南の増長天(ぞうちょうてん)|四天王の一尊として南方を守護する武神

神話・歴史・文化

お寺を訪れると、如来や菩薩の周りで睨みを利かせている武将姿の神様を見たことはありませんか?

それが四天王です。
東西南北を守る4体の武神のうち、南を担当するのが「増長天(ぞうちょうてん)」。

名前に「増長」って入っているけど、これは悪い意味じゃないんです。
むしろ「成長させる」「発展させる」という、とても前向きな意味を持つ神様なんですよ。

この記事では、増長天の姿や役割、仏教における位置づけをわかりやすく解説します。

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増長天とは?

増長天は、仏教を守護する四天王の一尊です。
四天王とは、東西南北をそれぞれ守る4体の武神のこと。

増長天はその中で南方を守護する役割を担っています。

梵名(サンスクリット語)では「ヴィルーダカ(Virūḍhaka)」と呼ばれ、「成長したもの」「増大したもの」という意味があります。
この名前の通り、善の成長を促し、悪を退ける力を持つとされているんですね。

もともとはインド神話の雷神インドラ(帝釈天)の配下でしたが、後に仏教に取り入れられて守護神となりました。

増長天の姿

増長天は、典型的な武将の姿で表現されます。

日本の仏像では、唐代の武将風の甲冑をまとい、憤怒の表情で立っている姿が一般的です。
足元には邪鬼を踏みつけていることが多く、「悪を許さない」という強い意志が感じられます。

手には戟(げき)という武器を持ちます。
戟は槍と斧を組み合わせたような武器で、まさに戦いの神様にふさわしい持ち物ですね。

体の色は赤肉色とされています。
青い空や海を連想させる他の四天王に比べて、増長天は情熱的で力強い印象を与える色なんです。

増長天が守る場所

増長天は、仏教の宇宙観における「須弥山(しゅみせん)」という聖なる山の南側に住んでいるとされています。

具体的には「南瑠璃埵(みなみるりた)」という場所。
そこから「南贍部洲(なんせんぶしゅう)」という地域を見守っています。

南贍部洲は、仏教の世界観で「人間が住む世界」とされる場所です。
つまり増長天は、私たち人間の世界を南側から守ってくれている神様なんですね。

ちなみに仏堂では、本尊の向かって左手前(南西の位置)に安置されることが多いです。

増長天の配下

増長天には、配下として仕える眷属(けんぞく)がいます。

主な眷属は鳩槃荼(くはんだ)薜茘多(へいれいた)という鬼神たち。

鳩槃荼は、もともと人の精気を奪う恐ろしい鬼でした。
でも増長天の配下となってからは、仏教を守る側に回ったんです。

悪い奴が改心して味方になる——そんな展開、なんだかドラマチックですよね。

四天王としての役割

増長天は単独で祀られることは少なく、基本的に四天王の一員として活動しています。

四天王のメンバーはこちら:

  • 持国天(じこくてん):東を守る
  • 増長天(ぞうちょうてん):南を守る
  • 広目天(こうもくてん):西を守る
  • 多聞天(たもんてん):北を守る

4体で須弥山の中腹をぐるりと囲み、仏法を守っています。

彼らは帝釈天という神様の部下として働いていて、定期的に人間界を巡回して善悪の状況をチェックしているんだとか。
「最近、人間界はどうなってる?」って報告会を開いているわけですね。

ちなみに四天王のリーダー格は北の多聞天(毘沙門天)。
多聞天だけは単独で祀られることもあるほど人気なんです。

お釈迦様との関わり

増長天と四天王の深い関わりは、お釈迦様の時代にまで遡ります。

仏教の経典によると、お釈迦様が亡くなる前、四天王にこんなことを告げたとされています。

「私が涅槃に入った後、そなたたちは仏教を守護しなさい。将来、仏教を脅かす悪い王が現れるだろう。その時、協力して仏法を守るように」

お釈迦様の入滅後、帝釈天は四天王それぞれに担当方位を命じました。
増長天には「南方で仏法を守りなさい」と伝えられたのです。

つまり増長天は、お釈迦様から直接託された使命を今も果たし続けているんですね。

有名な増長天像

日本には、素晴らしい増長天の仏像がいくつも残っています。

東大寺の増長天立像

奈良時代の作風を色濃く残す名作です。
東大寺の戒壇堂に、他の四天王と共に安置されています。

奈良の大仏も圧巻ですが、この四天王像も見応えがありますよ。

東寺の増長天立像

平安時代の作である東寺講堂の四天王像。
講堂は「立体曼荼羅」として有名で、仏教の宇宙観を3次元で表現しています。

南側に配置された増長天立像は、その世界観の中で重要な役割を果たしています。

法隆寺の増長天像

日本最古の四天王像の一つとされています。
古い時代の像らしく、後世の武将風とは少し異なる雰囲気を持っているのが特徴です。

まとめ

増長天についてポイントをおさらいしましょう。

  • 四天王の一尊で、南方を守護する武神
  • 名前の意味は「成長」「増大」で、善の発展を促す
  • 武将姿で甲冑をまとい、剣や戟を持つ
  • 須弥山の南側に住み、人間界を見守る
  • 鳩槃荼や薜茘多という鬼神を配下に従える
  • お釈迦様から仏法守護を託された
  • 東大寺、東寺、法隆寺などに有名な仏像がある

お寺を訪れた際は、ぜひ南側に立つ増長天の姿を探してみてください。
その力強い表情と武器を手にした姿から、仏教を守る強い意志が伝わってくるはずです。

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