Adobe Acrobat Reader DCの基本
Adobe Acrobat Reader DC(アドビ アクロバット リーダー ディーシー)は、アドビ株式会社が無料で提供するPDFファイルの閲覧・印刷ソフトウェアです。
世界標準のPDFビューアとして、世界中で広く使われています。
多くのパソコンにプリインストールされており、PDFファイルを開く際のデフォルトアプリケーションとして設定されていることも多いソフトウェアです。
DCの意味
「DC」は「Document Cloud(ドキュメント クラウド)」の略称です。
2015年4月7日に、アドビがクラウドストレージとサービス型ソフトウェア(SaaS)モデルを採用したことを示すブランディングとして導入されました。
これはCreative Cloud(CC)と同様の戦略で、クラウドベースのサービスとの連携を強化することを目的としています。
名称の変遷
Adobe Acrobat Reader DCには、少し複雑な名称の変遷があります。
2015年4月以前は「Adobe Reader」という名称でしたが、Document Cloudの導入に伴い「Acrobat Reader DC」に改名されました。
さらに2022年10月以降は、「DC」という名称が実質的に廃止され、現在は「Adobe Acrobat Reader」に統一されています。
ただし、古いバージョンを使用している場合や、一部の情報源では「Adobe Acrobat Reader DC」という名称が使われ続けているため、混乱が生じることがあります。
PDFとは
Adobe Acrobat Reader DCを理解するには、まずPDFについて知っておく必要があります。
PDF形式の基本
PDF(Portable Document Format)は、アドビが開発した文書ファイル形式です。
どのような環境(OS、デバイス、ソフトウェア)でも同じレイアウトで表示できることが最大の特徴となっています。
文字のフォントや画像の配置が崩れることなく、作成者が意図した通りの見た目を保つことができるのです。
PDFのメリット
PDFには以下のようなメリットがあります。
環境に依存しない互換性
Windows、Mac、スマートフォンなど、どのデバイスでも同じように表示されます。
セキュリティ機能
パスワード保護や編集制限をかけることで、情報の漏洩や不正な改ざんを防げます。
ファイルサイズの最適化
画像や文書を効率的に圧縮できるため、メールでの送信にも適しています。
編集の難しさ
基本的にPDFは閲覧専用として扱われるため、文書の改変を防ぐことができます。
Adobe Acrobat Reader DCの主な機能

無料で利用できるAdobe Acrobat Reader DCには、PDF閲覧に必要な基本機能が搭載されています。
PDFの表示と印刷
あらゆる種類のPDFファイルを開いて表示できます。
フォームやマルチメディアコンテンツが含まれているPDFにも対応しており、正確に内容を確認できます。
また、印刷機能も備えているため、必要に応じて紙に出力することも可能です。
注釈とコメントの追加
PDFに直接コメントや注釈を追加できます。
利用できる注釈ツール
- ノート注釈の追加
- テキストのハイライト表示
- 下線や取り消し線の挿入
- ページへのテキスト直接入力
- フリーハンドでの描画
これらの機能を使うことで、PDFファイルを紙の書類のように扱い、赤ペンでチェックするような感覚でレビュー作業ができます。
フォームへの入力と署名
PDFフォームに直接入力できる機能があります。
Fill & Sign(入力と署名)ツールは、Adobe Senseiという人工知能技術を活用しており、フォームフィールドを自動認識します。
申込書や契約書などのPDFフォームに、タイプ入力や手書き署名を簡単に追加できるのです。
署名は、キーボードで入力したり、マウスやタッチペンで描画したり、画像を使用したりすることができます。
PDFの共有と共同作業
PDFファイルを他のユーザーと共有し、複数人でレビューすることができます。
レビュー依頼を送ると、受信者はブラウザでPDFを開いてコメントを追加できます。
各レビュー担当者のコメントは1つのファイル上で管理され、お互いのコメントに返信することも可能です。
更新状況は作成者に自動的に通知されるため、効率的な共同作業が実現します。
モバイルアプリでのスキャン機能
Adobe Acrobat Readerのモバイルアプリにはスキャン機能が搭載されています。
スマートフォンのカメラを使って、紙の書類や名刺、レシート、ホワイトボードのメモなどを撮影し、PDFとしてデジタル化できます。
撮影した画像は自動的に補正され、見やすいPDFに変換されるのです。
Document Cloudとの連携
Adobe Acrobat Reader DCは、Adobe Document Cloudというクラウドサービスと連携しています。
クラウドストレージの利用
Adobe Document Cloudに接続することで、PDFファイルをクラウド上に保存できます。
また、Dropbox、Microsoft OneDrive、Boxなどのクラウドストレージサービスとも連携可能です。
これにより、どのデバイスからでも同じPDFファイルにアクセスし、作業を継続できます。
デバイス間の同期
パソコンで作業していたPDFに追加した注釈やブックマークが、自動的にスマートフォンやタブレットにも同期されます。
外出先でスマートフォンで確認した内容を、帰宅後にパソコンで引き継いで作業できるのです。
Acrobat Reader DCと有料版の違い
Adobe Acrobat製品には、無料版と有料版が存在します。
Acrobat Reader(無料版)
PDFの閲覧、印刷、注釈追加、署名、フォーム入力など、基本的な機能が利用できます。
PDFファイルを「読む」「確認する」「コメントする」ことが主な用途となります。
Acrobat Standard(有料版)
PDFの作成、編集、変換などの機能が追加されます。
Word、Excel、PowerPointなどのファイルをPDFに変換したり、PDFを編集可能な形式に戻したりできるのです。
Acrobat Pro(有料版)
Acrobat Standardの機能に加えて、さらに高度な機能が利用できます。
主な追加機能
- PDFの高度な編集(テキストや画像の直接編集)
- PDFフォームの作成
- セキュリティ設定の詳細なカスタマイズ
- OCR(光学文字認識)機能
- アクセシビリティチェック
- バッチ処理
プロフェッショナルな用途や、PDFを本格的に活用したい場合はAcrobat Proが必要になります。
インストール方法
Adobe Acrobat Reader DCは、無料でダウンロード・インストールできます。
Windows版のインストール
- アドビ公式サイトにアクセスします。
- 「今すぐダウンロード」ボタンをクリックします。
- ダウンロードしたインストーラーを実行します。
- 画面の指示に従ってインストールを完了させます。
インストールには管理者権限が必要です。
Mac版のインストール
Windows版と同様に、アドビ公式サイトからダウンロードできます。
ダウンロードしたファイルをダブルクリックし、画面の指示に従ってインストールを進めてください。
モバイル版アプリ
iOS版はApple App Storeから、Android版はGoogle Playストアからダウンロードできます。
アプリ名は「Adobe Acrobat Reader」で、無料で入手可能です。
無料版の制限
Adobe Acrobat Reader DCは無料ですが、一部の機能には制限があります。
編集機能の制限
PDFファイルの内容を直接編集することはできません。
テキストの追加や画像の挿入、ページの削除や並び替えなどの編集作業には、有料版のAcrobat StandardまたはAcrobat Proが必要です。
変換機能の制限
PDFを他の形式(WordやExcelなど)に変換する機能も、無料版では利用できません。
ただし、Adobe公式サイトからサブスクリプション(月額制サービス)を購入することで、これらの機能を利用できるようになります。
署名の収集機能の制限
無料版でも電子署名を追加することはできますが、他のユーザーから署名を収集する機能には回数制限があります。
頻繁に署名収集を行う場合は、Adobe Acrobat ProまたはAdobe Acrobat Signのサブスクリプションが推奨されます。
Adobe Acrobat Readerの利点
ビジネスシーンから個人利用まで、Adobe Acrobat Readerには多くのメリットがあります。
業界標準としての信頼性
PDFを開発したアドビが提供する公式ソフトウェアであるため、PDFの表示精度は最も高いです。
複雑なレイアウトやフォント、画像が含まれるPDFでも、正確に表示できます。
長期的な互換性
アドビは後方互換性を重視しており、古いバージョンで作成されたPDFでも確実に開くことができます。
20年以上前に作成されたPDFファイルでも、現在のバージョンで問題なく表示できるのです。
無料で利用可能
高機能なPDF閲覧ソフトを、誰でも無料でダウンロードして使えます。
個人利用はもちろん、商用利用でも追加費用は発生しません。
マルチプラットフォーム対応
Windows、Mac、iOS、Androidなど、主要なプラットフォームすべてに対応しています。
どのデバイスでも同じように使えるため、環境を選ばず作業できます。
注意点とデメリット
便利なAdobe Acrobat Reader DCですが、いくつかの注意点もあります。
有料版へのアップグレード広告
無料版を使用していると、定期的に有料版へのアップグレードを促す広告が表示されます。
これらの広告は一部のユーザーにとって煩わしく感じられることがあります。
ソフトウェアのサイズ
Adobe Acrobat Reader DCは、他のPDF閲覧ソフトと比較してファイルサイズが大きめです。
インストールに必要なディスク容量や、起動時間がやや長くなる可能性があります。
定期的なアップデート
セキュリティ向上のため、定期的にアップデートが配信されます。
これは良いことですが、アップデートの頻度が高いと感じるユーザーもいるかもしれません。
どんな人におすすめ?
Adobe Acrobat Reader DCは、以下のような人に特におすすめです。
ビジネスユーザー
PDFの書類を頻繁に扱うビジネスパーソンには必須のツールです。
契約書のレビュー、申込書への入力、提案資料の確認など、日常的なビジネス業務で活用できます。
学生・教育関係者
論文や教材のPDFファイルを閲覧し、注釈を付けながら学習する学生に最適です。
教員も、生徒のレポートにコメントを追加する際に便利に使えます。
PDFを頻繁に受け取る人
メールでPDFファイルをよく受け取る人は、Adobe Acrobat Reader DCをインストールしておくと便利です。
請求書、マニュアル、カタログなど、さまざまなPDFを確実に開けます。
代替ソフトウェアとの比較
Adobe Acrobat Reader DC以外にも、PDF閲覧ソフトは複数存在します。
ブラウザ内蔵のPDFビューア
Chrome、Edge、Safariなどの主要ブラウザには、PDFを表示する機能が組み込まれています。
簡易的な閲覧には十分ですが、注釈機能やフォーム入力機能は限定的です。
サードパーティ製PDFリーダー
Foxit Reader、PDF-XChange Viewerなど、他社が提供するPDF閲覧ソフトもあります。
これらは起動が速い、ファイルサイズが小さいなどの利点がありますが、一部の複雑なPDFでは表示が崩れることがあります。
オンラインPDFツール
Smallpdf、iLovePDFなど、ブラウザ上でPDFを操作できるオンラインサービスも存在します。
ソフトウェアのインストールが不要で便利ですが、機密情報を扱う際はセキュリティに注意が必要です。
まとめ
Adobe Acrobat Reader DCは、PDFファイルを閲覧・印刷・注釈付けできる無料のソフトウェアです。
「DC」は「Document Cloud」の略で、2015年4月7日にクラウドサービスとの連携を強化するために導入されました。
2022年10月以降は「Adobe Acrobat Reader」に名称が統一されていますが、古い名称も広く使われ続けています。
主な機能として、PDFの表示・印刷、注釈の追加、フォームへの入力、電子署名、ファイルの共有などがあります。
無料版では閲覧と基本的な操作ができますが、PDFの編集や変換には有料版のAcrobat StandardまたはAcrobat Proが必要です。
PDFの開発元であるアドビが提供する公式ソフトウェアであるため、表示精度と互換性は業界最高水準を誇ります。
ビジネスユーザー、学生、PDFを頻繁に扱うすべての人にとって、無料で使える便利なツールとなっています。
有料版へのアップグレード広告が表示される点は注意が必要ですが、基本的なPDF閲覧・操作には十分な機能を備えているソフトウェアです。

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