お寺の四隅で睨みをきかせている仏像、見たことありませんか?
甲冑を着て、厳しい顔で立っているあの像です。
実はあれ、仏教世界を守る「四天王」という4人組の守護神なんです。
その中でも西の方角を守っているのが、今回紹介する「広目天」。
この神様、ただ西を守っているだけじゃないんですよ。
「広い目で世界を見渡す」という、ちょっと面白い役割を持っているんです。
この記事では、広目天の特徴や役割、四天王の中での立ち位置についてわかりやすく解説していきます。
広目天ってどんな神様?
広目天は、仏教における四天王の一尊です。
サンスクリット語で「ヴィルーパークシャ(Virūpākṣa)」といいます。
四天王は、仏教の世界観で中心にあるとされる須弥山(しゅみせん)の中腹に住んでいます。
そこから東西南北の四方を守っているんですね。
広目天が守るのは西の方角。
帝釈天(たいしゃくてん)という神様に仕え、仏教の教えと世界を守る役目を担っています。
広い目で何を見ているの?
「広目天」という名前、そのまんまですが「広い目を持つ者」という意味なんです。
元のサンスクリット語「ヴィルーパークシャ」は「種々の眼をした者」という意味。
これが「尋常でない眼」「特殊な力を持った眼」と解釈されて、さらに千里眼にまで拡大解釈されました。
そこから「広目」と訳されたんですね。
つまり広目天は、世界のあらゆる場所を見渡せる千里眼の持ち主。
悪を見逃さず、人々の行いを監視する役割を担っています。
知識や智慧を司る神様ともされていて、正しい判断を下すために世界を観察しているんです。
どんな姿をしているの?
広目天の像を見ると、いくつか特徴的なものを持っています。
代表的なのは「筆」と「巻物(経巻)」。
見たことを記録する学者のような姿ですね。
別のバージョンでは、「羂索(けんさく)」という両端に金具がついた捕縛用の縄と、「宝珠」を持っていることもあります。
悪を縛り上げる警察官のようなイメージでしょうか。
さらに、手に「蛇」や「龍」を持った姿で表現されることもあるんです。
これは後で説明する、広目天の従者と関係があります。
色は赤色で表されることが多く、甲冑姿で厳しい表情をしているのが一般的です。
龍を従える西の守護者
広目天が従えているのは「龍族(ナーガ)」。
龍王とも呼ばれる、人間と蛇の姿を行き来できる神秘的な存在です。
インドの神話では、ナーガは水や雨を司る存在とされています。
農業にとって重要な雨をもたらす、ありがたい存在なんですね。
広目天が龍を従えているのは、この水の力を通じて豊穣をもたらすという意味もあります。
単なる監視役だけじゃなく、恵みをもたらす神様でもあるわけです。
ちなみに、他の三天王もそれぞれ異なる従者を持っています。
持国天は乾闥婆(けんだつば・天の音楽家)、増長天は鳩槃荼(くはんだ・鬼神)、多聞天は夜叉(やしゃ・鬼神)を従えているんです。
四天王の中での立ち位置
四天王は、それぞれが違う役割を持っています。
東の持国天は「国を支える」役割。
南の増長天は「恵みを増大させる」役割。
西の広目天は「広く見通す」役割。
北の多聞天は「仏の教えを多く聞く」役割。
この中で、広目天は知識と情報を司る存在として位置づけられています。
世界中の出来事を見渡し、記録し、正しい判断のための情報を提供する——まるで現代で言う「情報の神様」みたいな感じですね。
お寺では、本尊(ご本尊となる仏像)を中心に、四天王が四隅に配置されます。
須弥壇(仏像が安置されている台)に向かって、右前から右回りに「持国天・増長天・広目天・多聞天」という順番が一般的です。
四天王の中でも、北の多聞天だけは特別扱い。
単独でも信仰され、その時は「毘沙門天(びしゃもんてん)」という名前で呼ばれます。
七福神の一人としても有名ですよね。
日本での信仰
広目天を含む四天王は、日本でも古くから信仰されてきました。
奈良の東大寺や京都の東寺など、有名なお寺に四天王像が安置されています。
特に奈良時代には、鎮護国家(国を守る)の思想と結びついて重要視されました。
国の四方を守る守護神として、国家的な信仰の対象になったんです。
現代でも、多くの仏教寺院で四天王像を見ることができます。
お寺を訪れたときは、四隅をチェックしてみてください。
きっと、厳しい表情で仏教世界を守る広目天の姿を見つけられるはずです。
まとめ
- 広目天は仏教の四天王の一尊で、西方を守護する神様
- 「種々の眼」「千里眼」を持ち、世界を見渡す役割を担う
- 筆と巻物、または羂索と宝珠を持ち、知識と智慧を司る
- 龍族(ナーガ)を従え、水の恵みももたらす
- 日本では奈良時代から鎮護国家の神として信仰されてきた
広い目で世界を見渡し、悪を見逃さない——広目天は、まさに仏教世界の「監視の目」なんですね。
お寺で四天王像を見かけたら、ぜひその厳しい表情と持物に注目してみてください。


コメント