真達羅とは?十二神将の一尊・寅年の守護神をわかりやすく解説

神話・歴史・文化

「真達羅(しんだら)」という名前を聞いたことはありますか?
お寺で見かける勇ましい武将の像の一体として、実は私たちの身近に存在しているんです。

真達羅大将は、薬師如来を守る十二神将の一尊。
寅年生まれの守護神として、1300年以上も人々を見守り続けてきました。

この記事では、真達羅の正体から有名な仏像、さらには徳川家康にまつわる不思議な逸話まで、わかりやすく紹介します。


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真達羅の基本情報

真達羅は、薬師如来の眷属(けんぞく=従者)である十二神将のひとりです。

十二神将とは、薬師如来と薬師経を信じる人々を守護する12体の武神たち。
それぞれが7,000人もの部下を率いているとされ、総勢8万4,000もの軍勢が薬師如来のもとに集結しています。

真達羅の基本的なプロフィールは以下の通りです。

項目内容
読み方しんだら
梵名(サンスクリット)シンドゥーラ(Sindura)またはキンナラ(Kinnara)
別名真達羅大将、緊那羅
対応する干支寅(とら)
本地仏普賢菩薩
梵字アン
身色黄色
持物宝珠、宝棒
司る誓願薬師如来の第三誓願「施無尽仏」

名前の由来と緊那羅との関係

真達羅という名前には、興味深い背景があります。

サンスクリット語の「キンナラ(Kiṃnara)」または「シンドゥーラ(Sindura)」を漢字で音写したものが「真達羅」なんですね。

このキンナラという存在、実はインド神話にルーツがあります。
キンナラは「人か何か」という意味を持ち、「人非人(にんひにん)」とも訳されます。

なぜそんな不思議な名前なのでしょうか?

インド神話では、キンナラは半人半獣の姿で描かれる音楽の神々でした。
馬の頭を持つ人の姿や、人の上半身に鳥の下半身を持つ姿で表現されることもあったのです。

美しい歌声を持ち、帝釈天に仕えて音楽を奏でる存在として、仏教の八部衆のひとりにも数えられています。

この音楽の神が、仏教に取り入れられる過程で十二神将の一尊「真達羅大将」として姿を変えたというわけです。


本地仏・普賢菩薩との関係

真達羅の「本地仏」は普賢菩薩(ふげんぼさつ)です。

本地仏とは、その神将の本来の姿のこと。
つまり真達羅大将は、普賢菩薩が人々を守護するために姿を変えた存在だと考えられているんですね。

普賢菩薩は、六本の牙を持つ白い象に乗った姿で知られる菩薩です。
サンスクリット語の「サマンタバドラ」は「あまねく賢い」という意味で、世界のあらゆるところに現れて人々を救う慈悲の象徴とされています。

普賢菩薩は延命のご利益があるとされ、辰年・巳年生まれの守り本尊としても信仰されています。


薬師如来の第三誓願

真達羅大将は、薬師如来が立てた12の大願のうち、第三誓願「施無尽仏(せむじんぶつ)」を司るとされています。

この誓願は「限りなく施しを与える」という願い。
人々が必要とするものを無尽蔵に与え、物質的にも精神的にも満たされるようにするという誓いです。

薬師如来は病気を治す仏として知られていますが、その救いは身体の病だけでなく、心の苦しみや貧困からの救済まで含んでいるんですね。


新薬師寺の真達羅大将像

日本で最も有名な真達羅像といえば、奈良・新薬師寺の十二神将立像です。

新薬師寺は、747年(天平19年)に光明皇后が聖武天皇の病気平癒を祈願して創建したお寺。
本堂には薬師如来坐像を中心に、12体の神将像が円形に配置されています。

真達羅大将像の特徴は以下の通りです。

項目内容
制作年代奈良時代(8世紀)
技法塑像(粘土で造形)
像高約163cm
文化財指定国宝

新薬師寺の十二神将像は、日本最古かつ最大級の十二神将像として知られています。
塑像という、木の芯に縄を巻きつけて粘土を盛り上げる技法で作られており、当時は青・朱・緑・紫などの鮮やかな彩色が施されていました。

1300年近い歳月を経て色彩はほとんど失われましたが、天平時代の仏師たちの技術と情熱を今に伝える貴重な文化財です。

12体のうち1体(波夷羅大将)は昭和時代の補作ですが、残る11体は奈良時代のオリジナル。
真達羅大将像も天平時代の傑作として、国宝に指定されています。


徳川家康と真達羅の逸話

真達羅にまつわる有名な逸話として、徳川家康の誕生伝説があります。

愛知県の鳳来寺(ほうらいじ)には、興味深い伝承が残されています。

家康の母・於大の方が出産を控えていた頃、松平家は鳳来寺で安産祈願をしていました。
ところが家康が生まれた瞬間、寺に祀られていた真達羅大将像が忽然と姿を消したというのです。

家康は寅の年、寅の日、寅の刻に生まれました。
真達羅大将は寅年の守護神です。

この奇妙な符合から、「家康は真達羅大将の生まれ変わり」という逸話が生まれたのです。

三代将軍・家光は、この縁から鳳来寺に東照宮を寄進しています。

もちろん、これは歴史的な事実というより伝説の域を出ませんが、戦国の世を統一した家康と勇猛な守護神・真達羅を結びつけたくなる気持ちもわかりますよね。


真達羅大将像が見られる寺院

真達羅大将像は、薬師如来を本尊とする寺院で見ることができます。
有名な十二神将像がある寺院をいくつか紹介しましょう。

新薬師寺(奈良県奈良市)

日本最古の十二神将像(塑像、奈良時代)が現存。
11体が国宝に指定されており、真達羅大将像もその一体です。

興福寺 東金堂(奈良県奈良市)

鎌倉時代の木造十二神将像が安置されています。
運慶一門の仏師によるものとされ、こちらも国宝です。
頭上に干支の動物を乗せた姿が特徴的です。

広隆寺(京都府京都市)

平安時代後期の十二神将像があり、国宝に指定されています。
1064年に仏師・長勢(ちょうせい)によって制作されました。

室生寺(奈良県宇陀市)

鎌倉時代の十二神将像があり、動きのある大胆なポーズが特徴。
頭に干支の動物を乗せたタイプの像です。


十二神将一覧

真達羅大将を含む十二神将の一覧です。
干支と本地仏の対応は資料によって異なる場合がありますが、ここでは一般的な説を紹介します。

名前読み干支本地仏
毘羯羅大将びから子(ねずみ)釈迦如来
招杜羅大将しょうとら丑(うし)大日如来(金剛手菩薩)
真達羅大将しんだら寅(とら)普賢菩薩
摩虎羅大将まこら卯(うさぎ)薬師如来(大威徳明王)
波夷羅大将はいら辰(たつ)文殊菩薩
因達羅大将いんだら巳(へび)地蔵菩薩
珊底羅大将さんていら午(うま)虚空蔵菩薩
頞儞羅大将あにら未(ひつじ)如意輪観音
安底羅大将あんていら申(さる)観音菩薩
迷企羅大将めきら酉(とり)阿弥陀如来
伐折羅大将ばさら戌(いぬ)勢至菩薩
宮毘羅大将くびら亥(いのしし)弥勒菩薩

※十二神将と干支の対応は、寺院や資料によって異なる場合があります。


まとめ

この記事では、十二神将の一尊・真達羅大将について解説しました。

  • 真達羅は薬師如来を守る十二神将のひとりで、寅年の守護神
  • サンスクリット語の「キンナラ」「シンドゥーラ」を音写した名前
  • 本地仏は普賢菩薩で、薬師如来の第三誓願を司る
  • 新薬師寺の塑像(国宝)が日本最古の作品として知られる
  • 徳川家康の誕生にまつわる不思議な逸話がある

寅年生まれの方は、ぜひ自分の守護神として真達羅大将に会いに行ってみてはいかがでしょうか。
新薬師寺をはじめ、全国の薬師如来を祀るお寺で、1300年の時を超えた守護神たちに出会えますよ。

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