L2TP、IKEv2、IPSecの違いとは?VPNプロトコルをわかりやすく徹底解説

「VPNを使いたいけど、L2TPとかIKEv2とか、何が違うの?」

こんな疑問を持ったことはありませんか?

在宅勤務やリモートワークが増えた今、VPN(仮想プライベートネットワーク)を使う機会も増えています。でも、VPNの設定画面を開くと、L2TP、IKEv2、IPSecといった専門用語が並んでいて、何を選べばいいのか迷ってしまいますよね。

この記事では、これらのVPNプロトコルの違いを、初心者の方でも理解できるようにわかりやすく解説していきます。

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  1. VPNプロトコルとは?基本を理解しよう
    1. VPNプロトコルが重要な理由
  2. IPSecとは?暗号化の基礎となる技術
    1. IPSecの役割
    2. IPSecの特徴
    3. IPSecの重要性
  3. L2TP(L2TP/IPSec)とは?安定性重視のプロトコル
    1. L2TPの基本
    2. L2TP/IPSecの仕組み
    3. L2TP/IPSecの特徴
    4. L2TP/IPSecの用途
  4. IKEv2(IKEv2/IPSec)とは?モバイル向けの最新プロトコル
    1. IKEv2の基本
    2. L2TPとの大きな違い
    3. IKEv2/IPSecの特徴
    4. IKEv2/IPSecの用途
  5. L2TP、IKEv2、IPSecの違いを比較表で確認
  6. どのプロトコルを選ぶべき?用途別おすすめ
    1. スマートフォンやタブレットで使う場合
    2. 古いパソコンや対応デバイスが限られる場合
    3. 企業の拠点間接続の場合
    4. リモートワークで複数人が同時接続する場合
  7. セキュリティ面での注意点
    1. IPSecの脆弱性について
    2. PFS(Perfect Forward Secrecy)機能
    3. 暗号化アルゴリズム
  8. 通信速度の違いを理解しよう
    1. なぜ速度が落ちるのか?
    2. プロトコル別の速度比較
  9. 実際の設定方法の違い
    1. L2TP/IPSecの設定
    2. IKEv2/IPSecの設定
    3. どちらが簡単?
  10. 古いプロトコルPPTPについて
    1. PPTPとは?
    2. PPTPは使うべきではない
  11. よくある質問(Q&A)
    1. Q1:IPSecは単体で使えないの?
    2. Q2:どのプロトコルが一番安全?
    3. Q3:L2TPとIKEv2、初心者にはどちらがおすすめ?
    4. Q4:Androidで使うならどれが良い?
    5. Q5:会社のVPNに接続できないのはなぜ?
    6. Q6:VPNを使うと速度が遅くなるのは普通?
    7. Q7:無料VPNと有料VPN、プロトコルに違いはある?
  12. まとめ:あなたに最適なVPNプロトコルは?
    1. 各プロトコルの特徴まとめ
    2. 選び方のポイント
    3. 最後に

VPNプロトコルとは?基本を理解しよう

まず、VPNプロトコルとは何かを簡単に説明しましょう。

VPNプロトコルとは、インターネット上でデータを安全に送受信するための「通信のルール」のことです。

郵便で例えるなら、プロトコルは「郵便物の送り方のルール」みたいなものですね。

VPNプロトコルが重要な理由

VPNプロトコルによって、以下の点が大きく変わります。

  • 通信速度:どれくらい速くデータをやり取りできるか
  • セキュリティ:どれくらい安全に通信できるか
  • 安定性:接続が途切れにくいか
  • 対応デバイス:どんな端末で使えるか

つまり、適切なプロトコルを選ぶことが、快適で安全なVPN接続の鍵になるんです。

IPSecとは?暗号化の基礎となる技術

まず最初に理解しておきたいのが、IPSec(Internet Protocol Security)です。

IPSecの役割

IPSecは、インターネット上でデータを安全に送るための暗号化技術です。

具体的には、以下の3つの機能を提供します。

  1. 暗号化:データの内容を読めなくする
  2. 認証:通信相手が本物か確認する
  3. 完全性の保護:データが改ざんされていないか確認する

IPSecの特徴

メリット

  • ネットワーク層(レイヤー3)で動作するため、高い安全性を確保できる
  • 企業の拠点間接続に広く使われている実績がある
  • 強力な暗号化技術を使用している

デメリット

  • 単独では使いにくく、他のプロトコルと組み合わせる必要がある
  • 設定が複雑になりがち
  • ファイアウォールとの相性問題が起こることがある

IPSecの重要性

IPSecは、それ自体がVPNプロトコルというよりも、他のプロトコルと組み合わせて使う「暗号化エンジン」のような存在です。

L2TPやIKEv2といったプロトコルは、このIPSecと組み合わせることで、初めて実用的なVPN接続を実現できるんです。

L2TP(L2TP/IPSec)とは?安定性重視のプロトコル

次に、L2TP(Layer 2 Tunneling Protocol)について説明します。

L2TPの基本

L2TPは、CiscoとMicrosoftが共同で開発したトンネリングプロトコルです。

「トンネリング」とは、インターネット上に仮想的な通信経路(トンネル)を作ることを指します。

重要なポイント:L2TP単体では暗号化機能がありません。

そのため、実際の利用では必ずIPSecと組み合わせて使われ、「L2TP/IPSec」と呼ばれます。

L2TP/IPSecの仕組み

L2TP/IPSecでは、データが2段階で処理されます。

  1. L2TPによるトンネリング:データをL2TP形式にカプセル化(包み込み)
  2. IPSecによる暗号化:さらにIPSecで暗号化してセキュリティを強化

この二重カプセル化により、高いセキュリティが実現されています。

L2TP/IPSecの特徴

メリット

  • 幅広いデバイスで標準サポートされている(Windows、Mac、iOS、Androidなど)
  • 追加ソフトのインストールが不要な場合が多い
  • PPTPより安全性が高い
  • 複数のセッション(同時接続)に対応

デメリット

  • 二重カプセル化のため、通信速度が遅くなりがち
  • ファイアウォールにブロックされやすい(UDP 500、4500ポートを使用)
  • モバイル利用時の安定性に欠ける
  • NSA(米国家安全保障局)による監視の可能性が指摘されている

L2TP/IPSecの用途

以下のような場面で使われます。

  • 企業のリモートアクセスVPN
  • 古いデバイスでのVPN接続
  • OpenVPNなどが利用できない環境

IKEv2(IKEv2/IPSec)とは?モバイル向けの最新プロトコル

IKEv2(Internet Key Exchange version 2)は、L2TPの後継として開発された、より現代的なプロトコルです。

IKEv2の基本

IKEv2もCiscoとMicrosoftが共同で開発したプロトコルで、2005年にリリースされました。

IKEv2は鍵交換と認証を専門に行うプロトコルで、やはりIPSecと組み合わせて「IKEv2/IPSec」として使われます。

L2TPとの大きな違い

ここが重要なポイントです。

L2TP/IPSec

  • IPSecの上にL2TP、その中にPPPという三重構造
  • トンネリングにL2TPを使い、暗号化にIPSecを使う

IKEv2/IPSec

  • IPSecだけで認証から暗号化まで完結
  • L2TPやPPPのような仲介プロトコルが不要

つまり、IKEv2/IPSecは構造がシンプルで、その分処理が速いんです。

IKEv2/IPSecの特徴

メリット

  • 通信速度が速い:単一のプロトコルで処理が完結するため高速
  • モバイルに最適:MOBIKE機能により、Wi-Fiとモバイルデータの切り替えがスムーズ
  • 自動再接続機能:接続が一時的に切れても自動的に復旧
  • 高いセキュリティ:最新の暗号化技術に対応
  • CPU負荷が低い:バッテリー消費が少ない

デメリット

  • 比較的新しいため、古いデバイスでは対応していない場合がある
  • 設定がやや複雑(証明書の管理など)
  • L2TPほど広くサポートされていない
  • Android 12以降では、L2TP/IPSecの代わりにIKEv2が推奨されている

IKEv2/IPSecの用途

以下のような場面で特に力を発揮します。

  • スマートフォンやタブレットでのVPN利用
  • 移動中の接続(電車、車など)
  • Wi-Fiとモバイルデータを頻繁に切り替える状況
  • BlackBerry端末(IKEv2は数少ない対応プロトコル)

L2TP、IKEv2、IPSecの違いを比較表で確認

ここで、3つのプロトコルの違いを表で整理してみましょう。

項目IPSecL2TP/IPSecIKEv2/IPSec
役割暗号化・認証トンネリング+暗号化鍵交換+暗号化
開発時期1990年代後半1999年2005年
通信速度中程度遅い速い
モバイル対応
安定性
セキュリティ
設定の簡単さ
デバイス対応広い非常に広いやや狭い
ファイアウォール通過
主な用途拠点間VPNリモートアクセスモバイルVPN

どのプロトコルを選ぶべき?用途別おすすめ

それぞれのプロトコルには得意分野があります。用途に応じて選びましょう。

スマートフォンやタブレットで使う場合

おすすめ:IKEv2/IPSec

理由:

  • 移動中でも接続が安定している
  • Wi-Fiとモバイルデータの切り替えがスムーズ
  • バッテリー消費が少ない
  • 通信速度が速い

古いパソコンや対応デバイスが限られる場合

おすすめ:L2TP/IPSec

理由:

  • ほぼすべてのデバイスで標準サポート
  • 追加ソフトのインストールが不要
  • 設定が比較的簡単

企業の拠点間接続の場合

おすすめ:IPSec(単体)

理由:

  • 最も安全性が高い
  • 拠点間接続に特化している
  • シングルセッションで設定がシンプル

リモートワークで複数人が同時接続する場合

おすすめ:L2TP/IPSecまたはIKEv2/IPSec

理由:

  • マルチセッションに対応
  • ユーザーごとの認証が可能
  • 柔軟な管理ができる

セキュリティ面での注意点

VPNを使う上で、セキュリティは最も重要な要素です。

IPSecの脆弱性について

IPSecは基本的に安全なプロトコルですが、いくつか注意点があります。

NSAによる監視の懸念

エドワード・スノーデンが公開した資料によると、NSA(米国家安全保障局)がIPSecの解読に取り組んでいたことが明らかになっています。

ただし、これは設定が適切でない場合の話で、強力な暗号化を使用していれば、現実的な脅威ではないとされています。

PFS(Perfect Forward Secrecy)機能

IKEv2/IPSecには、PFS(完全転送秘匿性)という機能があります。

これは、セッションごとに独立した暗号鍵を生成する仕組みで、万が一1つのセッションの鍵が漏れても、過去や未来のセッションは保護されます。

L2TP/IPSecでは、この機能が標準でオフになっている場合が多く、手動でオンにする必要があります。

暗号化アルゴリズム

現代のVPNでは、以下の暗号化アルゴリズムが使われています。

  • AES-256:最も強力な暗号化方式(推奨)
  • AES-128:やや軽量だが十分に安全
  • 3DES:古い方式で、現在は非推奨

通信速度の違いを理解しよう

VPNを使うと、通常のインターネット接続より速度が遅くなることがあります。

なぜ速度が落ちるのか?

VPN接続で速度が低下する主な理由は以下の通りです。

  1. 暗号化処理:データを暗号化・復号化する時間がかかる
  2. カプセル化:データを追加のヘッダーで包む必要がある
  3. 経由ポイント:VPNサーバーを経由するため、距離が伸びる

プロトコル別の速度比較

IKEv2/IPSec:最も速い

  • 単一プロトコルで処理が完結
  • CPU負荷が低い
  • モバイル環境でも高速

L2TP/IPSec:やや遅い

  • 二重カプセル化によるオーバーヘッド
  • 2つのプロトコルを処理する必要がある

IPSec(単体):中程度

  • 暗号化処理のみに集中できる
  • 拠点間接続では安定した速度

実際の設定方法の違い

各プロトコルの設定方法には、違いがあります。

L2TP/IPSecの設定

Windows、Mac、iOS、Androidすべてで標準サポート

設定項目:

  • サーバーアドレス
  • アカウント名
  • パスワード
  • 事前共有キー(PSK)

設定は比較的簡単で、多くの場合、これらの情報を入力するだけでOKです。

IKEv2/IPSecの設定

Windows 7以降、iOS、macOS、Androidで対応

設定項目:

  • サーバーアドレス
  • 認証方式の選択(証明書またはユーザー名/パスワード)
  • 証明書のインストール(証明書認証の場合)

証明書を使う場合は、設定がやや複雑になります。

どちらが簡単?

初心者には L2TP/IPSec がおすすめ

理由:

  • 設定項目が少ない
  • 追加ファイル(証明書など)のインストールが不要な場合が多い
  • トラブルシューティングの情報が豊富

古いプロトコルPPTPについて

VPNプロトコルの話題では、PPTP(Point-to-Point Tunneling Protocol)についても触れておく必要があります。

PPTPとは?

PPTPは、Microsoftが開発した最も古いVPNプロトコルの1つです。

特徴

  • 設定が非常に簡単
  • 通信速度が速い
  • ほぼすべてのデバイスで対応

一見良さそうに見えますが、重大な問題があります。

PPTPは使うべきではない

セキュリティ上の深刻な欠陥

PPTPには複数の脆弱性が発見されており、現在では安全性が低すぎるとされています。

開発元のMicrosoft自身が、PPTPの使用を推奨していません。

代わりに何を使うべき?

  • L2TP/IPSec
  • IKEv2/IPSec
  • OpenVPN
  • WireGuard

これらの中から選びましょう。

よくある質問(Q&A)

Q1:IPSecは単体で使えないの?

使えます。

企業の拠点間VPNでは、IPSec単体(IPSec VPN)が広く使われています。

ただし、リモートアクセス(個人端末からの接続)の場合は、L2TPやIKEv2と組み合わせた方が便利です。

Q2:どのプロトコルが一番安全?

セキュリティの高さ順

  1. IKEv2/IPSec(最新の暗号化技術、PFS対応)
  2. IPSec単体(設定次第で非常に強固)
  3. L2TP/IPSec(適切に設定すれば安全)

ただし、いずれも適切な設定が重要です。弱い暗号化を使ったり、PFSをオフにしたりすると、セキュリティレベルが下がります。

Q3:L2TPとIKEv2、初心者にはどちらがおすすめ?

一般的にはL2TP/IPSecがおすすめです。

理由:

  • 設定が簡単
  • ほぼすべてのデバイスで標準サポート
  • トラブル時の情報が豊富

ただし、スマートフォンやタブレットでの利用がメインなら、IKEv2/IPSecの方が快適です。

Q4:Androidで使うならどれが良い?

Android 12以降の場合

IKEv2/IPSecが推奨されています。

Android 12以降では、L2TP/IPSecが非推奨となり、標準機能から削除されました。

Android 11以前の場合

L2TP/IPSecもIKEv2/IPSecも使えますが、IKEv2の方が安定性と速度で優れています。

Q5:会社のVPNに接続できないのはなぜ?

いくつかの原因が考えられます。

ファイアウォールの問題

L2TP/IPSecやIPSecは、特定のポート(UDP 500、4500、ESPプロトコル)を使います。会社や公共のWi-Fiでこれらがブロックされていると接続できません。

解決策

  • IKEv2/IPSecを試す(ファイアウォールを通過しやすい)
  • 会社のIT部門に相談する
  • モバイルデータ回線(4G/5G)で試してみる

Q6:VPNを使うと速度が遅くなるのは普通?

ある程度の速度低下は避けられません。

一般的な速度低下の目安

  • IKEv2/IPSec:10〜20%の低下
  • L2TP/IPSec:20〜40%の低下

これ以上の大幅な速度低下がある場合は、以下を確認してください。

  • VPNサーバーの場所(遠いほど遅い)
  • 使用している暗号化レベル
  • インターネット接続の品質
  • VPNサーバーの混雑状況

Q7:無料VPNと有料VPN、プロトコルに違いはある?

プロトコル自体は同じですが、以下の点で差が出ます。

有料VPN

  • 最新プロトコル(IKEv2、WireGuardなど)に対応
  • サーバーの品質が高く、速度が安定
  • セキュリティ設定が適切

無料VPN

  • 古いプロトコル(PPTPなど)しか使えない場合がある
  • サーバーが混雑して速度が遅い
  • セキュリティ設定が不十分な場合がある

重要なデータを扱う場合は、信頼できる有料VPNの利用を検討しましょう。

まとめ:あなたに最適なVPNプロトコルは?

ここまで、L2TP、IKEv2、IPSecの違いについて詳しく解説してきました。

重要なポイントをおさらいしましょう。

各プロトコルの特徴まとめ

IPSec

  • 暗号化の基礎となる技術
  • 単体でも使えるが、通常は他のプロトコルと組み合わせる
  • 企業の拠点間VPNに最適

L2TP/IPSec

  • 幅広いデバイスで標準サポート
  • 設定が簡単
  • 速度はやや遅いが、安定性がある
  • 古いデバイスでも使える

IKEv2/IPSec

  • モバイル利用に最適
  • 通信速度が速い
  • 自動再接続機能が優秀
  • 比較的新しく、一部の古いデバイスでは非対応

選び方のポイント

スマホ・タブレット利用が多い
→ IKEv2/IPSec

パソコンでの利用がメイン
→ L2TP/IPSecまたはIKEv2/IPSec

古い端末でも使いたい
→ L2TP/IPSec

とにかく簡単に設定したい
→ L2TP/IPSec

最高速度が欲しい
→ IKEv2/IPSec

最後に

VPNプロトコルの選択は、通信速度、セキュリティ、利用デバイスなど、さまざまな要因を考慮する必要があります。

迷ったら、まずはL2TP/IPSecを試してみて、モバイル利用が多い場合はIKEv2/IPSecに切り替える、という方法がおすすめです。

最も重要なのは、PPTPなど古くて脆弱なプロトコルを避け、適切なセキュリティ設定を行うことです。安全で快適なVPN接続を実現しましょう。

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