「Slackのオーガナイゼーションって何?」「ワークスペースと何が違うの?」
企業でSlackを使い始めたときに、これらの用語を聞いて混乱した経験はありませんか?
この記事では、Slackのオーガナイゼーション(Organization/OrG)とは何か、ワークスペースとの違い、どんな企業に必要なのかを、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
Slackオーガナイゼーションとは?基本を理解しよう

オーガナイゼーションの定義
Slackオーガナイゼーションとは、同じ企業や組織内に存在する複数のSlackワークスペースを統合管理するための「親」のような存在です。
簡単に言うと、複数のワークスペースをまとめて、一つの大きな組織として管理できる仕組みのことです。
例え話で理解する
オーガナイゼーションを理解しやすくするために、建物に例えてみましょう。
ワークスペース = 各フロア
- マーケティング部門のフロア
- 営業部門のフロア
- 開発部門のフロア
オーガナイゼーション = ビル全体
- 各フロア(ワークスペース)を統括管理
- ビル全体のルールを設定
- フロア間の行き来も可能
このように、オーガナイゼーションは複数のワークスペースを一つの傘の下で管理する仕組みなのです。
利用できるプラン
Slackオーガナイゼーションは、Enterprise Gridプランという大企業向けのプランでのみ利用できます。
無料プランやプロプラン、ビジネスプラスプランでは、基本的に一つのワークスペースのみでの運用となります。
ワークスペースとオーガナイゼーションの違い
多くの方が混乱するのが、この二つの違いです。分かりやすく比較してみましょう。
ワークスペース
特徴
- チームがコミュニケーションをする場所
- チャンネル、メッセージ、ファイルが保存される
- 独立した単位として機能
誰が使う?
- 小規模〜中規模の企業
- 一つの部門やプロジェクト
- 最大500名程度のチーム
例
- A社マーケティングチーム専用のSlack
- プロジェクトX用のSlack
- 社内全体で使う単一のSlack
オーガナイゼーション(Enterprise Grid)
特徴
- 複数のワークスペースを統合管理
- 組織全体のポリシーを一括設定
- ワークスペース間でのデータ共有が可能
誰が使う?
- 大企業や複雑な組織構造を持つ企業
- 複数の部門や子会社を持つ企業
- 最大50万人まで対応可能
例
- グローバル企業の本社と各国拠点
- 複数の事業部を持つ大企業
- M&Aで増えた複数の子会社
比較表
| 項目 | ワークスペース | オーガナイゼーション |
|---|---|---|
| プラン | 無料〜ビジネスプラス | Enterprise Gridのみ |
| 管理単位 | 一つの場所 | 複数のワークスペース |
| ユーザー数 | 〜数百名 | 最大50万人 |
| ワークスペース数 | 1つ | 無制限 |
| 一元管理 | × | ○ |
| ワークスペース間検索 | × | ○ |
| 組織全体のポリシー設定 | × | ○ |
オーガナイゼーションの主な機能とメリット
Enterprise Gridプランのオーガナイゼーションには、大企業向けの強力な機能が揃っています。
機能1:無制限のワークスペース作成
何ができる?
組織のニーズに応じて、いくつでもワークスペースを作成できます。
活用例
- 部門ごと:マーケティング、営業、開発、人事
- 拠点ごと:東京オフィス、大阪オフィス、海外支社
- プロジェクトごと:新製品開発、M&A案件、イベント運営
機能2:ワークスペース間でのチャンネル共有
何ができる?
異なるワークスペースに所属するメンバーが、同じチャンネルで会話できます。
活用例
マーケティング部門のワークスペースと営業部門のワークスペースの両方にまたがる「新製品ローンチ」チャンネルを作成できます。
機能3:組織全体での検索
何ができる?
自分が参加しているすべてのワークスペースを横断して、メッセージやファイルを検索できます。
メリット
必要な情報がどのワークスペースにあるか分からなくても、一度の検索で見つけられます。
機能4:組織レベルのポリシー設定
何ができる?
セキュリティやコンプライアンスのルールを、全ワークスペースに一括で適用できます。
具体例
- データ保存期間の設定
- アプリのインストール制限
- ゲストアクセスのルール
- メッセージの保持ポリシー
機能5:統一された管理画面
何ができる?
OrGオーナーやOrG管理者は、一つのダッシュボードから全ワークスペースを管理できます。
できること
- メンバーの追加・削除
- ワークスペースの作成
- 課金の一元管理
- セキュリティ監査ログの確認
機能6:組織全体のダイレクトメッセージ
何ができる?
異なるワークスペースに所属するメンバーとも、直接DMを送信できます。
メリット
「この人とは別のワークスペースにいるから連絡できない」という問題がなくなります。
どんな企業にオーガナイゼーションが必要?

オーガナイゼーション(Enterprise Grid)は、すべての企業に必要なわけではありません。
オーガナイゼーションが向いている企業
大規模企業
- 従業員数が数千人〜数万人
- 複数の部門や事業部がある
- グローバルに展開している
複雑な組織構造
- 複数の子会社を持っている
- M&Aで企業を買収した
- 異なるブランドを運営している
厳格なコンプライアンス要件
- 金融業界(FINRA対応)
- 医療業界(HIPAA対応)
- 政府機関(FedRAMP対応)
具体的な企業例
- IBM:50万人規模の従業員
- Oracle:複数の製品部門とグローバル拠点
- Condé Nast:複数のメディアブランド
通常のワークスペースで十分な企業
小〜中規模企業
- 従業員数が数十人〜数百人
- 単一の事業を展開
- シンプルな組織構造
スタートアップ
- まだ部門が明確に分かれていない
- 全員が同じ場所で働いている
- コストを抑えたい
このような企業は、無料プランやプロプラン、ビジネスプラスプランで十分対応できます。
オーガナイゼーションの管理者と権限
オーガナイゼーションでは、管理者の役割も細かく分かれています。
OrGオーナー(Organization Owner)
役割
オーガナイゼーション全体の最高責任者です。すべての権限を持ちます。
できること
- オーガナイゼーション全体の設定変更
- OrG管理者の任命
- ワークスペースの作成・削除
- 請求情報の管理
- すべてのポリシーの設定
OrG管理者(Organization Admin)
役割
OrGオーナーに次ぐ権限を持つ管理者です。日常的な運用を担当します。
できること
- メンバーの追加・削除
- ワークスペースの管理
- セキュリティポリシーの設定
- アプリの承認・拒否
ワークスペースオーナー/管理者
役割
個別のワークスペース内での管理者です。
できること
- 自分のワークスペース内の設定管理
- チャンネルの作成・管理
- メンバーの招待(OrGポリシーの範囲内)
OrGレベルのポリシーには従う必要がありますが、ワークスペース独自の設定もある程度可能です。
一般メンバー
役割
通常のSlackユーザーです。
できること
- チャンネルへの参加
- メッセージの送信
- ファイルの共有
- 参加しているワークスペース間の移動
Slackコネクトとオーガナイゼーションの関係
似たような用語で「Slackコネクト」というものがありますが、これは別の機能です。
Slackコネクトとは
定義
異なる会社の組織(オーガナイゼーション)同士が安全にコミュニケーションできる機能です。
使い方
自社のSlackと、取引先や協力会社のSlackをつないで、共通のチャンネルやDMでやり取りできます。
オーガナイゼーションとの違い
オーガナイゼーション
- 同一企業内の複数ワークスペースを統合管理
- 内部向けの機能
Slackコネクト
- 異なる企業間でのコミュニケーション
- 外部連携の機能
組み合わせて使う
Enterprise Gridプランなら、両方の機能を使えます。
例
- 社内では複数のワークスペースを持つオーガナイゼーションで管理
- 取引先とはSlackコネクトで安全に連携
これにより、社内外のコミュニケーションを一つのSlackで完結できます。
オーガナイゼーションの料金体系
Enterprise Gridプランの料金は、企業ごとにカスタマイズされます。
料金の決まり方
固定料金ではなく、以下の要素で決まります。
ユーザー数
- アクティブユーザー数に応じた従量課金
- 大規模になるほど単価が下がることも
必要な機能
- 基本機能
- 追加のセキュリティ機能
- カスタマイズ要件
サポートレベル
- 標準サポート
- プレミアムサポート
- 専任のカスタマーサクセスマネージャー
参考プラン(一般的なSlackプラン)
オーガナイゼーションではありませんが、参考までに他のプランの料金を紹介します。
無料プラン
- 0円
- メッセージ履歴90日間
- 1対1の通話のみ
プロプラン
- 月額960円/ユーザー(年払い)
- メッセージ履歴無制限
- グループ通話
ビジネスプラスプラン
- 月額1,800円/ユーザー(年払い)
- SAML認証
- 99.99%の稼働時間保証
Enterprise Gridプラン
- カスタム料金
- 問い合わせが必要
見積もりの取り方
Enterprise Gridに興味がある場合は、Slack社の営業チームに直接問い合わせる必要があります。
公式サイトから「営業担当に相談」を選択して、以下の情報を準備しておくとスムーズです。
- 従業員数
- 想定されるワークスペース数
- 必要なセキュリティ要件
- 導入予定時期
オーガナイゼーションの設定と運用
実際にオーガナイゼーションを導入する場合の流れを見ていきましょう。
導入の流れ
ステップ1:契約とセットアップ
- Slack社と契約
- オーガナイゼーションのURLを決定(例:yourcompany.enterprise.slack.com)
- OrGオーナーを設定
ステップ2:既存ワークスペースの移行
すでにSlackを使っている場合、既存のワークスペースをオーガナイゼーションに移行できます。
移行後も、メンバーのアカウント、メッセージ、ファイルはすべてそのまま残ります。
ステップ3:ポリシーの設定
組織全体で適用するルールを設定します。
- セキュリティポリシー
- データ保存ポリシー
- アプリの承認ルール
ステップ4:ワークスペースの作成
必要に応じて、新しいワークスペースを作成します。
ステップ5:メンバーの追加
各ワークスペースにメンバーを招待します。
運用のベストプラクティス
明確なワークスペース設計
ワークスペースをどう分けるか、事前に設計しましょう。
よくあるパターン:
- 部門別
- 拠点別
- プロジェクト別
- 機能別(本番環境、テスト環境など)
共有チャンネルの活用
部門を超えたプロジェクトには、ワークスペース横断のチャンネルを作りましょう。
定期的な見直し
使われていないワークスペースやチャンネルは定期的に整理します。
よくある質問と回答

Q1. 無料プランでも複数のワークスペースを作れる?
はい、技術的には作れます。ただし、それぞれが独立したワークスペースとして存在し、統合管理はできません。
オーガナイゼーションのような一元管理機能を使うには、Enterprise Gridプランが必要です。
Q2. 小規模企業でもオーガナイゼーションを使える?
使えますが、コストパフォーマンスを考えると現実的ではありません。
従業員が数十人〜数百人程度なら、ビジネスプラスプランで十分です。
Q3. オーガナイゼーションとワークスペースを切り替えられる?
できます。Enterprise Gridでは、左サイドバーから簡単にワークスペースを切り替えられます。
また、組織全体を検索する機能もあるので、どのワークスペースにいても必要な情報を見つけられます。
Q4. 他社とのコミュニケーションもオーガナイゼーションでできる?
いいえ、オーガナイゼーションは同一企業内の機能です。
他社とコミュニケーションする場合は、「Slackコネクト」という別の機能を使います。
Q5. 途中からEnterprise Gridにアップグレードできる?
できます。既存のワークスペースをそのまま移行できるので、データを失うことはありません。
Slack社のサポートが移行をサポートしてくれます。
まとめ:自社に合ったSlackの使い方を選ぼう
Slackオーガナイゼーションについて、重要なポイントをおさらいしましょう。
オーガナイゼーションとは
- 複数のワークスペースを統合管理する仕組み
- Enterprise Gridプラン専用の機能
- 大企業や複雑な組織向け
ワークスペースとの違い
- ワークスペース:チームが働く場所(各フロア)
- オーガナイゼーション:複数のワークスペースをまとめる(ビル全体)
主なメリット
- 無制限のワークスペース作成
- ワークスペース間でのチャンネル共有と検索
- 組織全体のポリシー一元管理
- 最大50万人まで対応可能
向いている企業
- 大規模企業(数千人以上)
- 複雑な組織構造
- 厳格なコンプライアンス要件
向いていない企業
- 小〜中規模企業(数百人以下)
- シンプルな組織構造
- コストを抑えたい
自社の規模や組織構造に応じて、適切なSlackプランを選びましょう。多くの企業は、まず無料プランやプロプランから始めて、成長に応じてアップグレードするのが一般的です。
Enterprise Gridに興味がある場合は、Slack社の営業チームに相談して、自社に最適な構成を提案してもらうのがおすすめです。

コメント