「ブレークポイントを設定したのに、デバッガーが全然止まってくれない…」
VSCodeでデバッグしようとしたら、こんな困った状況に遭遇したことはありませんか?
プログラミング学習やバグ修正で欠かせないデバッグ機能。しかし、ブレークポイントが機能しないと作業効率が大幅に下がってしまいます。
この記事では、VSCodeでブレークポイントが止まらない原因と、実際に効果のある解決方法を10パターン紹介します。
ブレークポイントとは?基本を確認

ブレークポイントは、プログラムの実行を一時停止させるための「目印」です。
デバッグ時に特定の行で処理を止めることで、その時点での変数の値や処理の流れを確認できます。
ブレークポイントの設定方法:
- エディタの行番号の左側(余白部分)をクリック
- 赤い丸が表示されれば設定完了
- F9キーでも設定・解除が可能
正常に機能している場合、デバッグ実行時にブレークポイントで自動的に停止します。しかし、様々な原因で止まらないことがあるのです。
ブレークポイントが止まらない10の原因と解決法
原因1:空行やコメント行に設定している
最も基本的な間違いです。
ブレークポイントは実行可能なコードがある行にしか設定できません。空行やコメントのみの行では機能しません。
解決方法:
- 実際にコードが書かれている行に移動する
- 関数定義の行(
defやfunction)ではなく、関数内の実行文に設定する - コメント行の次の実行可能な行に設定する
悪い例(Pythonの場合):
def calculate(x):
# この関数は計算を行います ← ここに設定しても止まらない
result = x * 2 ← ここなら止まる
return result
原因2:launch.jsonの設定が間違っている
特にPythonの仮想環境(venv)を使用している場合、launch.jsonの設定が重要になります。
解決方法(Python):
.vscodeフォルダ内のlaunch.jsonを開く"justMyCode": trueを"justMyCode": falseに変更- ファイルを保存してデバッグを再実行
設定例:
{
"version": "0.2.0",
"configurations": [
{
"name": "Python: Current File",
"type": "python",
"request": "launch",
"program": "${file}",
"console": "integratedTerminal",
"justMyCode": false
}
]
}
justMyCodeをfalseにすることで、ライブラリ内部のコードも含めてデバッグできるようになります。
原因3:ファイル名やパスに全角文字が含まれている
日本語のファイル名やフォルダ名を使っていると、デバッガーが正しく動作しないことがあります。
解決方法:
- ファイル名を半角英数字に変更
- フォルダパス全体を確認し、日本語を含まないようにする
- プロジェクト全体を英語名のディレクトリに移動
例:
- ❌
C:\ユーザー\プロジェクト\test.py - ✅
C:\Users\project\test.py
原因4:ブレークポイントが無効化されている
VSCodeでは、ブレークポイントを一時的に無効化する機能があります。
確認方法:
- デバッグビュー(Ctrl + Shift + D)を開く
- 左側のBREAKPOINTS(ブレークポイント)セクションを確認
- ブレークポイントの横にチェックマークがあるか確認
無効化されている場合:
- ブレークポイントが灰色の円で表示される
- クリックするか、BREAKPOINTSパネル上部の真ん中のアイコンで全体を有効化
原因5:間違ったファイルをデバッグしている
同じ名前のファイルが複数あると、意図しないファイルが実行されることがあります。
解決方法:
- デバッグ設定の
program項目を確認 ${file}(現在開いているファイル)になっているか- 絶対パスで正しいファイルを指定
launch.json例:
{
"program": "${workspaceFolder}/src/main.py"
}
フルパスで明示的に指定することで、確実に目的のファイルをデバッグできます。
原因6:JavaScriptでソースマップが正しくない
webpack、Babel、TypeScriptなどを使用している場合、ソースマップの設定が原因の可能性があります。
解決方法:
- webpack.config.jsで
devtoolを確認 'source-map'または'inline-source-map'に設定
webpack.config.js例:
module.exports = {
devtool: 'source-map',
// その他の設定...
};
TypeScriptの場合(tsconfig.json):
{
"compilerOptions": {
"sourceMap": true
}
}
原因7:ChromeデバッグでURLが一致していない
ブラウザ上で動作するJavaScriptをデバッグする際、URLの設定が重要です。
解決方法:
launch.jsonのurl設定を確認- ワイルドカード(
*)を使用して柔軟に対応
launch.json例:
{
"type": "chrome",
"request": "launch",
"name": "Launch Chrome",
"url": "http://localhost:3000/*",
"webRoot": "${workspaceFolder}/src"
}
/*を付けることで、サブパスにも対応できます。
原因8:デバッグポートが設定されていない(Chrome連携)
Chromeと連携する場合、デバッグポート付きでChromeを起動する必要があります。
解決方法:
通常のショートカットやリンクからChromeを起動せず、VSCodeからデバッグ起動します。
起動方法:
- F5キーまたは「実行」→「デバッグの開始」
- VSCodeが自動的にデバッグポート付きでChromeを起動
手動で起動したChromeではデバッグ接続できないので注意が必要です。
原因9:Pythonのバージョン問題
特定のPythonバージョンでブレークポイントが機能しないことが報告されています。
確認ポイント:
- Python 3.9以降で問題が発生しやすい
- 32bit版と64bit版の混在
解決方法:
- Ctrl + Shift + P(Macは Cmd + Shift + P)
- 「Python: インタープリターを選択」を実行
- Python 3.8など、安定したバージョンを選択
- VSCodeを再起動
複数バージョンがインストールされている場合、明示的に選択することが重要です。
原因10:C/C++でデバッグ情報が含まれていない
コンパイル時にデバッグ情報を含めないと、ブレークポイントが機能しません。
解決方法(g++の場合):
tasks.jsonで以下のオプションを確認:
{
"command": "g++",
"args": [
"-g",
"-O0",
"${file}",
"-o",
"${fileDirname}/${fileBasenameNoExtension}"
]
}
重要なオプション:
-g:デバッグ情報を含める-O0:最適化を無効にする(最適化されるとブレークポイントが正確に動作しない)
トラブルシューティングの基本手順

上記の対処法を試す前に、以下の基本チェックを行いましょう。
Step 1:デバッグモードで実行しているか確認
- 通常実行(Ctrl + F5)ではブレークポイントは機能しません
- デバッグ実行(F5)を使用してください
Step 2:拡張機能の確認
言語ごとに必要な拡張機能がインストールされているか確認します:
- Python:「Python」拡張機能
- JavaScript/TypeScript:「Debugger for Chrome」または標準デバッガー
- C/C++:「C/C++」拡張機能
Step 3:VSCodeの再起動
設定を変更した後は、VSCodeを完全に再起動すると問題が解決することがあります。
Step 4:デバッグコンソールの確認
デバッグコンソールにエラーメッセージが表示されていないか確認しましょう。エラーメッセージは問題解決の大きなヒントになります。
言語別の注意点
Python特有の問題
- 仮想環境(venv)内にファイルを配置すると動作しないことがある
- 仮想環境の外に移動すると解決する場合が多い
justMyCode設定が重要
JavaScript/TypeScript特有の問題
- ソースマップの生成が必須
- bundler(webpack、parcelなど)の設定確認
webRootパスの正確な設定
C/C++特有の問題
- コンパイルオプションの確認
- デバッグ情報(
-gオプション)の有無 - 最適化レベル(
-O0推奨)
よくある質問
Q1:ブレークポイントが灰色の丸で表示されます
これは「未バインド」状態を示しています。デバッガーがそのコードを見つけられていません。ファイルパスやソースマップの設定を確認してください。
Q2:デバッグ実行時にすぐに終了してしまいます
console設定を確認してください。"console": "integratedTerminal"にすると、VSCode内で実行され、入力待ちなどが正しく機能します。
Q3:一部のブレークポイントだけ止まりません
その行が実際に実行されているか確認しましょう。条件分岐でスキップされている可能性があります。
Q4:以前は動いていたのに突然動かなくなりました
VSCodeや拡張機能のアップデート、Pythonバージョンの変更が原因かもしれません。設定ファイルを見直すか、一度再インストールしてみましょう。
まとめ
VSCodeでブレークポイントが止まらない問題は、以下の10の原因が考えられます:
- 空行やコメント行への設定
- launch.jsonの設定ミス
- ファイル名やパスの全角文字
- ブレークポイントの無効化
- 間違ったファイルのデバッグ
- ソースマップの問題
- URLの設定ミス
- デバッグポートの未設定
- Pythonバージョンの問題
- デバッグ情報の欠如
問題解決の基本フロー:
- 実行可能な行にブレークポイントを設定
- F5でデバッグ実行(Ctrl+F5は通常実行)
- launch.jsonの設定確認
- ファイル名・パスの確認
- 言語固有の設定確認
多くの場合、これらのチェックリストを順番に確認していけば問題は解決できます。
デバッグ機能は開発効率を大きく向上させる重要なツールです。正しく設定して、快適なプログラミング環境を整えましょう。

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