます。
Midoriのデメリットと論争点
一方で、いくつかのデメリットや論争も存在します。
Floorpベース問題と著作権侵害疑惑
現在のMidori(11.0以降)は、日本発のFirefox派生ブラウザ「Floorp」をベースにしています。
問題点
当初、Astian, IncはMidoriが独自開発であると謳っていました。
Floorpがベースであることを公表していませんでした。
2024年7月時点でも、Midoriの公式ページにFloorpの名称は記載されていません。
2024年1月の著作権侵害問題
2024年1月、著作権侵害問題が発生しました。
法的な問題があることが指摘されています。
憶測と批判
ある程度の普及が見込めるが現時点で知名度がないFloorpに、知名度の高いMidoriの名前を付けて独自のブラウザとしてリリースすることで、Floorpの潜在顧客をAstian, Incが奪おうとしているのではないかという憶測があります。
コミュニティでは「実質的にはFloorpの単なるリスキン(見た目を変えただけ)」という批判もあります。
Redditなどでは、「Midoriの『画期的な機能』と宣伝しているものは、結局Floorpの機能そのまま」という指摘があります。
知名度とコミュニティの小ささ
Chrome、Firefox、Safariなどと比べると、ユーザー数が少ないです。
問題が発生した際に、解決方法を見つけるのが難しい場合があります。
日本語の情報も限られています。
複雑すぎる歴史
WebKit→Electron(Blink)→Gecko(Floorp)という変遷があまりにも大きいです。
各時代で実質的に別のブラウザと言えるため、過去の情報が現在のバージョンに当てはまらないことがあります。
古い情報と新しい情報が混在しており、混乱を招きやすいです。
安定性の課題(旧版)
WebKit時代のMidoriは、安定性に課題がありました。
プロセス分離がなされておらず、時々クラッシュするという報告がありました。
現在のGecko版では改善されている可能性がありますが、まだ新しいため評価が定まっていません。
一部サイトとの互換性問題
主流ブラウザではないため、一部のウェブサイトで正常に動作しない可能性があります。
特にFlash再生やビデオ再生で問題があったという報告があります(旧版)。
公式サイトの信頼性
一部のレビューで、Midoriの公式サイトに偽の電話番号((123) 456-7890)が記載されているという指摘があります。
「About us」や「Contact us」ボタンが機能しないという報告もあります。
細部への注意が不足しているのではないかという懸念があります。
類似ブラウザとの比較
Midoriと似たコンセプトのブラウザを比較します。
Floorp
FloorpはMidoriの現在のベースとなっているブラウザです。
違い
- Floorp:日本発、オープンに開発、Floorpとして明示
- Midori:FloorpベースだがそれをWebサイトに明記せず、独自ブラウザとして宣伝
機能面ではほぼ同じと言われています。
Floorpを直接使用することも選択肢の一つです。
Brave
Braveも、プライバシー重視のブラウザです。
違い
- Brave:Chromiumベース、広告ブロック内蔵、独自の報酬システム
- Midori:Geckoベース、VPN統合、より軽量
Braveは知名度が高く、ユーザー数も多いです。
LibreWolf
LibreWolfは、Firefoxベースのプライバシー重視ブラウザです。
違い
- LibreWolf:Firefoxの純粋なプライバシー強化版
- Midori:Floorpベースで独自の付加価値を追加(VPNなど)
LibreWolfは、Firefoxをそのままプライバシー重視にカスタマイズした感じです。
elementary OS Epiphany(旧WebKit版Midoriの代替)
旧WebKit版Midoriは、elementary OSのデフォルトブラウザとして採用されていました。
現在は、Epiphany(GNOMEウェブ)が一般的です。
よくある質問(FAQ)
Midoriに関するよくある質問と回答をまとめました。
Midoriは完全に無料ですか
はい、完全に無料で、機能制限もありません。
オープンソースなので、誰でも自由に使用できます。
Midoriは安全ですか
オープンソースで、プライバシー保護機能も充実しているため、基本的には安全です。
ただし、Floorpベース問題や著作権侵害の過去があるため、開発元の信頼性については慎重に判断する必要があります。
コードはオープンソースなので、専門家が監査することは可能です。
Chrome拡張機能は使えますか
いいえ、現在のMidori(Gecko版)ではChrome拡張機能は使えません。
代わりに、Firefox拡張機能(アドオン)が使用できます。
どのブラウザから乗り換えるのに適していますか
FirefoxやFloorpを使っている方なら、操作感が似ているため乗り換えやすいです。
ChromeやEdgeから乗り換える場合は、UI や拡張機能の違いに慣れる必要があります。
Midori VPNは無料ですか
無料プランと有料サブスクリプションの両方が提供される予定です。
詳細は公式サイトで確認してください。
スマートフォン版もありますか
はい、AndroidとiOS版があります。
Google Play StoreとApp Storeからダウンロードできます。
モバイル版はデスクトップ版と同期可能です。
Midoriは日本語に対応していますか
はい、多言語対応しており、日本語でも使用できます。
UIや設定メニューが日本語化されています。
古いバージョンのMidori(WebKit版)はどこでダウンロードできますか
公式サイトからはダウンロードできなくなっています。
一部のソフトウェアアーカイブサイトには残っている可能性がありますが、セキュリティリスクがあるため推奨されません。
現在のGecko版を使用することをお勧めします。
まとめ
Midori(ミドリ)は、軽量・高速・プライバシー重視を特徴とするオープンソースのウェブブラウザです。
歴史的変遷
- WebKit時代(2018年以前):Xfce Goodiesの一部として開発
- Electron時代(2019年):Astian, IncがBlinkエンジンで再構築
- Gecko時代(2023年〜):FloorpベースのFirefox派生ブラウザに
現在の主な特徴(11.0以降)
- レンダリングエンジン:Gecko(Floorpベース)
- 軽量で高速な動作
- プライバシー保護(テレメトリなし、トラッカーブロック、DuckDuckGoデフォルト)
- 統合VPN機能
- Firefox拡張機能対応
- クロスプラットフォーム(Windows、macOS、Linux、Android、iOS)
- 完全無料・オープンソース
メリット
- 低リソース消費で古いPCでも快適
- 徹底したプライバシー保護
- 無料・オープンソース
- クロスプラットフォーム対応
- Firefox拡張機能が使える
- VPN統合
デメリット・論争点
- Floorpベース問題(当初非公開、独自開発と主張)
- 2024年1月の著作権侵害問題
- 知名度とコミュニティの小ささ
- 複雑すぎる歴史(各時代で実質別ブラウザ)
- 一部サイトとの互換性問題の可能性
- 公式サイトの信頼性への懸念
適している人
- プライバシーを最優先する方
- 軽量ブラウザを求める方
- 低スペックPCを使用している方
- Firefox系ブラウザに慣れている方
- オープンソースソフトウェアを好む方
注意が必要な点
Floorpベースであることを公式に明示していない点、過去の著作権問題など、透明性や信頼性に疑問符が付く部分があります。
実質的にはFloorpのリスキンに近いという指摘もあり、「Floorpを直接使った方が良いのでは」という意見もあります。
一方で、軽量・高速・プライバシー重視という基本的な機能は優れており、特に低スペックPCでの使用には適しています。
最終的には、これらのメリット・デメリットを理解した上で、自分のニーズに合うかどうかを判断することが重要です。
プライバシーとパフォーマンスを重視し、Floorpベース問題を許容できるなら、試してみる価値はあるでしょう。


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