七福神の中で、いちばん影が薄い神様は誰だと思いますか?
恵比寿や大黒天は有名ですよね。
弁財天も知っている人は多いでしょう。
でも「寿老人」と聞いて、すぐにピンとくる人は意外と少ないかもしれません。
実はこの寿老人、「長生きしたい」と願う人にとっては最強の味方なんです。
しかも、その正体は夜空に輝く「ある星」の化身だという、ロマンあふれる伝説もあります。
この記事では、寿老人の姿や由来、ご利益、そして似ているとよく言われる福禄寿との違いまで、わかりやすく解説していきます。
寿老人ってどんな神様?
寿老人(じゅろうじん)は、七福神の一柱で、長寿をつかさどる神様です。
もともとは中国の道教に由来する神仙で、日本には室町時代以降に伝わったとされています。
「寿老神」や「樹老人」と書かれることもありますが、読み方はどれも同じ「じゅろうじん」です。
七福神の中では唯一、名前に「神」ではなく「人」がつくのも特徴的ですね。
これは、もともと中国で実在した仙人がモデルになっているからだと言われています。
伝説によると、寿老人のモデルとなった人物は宋の時代(11世紀頃)に現れたとされ、なんと1000歳から1500歳まで生きたという驚きのエピソードも残っています。
寿老人の姿と特徴
寿老人を見分けるポイントは、いくつかあります。
外見の特徴
まず目を引くのは、長い白髭をたくわえた穏やかな老人の姿です。
頭には頭巾(帽子)をかぶっていることが多く、これが後で紹介する福禄寿と見分けるポイントにもなります。
背丈はそれほど高くなく、仙人らしい道着を身にまとっています。
持ち物
寿老人がよく持っているものは以下のとおりです。
| 持ち物 | 意味 |
|---|---|
| 杖 | 長寿のシンボル。杖の先には巻物が結ばれている |
| 巻物(司命の巻) | すべての人の寿命が記されているとされる |
| 桃 | 中国で「不老長寿」を象徴する果物 |
| うちわ | 災難を払いのける力があるとされる |
| 瓢箪(ひょうたん) | 不死の霊薬が入っているとも言われる |
特に「司命の巻」と呼ばれる巻物は興味深いですね。
この巻物には、生きとし生けるものすべての寿命が書かれていて、寿老人がその内容を書き換えることで、人の寿命を延ばすことができると伝えられています。
従えている動物
寿老人といえば、鹿(しか)を従えている姿が有名です。
この鹿は「玄鹿(げんろく)」と呼ばれる特別な鹿で、千年生きると黒くなり、さらに千年経つと白くなる(白鹿)という中国の伝承があります。
つまり、何千年も生きている長寿の象徴なんですね。
ちなみに寿老人はお酒好きとしても知られていて、唐の詩人・白居易の詩には「桃酒を人々と酌み交わし、長く酔いしれていた」という逸話も残っています。
南極老人星(カノープス)の化身
寿老人の正体として有名なのが、南極老人星(なんきょくろうじんせい)の化身という説です。
南極老人星とは、りゅうこつ座にある「カノープス」という星のこと。
全天で2番目に明るい恒星なのですが、日本ではほとんど見ることができません。
なぜ見えにくいの?
カノープスは南の空の低い位置にしか昇らないため、日本では地平線ギリギリにしか現れないんです。
東京付近での南中高度はわずか約2度。
これは、腕を伸ばして見た小指の幅2〜3本分という、ものすごく低い位置です。
しかも地平線近くの星は大気の影響で暗く見えるため、条件が揃わないとなかなかお目にかかれません。
福島県北部より北では、そもそも地平線の上に昇ることすらありません。
見ると長生きできる?
古代中国では、このカノープスを「見ると寿命が延びる」縁起の良い星として崇めていました。
滅多に見えないからこそ貴重で、さらに地平線近くで赤っぽく輝くことから「赤ら顔の酒好きの老人」に見立てられたわけですね。
これが寿老人のイメージの元になったと考えられています。
また、中国では「戦争や騒乱のときにはこの星は見えず、天下泰平のときに現れる」という言い伝えもあり、平和と長寿の象徴とされてきました。
日本では房総半島南端の漁港「布良(めら)」でよく見られたことから「布良星(めらぼし)」とも呼ばれています。
寿老人のご利益
寿老人に期待できるご利益は、主に以下のものがあります。
| ご利益 | 内容 |
|---|---|
| 延命長寿 | 最も代表的なご利益。健康で長生きできるよう願う |
| 健康・病気平癒 | 病気を治し、健康な体を授ける |
| 家庭円満 | 家族の仲が良く、穏やかに暮らせる |
| 福徳円満 | 幸せに満ちた生活を送れる |
七福神の中でも、長寿に特化した神様と言えますね。
「とにかく健康で長生きしたい」「家族の健康を願いたい」という方には、寿老人への参拝がおすすめです。
福禄寿との違い
「寿老人と福禄寿って同じじゃないの?」
そう思っている人、実は多いんです。
たしかにこの2柱は見た目もご利益もよく似ていて、もともと同一神だったという説もあります。
実際、両方とも南極老人星(カノープス)の化身とされていますし、かつては寿老人が七福神から外されて、代わりに吉祥天や猩々(しょうじょう)が入っていた時代もありました。
でも現在では、別々の神様として区別されています。
見分けるポイントを整理してみましょう。
見た目の違い
| 項目 | 寿老人 | 福禄寿 |
|---|---|---|
| 頭 | 帽子(頭巾)をかぶっている | 頭が異常に長く、禿げている |
| 持ち物 | うちわ・桃・杖(巻物付き) | 宝珠・杖(巻物付き) |
| 従える動物 | 鹿 | 鶴 |
いちばん分かりやすいのは、帽子をかぶっているかどうかです。
帽子があれば寿老人、禿げた長い頭なら福禄寿と覚えておくといいでしょう。
また、鹿と一緒なら寿老人、鶴と一緒なら福禄寿というのも見分けるコツです。
ご利益の違い
| 神様 | 主なご利益 |
|---|---|
| 寿老人 | 延命長寿に特化 |
| 福禄寿 | 子孫繁栄・財運招福・延命長寿の3つ |
福禄寿は「福・禄・寿」という名前のとおり、子孫繁栄(福)、財運(禄)、長寿(寿)の3つのご利益があるとされています。
一方の寿老人は、長寿に特化しているのが特徴。
「長生きしたい」という願いを一番に叶えたいなら、寿老人に頼むのが良いかもしれませんね。
寿老人にまつわる伝承
寿老人には、いくつかの興味深い伝承が残っています。
桃を授ける話
ある日、旅の僧が険しい山道を歩いていると、道ばたに腰かけた一人の老人に出会いました。
白い髭をたくわえ、杖を手にしたその老人は、静かに微笑んでいます。
僧が挨拶すると、老人はふところから芳しい香りの桃を一つ取り出し、無言で差し出しました。
僧がその桃をかじると、天上の香りが口いっぱいに広がり、周囲の空気まで清らかに変わったように感じたそうです。
感嘆した僧が再び顔を上げると、老人はすでにその場を離れ、雲に乗って静かに空へと昇っていく姿がありました。
僧が足元を見ると、そこには鹿の足跡がくっきりと残っていたといいます。
囲碁を打つ寿老人
絵画には、囲碁を打つ寿老人の姿が描かれることがあります。
これには「尽きぬ時」「急がぬ心」という意味が込められていて、時の流れを味方につける知恵を表しているとされています。
長寿の秘訣は、あくせくせずにゆったりと過ごすことなのかもしれませんね。
寿老人の真言
寿老人にお参りするとき、唱えると良いとされる真言(マントラ)があります。
「オン バザラユセイ ソワカ」
これは普賢菩薩の延命呪と同じ真言で、「延命長寿」を願うときに唱えられます。
お参りの際に心の中で唱えてみてはいかがでしょうか。
寿老人を祀る主な神社・寺院
全国各地で、七福神巡りの一環として寿老人を祀る神社やお寺があります。
代表的なスポットをいくつかご紹介します。
| 名称 | 所在地 | 特徴 |
|---|---|---|
| 鷲神社(おおとりじんじゃ) | 東京都台東区 | 浅草名所七福神の寿老人。酉の市で有名 |
| 長安寺 | 東京都台東区 | 谷中七福神の寿老人。最古の七福神巡りコースの一つ |
| 白髭神社 | 東京都墨田区 | 隅田川七福神の寿老人 |
| 天王寺 | 東京都台東区 | 谷中七福神の毘沙門天だが、寿老人像も安置 |
| 妙隆寺 | 神奈川県鎌倉市 | 鎌倉七福神の寿老人 |
お正月の七福神巡りは、江戸時代から続く縁起の良い習慣です。
寿老人を祀る神社やお寺を訪れて、健康長寿を願ってみてはいかがでしょうか。
まとめ
この記事では、七福神の一柱・寿老人について解説しました。
- 寿老人は道教由来の長寿の神様で、中国の仙人がモデルとされる
- 南極老人星(カノープス)の化身という説があり、見ると長生きできると言われている
- 長い白髭、帽子、杖と巻物、鹿を従えた姿が特徴
- 延命長寿に特化したご利益を持つ
- 福禄寿と似ているが、帽子の有無・従える動物(鹿か鶴か)で見分けられる
- 真言は「オン バザラユセイ ソワカ」
七福神の中ではちょっと地味な存在かもしれませんが、「健康で長生きしたい」という願いは、きっと多くの人が持っているはず。
寿老人の穏やかな笑顔を思い浮かべながら、長寿を願ってみてください。


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