「iPhoneが動かなくなった…」「パスコードを忘れてしまった…」
そんな困った状況に陥ったことはありませんか?実は、こうした問題を解決する最終手段として「リカバリーモード」という機能があるんです。
この記事では、iPhoneのリカバリーモードを使った初期化の方法について、わかりやすく解説していきます。
リカバリーモードとは

リカバリーモードは、iPhoneを強制的に工場出荷時の状態に戻すための特別なモードのことです。
通常の操作ではどうにもならない深刻な問題が発生したときに使う、いわば「最後の切り札」のような機能ですね。
リカバリーモードと通常の初期化の違い
普通の初期化は、iPhoneの設定画面から「すべてのコンテンツと設定を消去」を選んで実行します。これはiPhoneが正常に動作しているときに使える方法です。
一方、リカバリーモードは、iPhoneが正常に動作していない状況でも使えます。パソコンと接続して、強制的に初期化やiOSの再インストールを行う方法なんです。
リカバリーモードが必要になる状況
以下のような状況で、リカバリーモードが役立ちます。
iPhoneが起動しない
電源を入れてもAppleのロゴマークが表示されたまま先に進まない「リンゴループ」と呼ばれる状態。
パスコードを忘れた
パスコードを10回間違えると「iPhoneは使用できません iTunesに接続」と表示されてしまいます。
iOSアップデート失敗
iOSのアップデート中にエラーが発生して、iPhoneが動かなくなった場合。
画面がフリーズして動かない
何を操作しても反応しない状態が続く場合。
不意にリカバリーモードになってしまった
何かのエラーで、勝手にリカバリーモードの画面になってしまうこともあります。
リカバリーモードで初期化する前の準備
リカバリーモードで初期化すると、iPhoneのデータは全て消えてしまいます。事前にできる準備をしておきましょう。
1. バックアップを取る(可能な場合)
iPhoneが動作する状態であれば、必ずバックアップを取りましょう。
iCloudでのバックアップ
- 「設定」→「ユーザー名」→「iCloud」→「iCloudバックアップ」を開く
- 「今すぐバックアップを作成」をタップ
- Wi-Fiに接続した状態で完了を待つ
iTunesでのバックアップ(パソコンがある場合)
- iTunesを最新バージョンにアップデート
- iPhoneをパソコンに接続
- iTunesでiPhoneを選択
- 「今すぐバックアップ」をクリック
暗号化バックアップにすると、パスワードやヘルスケアデータも保存できます。
2. Apple IDとパスワードを確認する
初期化後、iPhoneを使い始めるときにApple IDとパスワードが必要です。
特に「iPhoneを探す」がオンになっていた場合、初期化後に必ずApple IDでのサインインが求められます(アクティベーションロック)。パスワードを忘れていると、初期化しても使えない状態になってしまうので注意してください。
3. 必要なもの
パソコン(MacまたはWindows PC)
リカバリーモードでの初期化には、パソコンが必須です。iPhone本体だけでは操作できません。
USBケーブル
iPhoneとパソコンを接続するケーブル。純正品または信頼できるメーカーの製品を使いましょう。
iTunes または Finder
- Windowsの場合:最新版のiTunesをインストール
- Macの場合:macOS Catalina以降はFinder、それ以前はiTunesを使用
4. 時間の余裕を持つ
初期化には数分から数十分かかります。バックアップからのデータ復元も含めると、さらに時間が必要です。
機種別:リカバリーモードの起動方法
iPhoneの機種によって、リカバリーモードへの入り方が異なります。お使いの機種に合った方法を確認してください。
iPhone 8以降(iPhone SE 第2世代・第3世代を含む)
iPhone 8、iPhone X、iPhone 11、iPhone 12、iPhone 13、iPhone 14、iPhone 15、iPhone 16などが対象です。
手順
- iPhoneをパソコンに接続し、iTunesまたはFinderを起動
- 音量を上げるボタンを素早く押して離す
- 音量を下げるボタンを素早く押して離す
- サイドボタン(電源ボタン)を長押し
- Appleロゴが表示されても押し続ける
- 「コンピュータに接続」または「iTunesに接続」の画面が表示されたら成功
iPhone 7、iPhone 7 Plus
手順
- iPhoneをパソコンに接続し、iTunesまたはFinderを起動
- サイドボタン(電源ボタン)と音量を下げるボタンを同時に長押し
- Appleロゴが表示されても押し続ける
- 「コンピュータに接続」の画面が表示されたら成功
iPhone 6s以前(iPhone SE 第1世代を含む)
手順
- iPhoneをパソコンに接続し、iTunesまたはFinderを起動
- ホームボタンとトップボタン(電源ボタン)を同時に長押し
- Appleロゴが表示されても押し続ける
- 「コンピュータに接続」の画面が表示されたら成功
iTunesを使った初期化の手順
リカバリーモードに入ったら、次はパソコンで初期化を実行します。
Windows PCの場合
手順1:iTunesを起動
iPhoneをリカバリーモードにすると、iTunesが自動的に起動します(起動しない場合は手動で開いてください)。
手順2:メッセージを確認
「iTunesはリカバリーモードのiPhoneを見つけました。iTunesでご利用になる前に、このiPhoneを復元する必要があります。」というメッセージが表示されます。
手順3:「復元」または「アップデート」を選択
2つの選択肢が表示されます。
- アップデート:iOSを再インストールしますが、データは残ります
- 復元:完全に初期化され、全データが消去されます
問題を解決するには「復元」を選択することがほとんどです。
手順4:復元の実行
「復元」をクリックすると、確認画面が表示されます。もう一度「復元」をクリックして実行。
手順5:ダウンロードと初期化を待つ
iTunesが最新のiOSをダウンロードし、iPhoneにインストールします。インターネットの速度によっては15分以上かかることもあります。
途中でiPhoneがリカバリーモードの画面から抜けてしまった場合は、ダウンロードが完了するのを待ってから、もう一度リカバリーモードに入り直してください。
手順6:初期設定
初期化が完了すると、iPhoneが再起動し、「こんにちは」の画面が表示されます。これで初期化成功です。
Macの場合
macOS Catalina以降(Finderを使用)
手順1:Finderを開く
手順2:サイドバーの「場所」にiPhoneが表示されるので選択
手順3:「復元」または「アップデート」のメッセージが表示される
手順4:「復元」を選択して実行
手順5:確認画面で再度「復元」をクリック
手順6:ダウンロードと初期化が完了するまで待つ
macOS Mojave以前(iTunesを使用)
Windows PCの場合と同じ手順です。
初期化後の設定
初期化が完了したら、iPhoneの初期設定を行います。
1. 言語と地域を選択
「こんにちは」の画面から、日本語と日本を選択します。
2. Wi-Fiに接続
利用可能なWi-Fiネットワークを選択してパスワードを入力。
3. データとプライバシー
情報を確認して「続ける」をタップ。
4. Face IDまたはTouch IDの設定
顔認証または指紋認証を設定します(後で設定することも可能)。
5. パスコードの作成
6桁の数字でパスコードを設定します。
6. Appとデータ
ここで3つの選択肢が表示されます。
- iCloudバックアップから復元:iCloudにバックアップがある場合
- MacまたはPCから復元:iTunesバックアップがある場合
- 新しいiPhoneとして設定:バックアップがない場合
バックアップがあれば、それを選択してデータを復元しましょう。
7. Apple IDでサインイン
Apple IDとパスワードを入力してサインインします。
8. その他の設定
利用規約への同意、Siri、Apple Payなどの設定を進めます。
リカバリーモードで初期化できない場合の対処法
リカバリーモードでうまく初期化できないこともあります。そんなときの対処法をご紹介します。
1. ケーブルと接続を確認
別のUSBケーブルを試す
ケーブルが断線していたり、接触不良を起こしている可能性があります。
別のUSBポートを使う
パソコンの別のUSBポートに接続してみましょう。
ケーブルをしっかり接続
両端がしっかり挿さっているか確認してください。
2. iTunesを最新版にアップデート
古いバージョンのiTunesだと、最新のiPhoneに対応していないことがあります。
Windowsの場合
- iTunesを起動
- メニューバーの「ヘルプ」→「更新プログラムを確認」をクリック
Macの場合
- App Storeを開く
- 「アップデート」タブで確認
3. パソコンを再起動
シンプルですが、パソコンを再起動するだけで解決することもあります。
4. DFUモードを試す
リカバリーモードよりもさらに深いレベルで復元できる「DFUモード」というものがあります。
リカバリーモードで解決しない場合の最終手段です。ただし、操作が複雑で失敗するリスクもあるため、よく調べてから実行してください。
5. Appleサポートに相談
どうしても解決しない場合は、Apple公式サポートに問い合わせましょう。
ハードウェアの故障が原因の可能性もあるため、修理が必要になることもあります。
リカバリーモードの注意点
リカバリーモードで初期化する前に、以下の点に注意してください。
データは完全に消える
リカバリーモードでの「復元」を実行すると、iPhoneのデータは全て消去されます。
写真、連絡先、アプリ、メッセージ、全てが工場出荷時の状態に戻ります。バックアップがなければ、データを取り戻すことはできません。
Apple IDとパスワードが必須
初期化後、iPhoneを使い始めるにはApple IDとパスワードが必要です。
特に「iPhoneを探す」がオンになっていた場合、元のApple IDでサインインしないとiPhoneが使えません。これを「アクティベーションロック」と言います。
パソコンが必要
リカバリーモードでの初期化は、iPhone本体だけではできません。必ずパソコンが必要です。
時間がかかる
初期化には最低でも数分、場合によっては30分以上かかることもあります。時間に余裕があるときに実行しましょう。
eSIMは削除されない
iPhone XS以降のモデルで使えるeSIMは、初期化しても削除されません。
eSIMを削除したい場合は、別途手順が必要です。
リカバリーモードを解除する方法
誤ってリカバリーモードに入ってしまった場合や、初期化せずに通常の状態に戻したい場合は、以下の方法で解除できます。
強制再起動で解除
iPhone 8以降
- 音量を上げるボタンを押してすぐ離す
- 音量を下げるボタンを押してすぐ離す
- Appleロゴが表示されるまでサイドボタンを長押し
iPhone 7、iPhone 7 Plus
- サイドボタンと音量を下げるボタンを同時に長押し
- Appleロゴが表示されるまで押し続ける
iPhone 6s以前
- ホームボタンとトップボタンを同時に長押し
- Appleロゴが表示されるまで押し続ける
何度か強制再起動を繰り返すことで、リカバリーモードから抜け出せることがほとんどです。
よくある質問
パソコンなしでリカバリーモードから初期化できる?
できません。リカバリーモードでの初期化には、必ずパソコン(MacまたはWindows PC)が必要です。
バックアップなしで初期化してしまったらデータは戻せる?
基本的には戻せません。専門のデータ復旧業者に依頼すれば、一部のデータを取り出せる可能性がありますが、費用が高額になることもあります。
リカバリーモードとDFUモードの違いは?
リカバリーモードはiOSを起動した状態で復元を行います。DFUモード(Device Firmware Update Mode)は、iOSを起動せず、より深いレベルで復元を行います。
リカバリーモードで解決しない深刻な問題には、DFUモードが有効な場合があります。
リカバリーモードに入れない場合は?
ボタン操作のタイミングが難しいので、何度か試してみてください。
それでもうまくいかない場合は、ボタンが物理的に故障している可能性もあります。Appleサポートに相談しましょう。
初期化後、バックアップから復元できない
Apple IDのパスワードが間違っていないか確認してください。また、iCloudのストレージ容量が不足している場合は、復元に失敗することがあります。
まとめ
iPhoneのリカバリーモードを使った初期化は、深刻なトラブルを解決するための強力な方法です。
初期化の基本的な流れ
- バックアップを取る(可能な場合)
- Apple IDとパスワードを確認
- パソコンとiTunesを準備
- 機種に応じた方法でリカバリーモードに入る
- iTunesで「復元」を実行
- 初期化完了後、初期設定を行う
- バックアップからデータを復元
重要なポイント
- リカバリーモードでの初期化は、全データが消える
- 必ずパソコンが必要
- バックアップがあれば、データを復元できる
- Apple IDとパスワードは絶対に忘れない
iPhoneが動かなくなったときは焦ってしまいますが、落ち着いて手順を踏めば、リカバリーモードで解決できることがほとんどです。
ただし、データを失わないためにも、普段から定期的にバックアップを取る習慣をつけることが何より大切ですね。

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