海の上を堂々と進む軍艦、水中に静かに潜む潜水艦——。
軍船と一口に言っても、その種類は実に多彩です。
現代の海軍が運用する最新鋭艦から、古代ギリシャ時代の櫂で漕ぐ船まで、軍船の歴史は数千年に及びます。
それぞれの時代に合わせて進化を遂げてきた軍船の世界を、この記事では詳しく紹介していきます。
軍船とは?
軍船は、軍事目的で使用される船舶の総称です。
戦闘能力を持つ艦艇だけでなく、補給艦や輸送艦なども含まれます。
現代では「軍艦」や「艦艇」という言葉が一般的ですが、歴史的には様々な呼び方がありました。
古代の櫂で漕ぐガレー船から、帆で進むガレオン船、そして蒸気機関を搭載した戦艦、さらには原子力で動く潜水艦まで——。
軍船の進化は、そのまま海戦の歴史そのものなんですね。
現代の軍船|7つの主要タイプ
まずは現代の海軍が運用する主要な軍船を見ていきましょう。
国によって呼び方や分類が多少異なりますが、基本的には以下の7タイプに分けられます。
航空母艦(Aircraft Carrier)
海上に浮かぶ巨大な飛行場——それが航空母艦です。
艦載機を搭載し、発艦・着艦させることができる軍艦で、現代海軍の花形といえます。
アメリカ海軍のニミッツ級空母は全長約330メートル、排水量10万トンを超える巨大艦です。
約90機の航空機を搭載でき、「4.5エーカーの主権ある移動可能なアメリカ領土」とも表現されています。
空母は単独では行動せず、護衛の駆逐艦や巡洋艦とともに「空母打撃群」を形成します。
現在、大型空母を運用しているのはアメリカ、中国、イギリス、フランス、インドなど限られた国だけです。
巡洋艦(Cruiser)
巡洋艦は大型の水上戦闘艦で、かつては海軍の主力でした。
現代では建造・維持コストが高いため、保有国は限られています。
アメリカ海軍のタイコンデロガ級巡洋艦とロシア海軍のキーロフ級巡洋艦、スラヴァ級巡洋艦が代表例です。
排水量は7,000トンから10,000トン級が一般的で、対空・対艦・対潜のすべてに対応できる万能艦です。
かつては重巡洋艦(8インチ砲搭載)と軽巡洋艦(6インチ砲搭載)に分類されていました。
しかし現代では大型駆逐艦の性能向上により、巡洋艦と駆逐艦の境界は曖昧になっています。
駆逐艦(Destroyer)
駆逐艦は海軍の主力艦です。
速力と攻撃力を兼ね備え、対艦・対潜・対空のあらゆる任務に対応できます。
元々は19世紀末に登場した水雷艇を迎撃するための「水雷艇駆逐艦」が起源でした。
その後、魚雷装備や対潜装備が追加され、現代では「海のオールラウンダー」として活躍しています。
排水量は6,000トンから10,000トン級まで幅広く、国によって規模が異なります。
アメリカ海軍のアーレイ・バーク級、日本の海上自衛隊のまや型、中国海軍の052D型などが代表例です。
駆逐艦は30ノット以上の高速で航行でき、艦隊の護衛や独立作戦の両方をこなせるんですね。
フリゲート(Frigate)
フリゲートは駆逐艦よりも小型の水上戦闘艦です。
排水量は3,000トンから7,000トン級で、駆逐艦とコルベットの中間に位置します。
かつての大型帆船時代にも「フリゲート」という艦種がありましたが、現代のフリゲートとは別物です。
第二次世界大戦後、対潜護衛艦として復活し、現在では多目的艦として活躍しています。
駆逐艦に比べて武装は控えめですが、コストが安く、多くの国が運用しています。
イギリス海軍の26型フリゲート、ドイツ海軍のザクセン級、日本の護衛艦(フリゲート相当)などがあります。
コルベット(Corvette)
コルベットはフリゲートよりもさらに小型の戦闘艦です。
排水量は500トンから3,000トン級で、沿岸警備や哨戒任務に適しています。
小型で高速、そして建造コストが安いのが最大の利点です。
特殊な造船施設を必要とせず、量産しやすいため、小規模な海軍でも運用できます。
現代のコルベットは対艦ミサイルや対潜装備を搭載し、侮れない戦闘力を持っています。
ロシア海軍のステレグシュチイ級、中国海軍の056型、インド海軍のカモルタ級などが代表例です。
ミサイル艇はコルベットよりもさらに小型で、高速かつ強力な対艦ミサイルを装備しています。
潜水艦(Submarine)
水中を自由に航行できる潜水艦は、現代海軍の切り札です。
姿を隠したまま敵艦を攻撃でき、探知が極めて困難なため「究極のステルス兵器」とも呼ばれます。
潜水艦は大きく2つのタイプに分けられます。
原子力潜水艦は原子炉を動力源とし、理論上は無限に潜航し続けることができます。
アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国、インドの6カ国のみが保有しています。
原子力潜水艦はさらに攻撃型と弾道ミサイル型に分類されます。
攻撃型は魚雷や巡航ミサイルで敵艦や地上目標を攻撃し、弾道ミサイル型(SSBN)は核弾頭搭載の弾道ミサイルを発射します。
通常動力潜水艦はディーゼルエンジンとバッテリーで航行します。
原子力潜水艦に比べて小型で静粛性に優れ、沿岸海域での運用に適しています。
日本の海上自衛隊が運用する「そうりゅう型」は、世界最大級の通常動力潜水艦として知られています。
水陸両用艦(Amphibious Warfare Ships)
水陸両用艦は兵員や装備を海から陸へ送り届ける専門艦です。
揚陸艦、輸送艦、ドック型揚陸艦などが含まれます。
アメリカ海軍のワスプ級強襲揚陸艦は、ヘリコプターや垂直離着陸機を搭載し、海兵隊を迅速に展開できます。
全長約257メートルで、小型空母に匹敵する規模を持っています。
水陸両用艦には、ビーチに直接乗り上げて車両を降ろせる小型揚陸艇も含まれます。
戦車のような外見で水陸両用のAAV(水陸両用強襲車)などが代表例です。
歴史的な軍船|古代から近代まで
次に、歴史を彩った軍船を見ていきましょう。
これらの多くは現代では使われていませんが、海戦の歴史を理解する上で欠かせない存在です。
ガレー船(Galley)
ガレー船は古代から中世まで約2000年にわたって活躍した軍船です。
多数の漕ぎ手が櫂を漕いで進み、補助的に帆も使用しました。
紀元前3000年頃に登場し、地中海を中心に発展しました。
船首には「ラム」と呼ばれる衝角があり、敵船に体当たりして穴を開けるのが主な攻撃方法でした。
三段櫂船(トライレーム)は古代ギリシャの代表的なガレー船です。
櫂を3段に配置し、約170人の漕ぎ手が乗り込みました。
紀元前480年のサラミスの海戦では、アテネの三段櫂船がペルシャの大艦隊を破っています。
機動性を活かしてペルシャの大型帆船を翻弄し、ラムで次々と撃沈したんですね。
ガレー船が活躍した最後の大規模海戦は、1571年のレパントの海戦でした。
この戦いでキリスト教連合軍がオスマン帝国海軍を破りましたが、これ以降ガレー船は衰退していきます。
ガレー船が廃れた理由は2つあります。
第一に、大砲が普及したことで、漕ぎ手で満員のガレー船では十分な火砲を積めなくなりました。
第二に、漕ぎ手の確保が困難になり、運用コストが高騰したためです。
ガレオン船(Galleon)
ガレオン船は16世紀から18世紀に活躍した大型帆船です。
4~5本のマストを持ち、大量の大砲を搭載できました。
キャラック船から発展した船型で、船体が細長く、速度が速いのが特徴でした。
幅と全長の比が1:4と細身で、荷物も多く積めました。
スペインはガレオン船を使って新大陸の富を本国へ運びました。
有名なフランシス・ドレークが世界一周に使用したゴールデン・ハインド号もガレオン船です。
日本でも1613年に伊達政宗の命でサン・フアン・バウティスタ号が建造されています。
支倉常長ら使節団を乗せてローマ教皇のもとへ派遣されましたが、鎖国令により国産遠洋船の歴史は途絶えました。
戦列艦(Ship of the Line)
戦列艦は17世紀から19世紀に活躍した大型軍艦です。
複数の砲列デッキに数十門から100門以上の大砲を搭載しました。
「戦列」とは、艦隊が一列に並んで敵艦隊と砲撃戦を行う戦術のことです。
この戦術に耐えうる大型艦だけが「戦列艦」と呼ばれました。
イギリス海軍のHMSヴィクトリー(1765年就役)は有名な戦列艦です。
1805年のトラファルガーの海戦でネルソン提督の旗艦として活躍しました。
戦列艦は木造帆船時代の最終形態といえますが、19世紀半ばに蒸気機関と装甲が登場すると時代遅れになっていきます。
戦艦(Battleship)
戦艦は20世紀前半の海軍の主力艦でした。
大口径の主砲と厚い装甲を持ち、当時は「海の王者」として君臨していました。
第一次世界大戦では弩級戦艦(ドレッドノート級)が登場し、各国が建艦競争を繰り広げました。
日本の大和型戦艦は世界最大の46センチ砲を搭載し、史上最大の戦艦として知られています。
しかし第二次世界大戦で航空母艦が海戦の主役となると、戦艦の重要性は急速に低下しました。
1940年代以降、新造戦艦は建造されていません。
現在、現役の戦艦は世界に1隻も存在しません。
アメリカ海軍のアイオワ級戦艦が最後の現役戦艦でしたが、2005年に退役しています。
軍船の種類一覧表
ここでは現代と歴史的な軍船を一覧表にまとめました。
詳細な情報を知りたい方は参考にしてください。
現代の主要軍艦一覧
| 艦種 | 英語名 | 排水量の目安 | 主な任務 |
|---|---|---|---|
| 航空母艦 | Aircraft Carrier | 40,000~100,000トン | 艦載機の運用、航空打撃 |
| 巡洋艦 | Cruiser | 7,000~10,000トン | 対空防御、指揮統制 |
| 駆逐艦 | Destroyer | 6,000~10,000トン | 対艦・対潜・対空の多目的任務 |
| フリゲート | Frigate | 3,000~7,000トン | 対潜哨戒、護衛任務 |
| コルベット | Corvette | 500~3,000トン | 沿岸警備、哨戒任務 |
| 攻撃型原子力潜水艦 | SSN | 6,000~10,000トン | 敵艦攻撃、偵察 |
| 弾道ミサイル原子力潜水艦 | SSBN | 15,000~24,000トン | 核抑止、戦略攻撃 |
| 通常動力潜水艦 | SS/SSK | 2,000~4,000トン | 沿岸防衛、対艦攻撃 |
| 強襲揚陸艦 | Amphibious Assault Ship | 20,000~40,000トン | 海兵隊の輸送・上陸支援 |
歴史的な軍船一覧
| 船種 | 時代 | 特徴 |
|---|---|---|
| ペンテコントール(50櫂船) | 紀元前8世紀~ | 片舷25人ずつ、計50人の漕ぎ手 |
| 三段櫂船(トライレーム) | 紀元前5世紀~ | 櫂を3段配置、約170人の漕ぎ手 |
| ガレー船 | 紀元前3000年~19世紀 | 櫂と帆の併用、地中海で発達 |
| ヴァイキング船 | 8~11世紀 | 浅い吃水、河川航行可能 |
| コグ船 | 11~15世紀 | 北欧の商船・軍船、ハンザ同盟で使用 |
| キャラベル船 | 15~16世紀 | 小型帆船、大航海時代初期に活躍 |
| キャラック船 | 15~16世紀 | 大型帆船、遠洋航海に適す |
| ガレオン船 | 16~18世紀 | 大砲搭載可能、新大陸との交易 |
| 戦列艦 | 17~19世紀 | 多数の大砲、戦列戦術に対応 |
| 戦艦 | 19世紀後半~20世紀半ば | 大口径砲と厚い装甲 |
| 装甲艦 | 19世紀半ば | 蒸気機関と鉄製装甲 |
| 巡洋戦艦 | 20世紀初頭 | 戦艦級の火力と巡洋艦級の速力 |
補助艦艇の種類
| 艦種 | 英語名 | 主な任務 |
|---|---|---|
| 補給艦 | Replenishment Oiler | 燃料・弾薬・食料の洋上補給 |
| 揚陸艦 | Landing Ship | 部隊・装備の上陸支援 |
| 掃海艇 | Minesweeper | 機雷の除去 |
| 哨戒艇 | Patrol Boat | 沿岸警備、密輸取締 |
| 潜水艦救難艦 | Submarine Rescue Ship | 遭難潜水艦の救助 |
| 工作艦 | Repair Ship | 艦艇の洋上修理 |
| 輸送艦 | Transport Ship | 兵員・物資の輸送 |
| 測量艦 | Survey Ship | 海底地形の調査 |
| 病院船 | Hospital Ship | 傷病者の治療(非武装) |
まとめ
軍船の種類について、現代から歴史まで幅広く見てきました。
最後に要点を整理しておきましょう。
現代の主要軍艦7種
- 航空母艦:艦載機を運用する海上基地
- 巡洋艦:大型多目的艦、現在は少数
- 駆逐艦:海軍の主力、万能型戦闘艦
- フリゲート:中型護衛艦、コスト効率良好
- コルベット:小型高速艦、沿岸防衛向け
- 潜水艦:水中のステルス兵器、原子力型と通常型
- 水陸両用艦:海から陸への兵力投射
歴史的な軍船の系譜
- 古代:ガレー船、三段櫂船(櫂で漕ぐ)
- 大航海時代:ガレオン船(帆走と大砲)
- 近代:戦列艦、戦艦(蒸気機関と装甲)
軍船は時代とともに進化してきました。
人力から風力へ、蒸気機関から原子力へ——技術の発展が海戦の様相を大きく変えてきたんですね。
現代では航空母艦と潜水艦が海軍力の中核を担っています。
特に原子力潜水艦は、核抑止力の要として各国が重視しているんです。
古代のガレー船から最新の原子力空母まで、軍船の多様性と進化の歴史を知ると、海洋国家にとって海軍力がいかに重要かがよくわかりますね。


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