迷企羅大将とは?十二神将の一尊を徹底解説

神話・歴史・文化

「迷企羅(めきら)」という名前を聞いたことはありますか?
仏教に詳しい方なら、薬師如来を守護する「十二神将」のひとりとしてご存知かもしれません。

実は迷企羅大将、その名前にはサンスクリット語で「太陽」という意味が隠されているんです。
この記事では、迷企羅大将の特徴や由来、そして日本各地に残る仏像について解説していきます。


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迷企羅大将の基本情報

迷企羅大将は、薬師如来とその教えを信じる人々を守護する「十二神将」のひとりです。

十二神将は「十二薬叉大将(じゅうにやくしゃだいしょう)」とも呼ばれる護法の神々。
もともとはインドの夜叉(やしゃ)、つまり鬼神だったのですが、仏の教えに帰依して善神となり、薬師如来の眷属(けんぞく)として働くようになったと伝えられています。

十二神将はそれぞれ7,000の部下を率いており、合計で84,000もの夜叉軍団を統率しています。
この84,000という数字、実は人間の煩悩の数と同じなんですね。


名前の意味|「太陽」を表すサンスクリット語

迷企羅の名前は、サンスクリット語の「Mihira(ミヒラ)」を音写したものです。

「Mihira」はサンスクリット語で「太陽」を意味する言葉。
古代インドでは太陽神の異名としても使われており、光り輝く存在、知恵と輝きの象徴として尊ばれてきました。

仏典が中国を経由して日本に伝わる過程で、「Mihira」の発音に漢字を当てはめて「迷企羅」と表記されるようになったわけです。
ちなみに、同じく十二神将の「宮毘羅(くびら)」は「Kumbhīra(クンビーラ)」、「伐折羅(ばさら)」は「Vajra(ヴァジュラ)」というように、すべてサンスクリット語がルーツになっています。


迷企羅大将の姿と特徴

十二神将は基本的に、甲冑を身にまとった武将の姿で表現されます。
怒りを表した「忿怒(ふんぬ)」の表情が特徴的で、仏敵を退ける強い意志を全身で表現しているんですね。

迷企羅大将の場合、以下のような特徴で描かれることが多いとされています。

  • 炎のように逆立った髪(炎髪)
  • 口を大きく開いた威嚇の表情
  • 独鈷(とっこ)や金剛杵(こんごうしょ)を持つ

ただし、十二神将の持物(じもつ)やポーズは経典や時代によってまちまちで、「迷企羅大将は必ずこの武器を持っている」という決まりはありません。
そのため、仏像を見ただけでは「これは迷企羅だ」と判断するのは難しいのが実情です。


本地仏と十二支の関係

十二神将には、それぞれ「本地仏(ほんじぶつ)」という、化身前の本来の姿となる仏・菩薩がいます。

迷企羅大将の本地仏は「阿弥陀如来(あみだにょらい)」。
西方極楽浄土の教主として知られる、大乗仏教で最も信仰を集める如来のひとりですね。

また、十二神将は十二支(干支)とも結びつけられており、迷企羅大将は「酉(とり)」の守護神とされています。
酉年生まれの人にとっては、迷企羅大将が生涯を通じて守ってくれる神将ということになります。

ただし、十二神将と十二支の対応は経典や寺院によって異なることがあり、「迷企羅は寅年」とする説もあります。
お参りの際は、各寺院の案内を確認するのがおすすめです。

項目内容
漢名迷企羅大将(めきら だいしょう)
梵名Mihira(ミヒラ)
意味太陽
本地仏阿弥陀如来
十二支酉(とり)※諸説あり
種字キリーク

新薬師寺の迷企羅大将像|国宝に輝く天平の傑作

日本で最も有名な十二神将像のひとつが、奈良・新薬師寺に安置されている塑像(そぞう)です。

新薬師寺は天平19年(747年)、光明皇后が聖武天皇の病気平癒を願って創建したと伝わる古刹。
本堂の中央には薬師如来坐像が鎮座し、それを取り囲むようにして十二神将が円形に配置されています。

この十二神将像は奈良時代(8世紀)の作で、日本最古かつ最大級の十二神将像として知られています。
12体のうち11体が国宝に指定されており(1体は昭和時代の補作)、塑造(粘土で形作る技法)による繊細な表現が高く評価されています。

興味深いのは、新薬師寺では「寺伝の名称」と「国宝指定の名称」が異なること。
本尊に向かってすぐ右に立つ、逆立った髪と大きく開いた口が印象的な像は、寺伝では「伐折羅(ばさら)大将」と呼ばれていますが、国宝指定名称では「迷企羅大将」となっています。

この像は2012年から3年間、日本の500円切手のデザインにも採用されました。
その迫力ある表情は、歌舞伎の隈取りにも影響を与えたといわれるほどです。


十二神将一覧|迷企羅を含む全12尊

最後に、十二神将の全12尊を一覧で紹介します。

漢名読み梵名本地仏十二支
宮毘羅大将くびらKumbhīra弥勒菩薩亥(いのしし)
伐折羅大将ばさらVajra勢至菩薩戌(いぬ)
迷企羅大将めきらMihira阿弥陀如来酉(とり)
安底羅大将あんちらAṇḍīra観音菩薩申(さる)
頞儞羅大将あにらAnila如意輪観音未(ひつじ)
珊底羅大将さんちらŚaṇḍila虚空蔵菩薩午(うま)
因達羅大将いんだらIndra地蔵菩薩巳(へび)
波夷羅大将はいらPajra文殊菩薩辰(たつ)
摩虎羅大将まこらMahoraga大威徳明王卯(うさぎ)
真達羅大将しんだらKinnara普賢菩薩寅(とら)
招杜羅大将しょうとらCatura大日如来丑(うし)
毘羯羅大将びからVikarāla釈迦如来子(ねずみ)

※十二支との対応は経典や寺院によって異なる場合があります。


まとめ

この記事では、十二神将のひとり・迷企羅大将について解説しました。

  • 迷企羅大将は薬師如来を守護する十二神将のひとり
  • サンスクリット語の「Mihira(ミヒラ)」が由来で、「太陽」を意味する
  • 本地仏は阿弥陀如来、十二支は酉年に対応
  • 新薬師寺の迷企羅大将像は国宝に指定されている天平時代の傑作
  • 十二神将はそれぞれ7,000の眷属を率い、合計84,000の夜叉を統率している

酉年生まれの方は、ぜひ一度、新薬師寺や興福寺を訪れて、自分の守護神に会いに行ってみてはいかがでしょうか。

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