「テストの範囲を求めなさい」
「データの範囲は何点ですか?」
中学校の数学でこんな問題に出会ったとき、ちょっと混乱したことはありませんか?
実は「範囲」という言葉には、普段使う意味と数学で使う意味の2つがあるんです。
普段の会話では「試験範囲は第3章から第5章まで」のように「どこからどこまで」という意味で使いますよね。でも数学では、範囲とは「最大値から最小値を引いた差」のことを指します。
今回は、中学数学で習う「データの範囲」について、基本から応用まで詳しく解説していきます。
データの範囲とは?基本的な意味を理解しよう

数学や統計学で使う「範囲(レンジ、Range)」とは、データの最大値と最小値の差のことです。
英語では「Range(レンジ)」と呼ばれ、これは「幅」や「広がり」という意味を持っています。
範囲の定義
範囲 = 最大値 − 最小値
これだけです。とてもシンプルな計算ですよね。
具体例で見てみましょう
5人の数学のテストの点数が次のようだったとします。
70点、85点、92点、78点、65点
この場合:
- 最大値:92点
- 最小値:65点
- 範囲:92 − 65 = 27点
答えは「27点」となります。「65点から92点まで」ではありません。
この27という数字が、データの散らばり具合を表す一つの指標になるんです。
範囲を求める手順
範囲を求めるのは簡単ですが、確実に答えを出すためには正しい手順を踏むことが大切です。
ステップ1:データを小さい順に並べる
まず、与えられたデータを小さい順(昇順)に並べ替えます。
例:32、18、45、27、39、21
並べ替え:18、21、27、32、39、45
この作業をすることで、最大値と最小値が一目でわかるようになります。
ステップ2:最大値と最小値を見つける
並べ替えたデータから:
- 最大値:45
- 最小値:18
ステップ3:引き算をする
範囲 = 45 − 18 = 27
たったこれだけです!
範囲は何を表しているの?

「最大値から最小値を引いた差」が範囲だということはわかりました。
でも、この数字は一体何を教えてくれるのでしょうか?
データの散らばり具合を示す
範囲は、データがどれくらい散らばっているかを表す指標です。
これを「散らばりの度合い」や「変動性(へんどうせい)」と呼びます。
例1:範囲が小さい場合
Aクラスの5教科のテスト結果:
国語97点、数学91点、英語94点、理科94点、社会95点
範囲 = 97 − 91 = 6点
範囲が6点と小さいですね。これは、すべての教科で90点台の高得点を安定して取っているということです。データが1点に集まっており、散らばりの度合いが小さいと言えます。
例2:範囲が大きい場合
Bさんの5教科のテスト結果:
国語97点、数学47点、英語73点、理科85点、社会68点
範囲 = 97 − 47 = 50点
範囲が50点と大きいですね。これは、得意な教科と苦手な教科の差が大きいということです。データが広く散らばっており、散らばりの度合いが大きいと表現します。
実際の場面で考えてみよう
気温の例
ある都市の1週間の最高気温:
25℃、27℃、26℃、28℃、27℃、26℃、25℃
範囲 = 28 − 25 = 3℃
範囲が小さいので、1週間を通して安定した気温だったことがわかります。
もう一つの都市の1週間の最高気温
15℃、22℃、28℃、18℃、24℃、30℃、20℃
範囲 = 30 − 15 = 15℃
範囲が大きいので、気温の変化が激しい1週間だったことがわかります。
範囲を使った問題例
実際の問題で範囲の使い方を確認してみましょう。
問題1:基本的な範囲を求める
10人の生徒の通学時間(分):
5、20、14、32、11、8、3、25、18、15
範囲を求めなさい。
解答
まずデータを小さい順に並べます。
3、5、8、11、14、15、18、20、25、32
最大値:32分
最小値:3分
範囲 = 32 − 3 = 29分
問題2:2つのクラスの比較
男子6人のハンドボール投げの記録(m):
34.3、28.5、21.9、27.0、31.2、25.6
女子6人のハンドボール投げの記録(m):
19.8、15.2、14.3、12.3、17.5、16.4
(1) 男子と女子それぞれの範囲を求めなさい
(2) どちらの散らばりの度合いが大きいか答えなさい
解答
(1) 男子の範囲
最大値:34.3m、最小値:21.9m
範囲 = 34.3 − 21.9 = 12.4m
女子の範囲
最大値:19.8m、最小値:12.3m
範囲 = 19.8 − 12.3 = 7.5m
(2) 男子の範囲(12.4m)の方が女子の範囲(7.5m)より大きいので、男子のデータの方が散らばりの度合いが大きい。
範囲の長所と短所

範囲は便利な指標ですが、完璧ではありません。長所と短所を理解しておきましょう。
範囲の長所
1. 計算が簡単
引き算だけでできるので、誰でも簡単に計算できます。電卓も必要ありません。
2. 直感的にわかりやすい
「データがどれくらい広がっているか」が一目でわかります。
3. すぐに大まかな傾向がつかめる
データを詳しく分析する前に、全体像をざっくり把握するのに便利です。
範囲の短所
1. 外れ値の影響を受けやすい
これが範囲の最大の弱点です。
例えば:
3、5、7、9という4つの数字の範囲は、9 − 3 = 6です。
しかし、これに1つだけ極端な値「350」が加わると:
3、5、7、9、350
範囲 = 350 − 3 = 347
ほとんどの数字が10以下なのに、範囲は347と非常に大きくなってしまいます。
2. 2つの値しか使わない
範囲の計算では、最大値と最小値の2つしか使いません。その間にある他のすべてのデータは無視されてしまいます。
例えば:
データA:10、50、90(範囲80)
データB:10、11、12、88、89、90(範囲80)
どちらも範囲は80ですが、データの分布は全く違いますよね。
3. より正確な分析には向かない
本格的なデータ分析では、範囲だけでは不十分です。標準偏差や四分位範囲など、より詳しい指標を使います。
「範囲」という言葉の2つの意味
ここで注意が必要なのは、「範囲」という言葉には2つの意味があるということです。
1. 数学用語としての範囲
最大値から最小値を引いた差のこと。引き算の答えです。
例:「データ(40、46、47、48、53、53、56)の範囲を求めなさい」
答え:56 − 40 = 16(数字で答える)
2. 日常会話での範囲
どこからどこまで、という区間のこと。
例:「小数第1位を四捨五入した近似値が28のとき、元の数の範囲を求めなさい」
答え:27.5 ≦ a < 28.5(不等式で答える)
問題文をよく読んで、どちらの意味で聞かれているのか判断することが大切です。
ちなみに、「どこからどこまで」を表す数学用語には「区間」という言葉もあります。
範囲と関連する他の統計量
データの分析では、範囲以外にもいろいろな統計量を使います。
平均値(へいきんち)
すべてのデータを足して、データの個数で割ったもの。
例:5、7、8、10、15
平均値 = (5 + 7 + 8 + 10 + 15) ÷ 5 = 45 ÷ 5 = 9
中央値(ちゅうおうち)
データを小さい順に並べたとき、真ん中にくる値。
例:5、7、8、10、15
中央値は8
最頻値(さいひんち)
データの中で最も多く現れる値。
例:5、7、7、7、10、15
最頻値は7(3回出現)
四分位範囲(しぶんいはんい)
データを4つに分けたときの、真ん中の50%の範囲。外れ値の影響を受けにくいのが特徴です。
標準偏差(ひょうじゅんへんさ)
データのばらつきを、より正確に測る指標。範囲よりも詳しい分析ができます。
範囲が使われる実際の場面

範囲は日常生活や様々な分野で使われています。
教育現場
テストの点数の範囲を見ることで、クラス全体の学力差を把握できます。範囲が小さければ学力が均一、大きければ差が激しいということです。
気象情報
1日の気温の範囲(日較差)や、1年間の気温の範囲(年較差)を見ることで、その地域の気候の特徴がわかります。
品質管理
工場で製品を作るとき、サンプルの測定値の範囲が大きくなっていたら、機械に問題があるかもしれないというサインになります。
医療
血圧や血糖値などの検査値には「正常範囲」があります。これは健康な人のデータの範囲から決められています。
スポーツ
選手の記録の範囲を見ることで、安定性やコンディションの変化を分析できます。
まとめ:範囲を理解してデータ分析の第一歩を
今回は数学で使う「範囲」について詳しく解説してきました。
重要なポイントをおさらいすると:
- 範囲とは、最大値から最小値を引いた差のこと
- データの散らばり具合を表す最も簡単な指標
- 計算は簡単だが、外れ値の影響を受けやすい
- 「範囲」には数学用語と日常会話の2つの意味がある
- 本格的なデータ分析では、標準偏差など他の指標も併用する
範囲は、データの分析における基本中の基本です。計算方法はとても簡単ですが、その意味をしっかり理解することが大切です。
「データがどれくらい散らばっているか」を一瞬で把握できる範囲は、データ分析の第一歩として非常に役立ちます。
中学校ではこの範囲から始まり、高校では標準偏差や分散など、より高度な統計の指標を学んでいきます。まずは範囲をしっかりマスターして、データ分析の基礎を固めていきましょう。
数学のテストでは配点も高く、比較的得点しやすい分野なので、ぜひ得意にしておきたいですね。


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