禅問答一覧|有名な公案30選をわかりやすく解説

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「犬に仏性はあるか?」と問われて、あなたなら何と答えますか?
こんな不思議な問いかけが、禅の世界では修行のカギを握っています。

禅問答(公案)は、一見すると意味不明な問答に見えるかもしれません。
でも実は、論理的思考を超えた「悟り」へと導くための、深い智慧が込められているんです。

この記事では、有名な禅問答を厳選して紹介します。
難解なイメージのある禅問答を、できるだけわかりやすく解説していきますね。

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禅問答(公案)って何?

禅問答は、禅宗の修行で使われる問題のことです。
正式には「公案(こうあん)」と呼ばれています。

もともと「公案」という言葉は、中国で「役所の記録」や「裁判の判例」を意味していました。
それが禅の世界では、過去の高僧たちの言動を記録したものとして使われるようになったんです。

師匠が弟子に公案を与えると、弟子はそれを何日も何年もかけて考え抜きます。
「正解」を頭で考え出すのではなく、直感的に真理を体得することが目的なんですね。

臨済宗では約1700則の公案があるとされています。
有名な公案集には『無門関』『碧巌録』『従容録』などがあります。

これだけは知っておきたい!超有名な禅問答5選

まずは、禅の世界で特に有名な公案を5つ紹介します。

1. 趙州狗子(ちょうしゅうくし)

問い:「犬にも仏性はありますか?」
答え:「無(む)」

ある修行僧が趙州従諗(じょうしゅうじゅうしん)という禅師に尋ねました。
仏教では「すべての生き物に仏性がある」と教えられています。

それなのに趙州は「無」と答えたんです。
これは単なる「ない」という意味ではありません。

有無という二元的な考え方を超えた境地を示しているとされています。
『無門関』の第1則として、最も重要な公案の一つです。

2. 隻手の声(せきしゅのこえ)

問い:「両手を打ち合わせると音がする。では、片手ではどんな音がするか?」

これは江戸時代の白隠慧鶴(はくいんえかく)禅師が創案した公案です。
臨済宗の道場では、入門者が最初に与えられることが多いんですよ。

片手では物理的に音は出せません。
でも白隠禅師は「その音を聞いてこい」と言うわけです。

この公案の目的は、日常的な思考の枠組みを打ち破ることにあります。
論理では答えられない問いに向き合うことで、分別心を超えた境地を目指すんですね。

3. 祖師西来意(そししさいらいい)

問い:「達磨大師が中国に来られた真意は何か?」
答え:「庭の柏の木だ」

達磨大師は禅宗の開祖とされる人物です。
その達磨がインドから中国に来た意味を問われて、趙州禅師は「庭の柏の木」と答えました。

これも意味不明に聞こえますよね。
でも、目の前にある「今ここ」の現実こそが真理だという教えが込められています。

難しい教義や理屈ではなく、ただそこに在るものをそのまま見る。
それが禅の本質なんです。

4. 父母未生以前(ふぼみしょういぜん)

問い:「父母が生まれる前の、あなたの本来の面目は何か?」

両親が生まれる前、つまりあなたが存在する前の「本当の自分」とは何か。
時間も空間も超えた、本質的な自己を問うています。

これは初心者に与えられることの多い公案です。
生死や因果を超えた、根源的な生命の姿を体得することが求められます。

5. 百丈野狐(ひゃくじょうやこ)

問い:「悟った人は因果の法則に縛られないのか?」
答え:「因果を昧(くら)まさず」

ある老人が百丈禅師を訪ね、自分の前世の話をしました。
かつて修行僧に「悟った人は因果に落ちない」と答えたために、500年間も狐に生まれ変わり続けていると言うのです。

百丈は「因果を昧まさず」と答えました。
つまり、悟った人でも因果の法則から逃れられるわけではなく、むしろその法則を明確に理解しているということです。

その言葉を聞いた老人は、狐の身から解放されたと言います。

有名な公案集を紹介

禅問答は様々な書物に収録されています。
ここでは代表的な3つの公案集を紹介しますね。

『無門関(むもんかん)』

南宋時代の無門慧開(むもんえかい)が1228年に編纂しました。
48則の公案が収められています。

『無門関』という名前は「門なき関門」という意味です。
形式的な入口はないけれど、それを透過しなければ悟りには至れない。

そんな矛盾した境地を表現しているんですね。
日本では江戸時代以降、特に重視されるようになりました。

第1則の「趙州狗子」は、禅問答の中でも最重要とされています。

『碧巌録(へきがんろく)』

雪竇重顕(せっちょうじゅうけん)と圜悟克勤(えんごこくごん)によって1125年に完成しました。
100則の公案が収められています。

各公案には「垂示」「本則」「評唱」「頌」という4つの部分があります。
つまり、序文・本文・批評・詩という構成になっているんです。

『碧巌録』は「宗門第一の書」と呼ばれ、禅文学としても高く評価されています。
室町時代の五山の禅僧たちは、これを最も優れた教科書として学んでいました。

『従容録(しょうようろく)』

曹洞宗の万松行秀(ばんしょうぎょうしゅう)が編纂した公案集です。
100則が収録されています。

臨済系の『碧巌録』に対して、曹洞宗で重視される公案集として知られています。
宏智正覚(わんしせいかく)の『頌古百則』をもとに作られました。

『無門関』とほぼ同じ時期に成立しており、第18則は『無門関』第1則とほぼ同じ「趙州狗子」を扱っています。

白隠禅師と江戸時代の禅問答

江戸時代になると、白隠慧鶴(1686-1769)という禅師が登場します。
彼は臨済宗の中興の祖と呼ばれる人物です。

白隠は公案の体系を整理し、新しい公案も創案しました。
「隻手の声」は白隠の代表的な創作公案です。

白隠は「狗子仏性」の公案よりも「隻手の声」の方が、修行者に悟りをもたらしやすいと考えていました。
実際に弟子たちで試して、効果を確認していたそうです。

また白隠は一般民衆への布教にも力を入れ、禅画や書を数多く残しています。
「聞か猿」という禅画には、片手を上げた猿がホトトギスの声を聞こうとする姿が描かれています。

これは「隻手の声」をユーモラスに表現したものなんですね。

禅問答の奥深さ

禅問答には決まった正解がありません。
同じ公案でも、答える人の境地によって応答は変わります。

例えば、ある修行僧が老師(師匠)のもとを訪れて公案の答えを提示します。
言葉で答える場合もあれば、黙って何かの動作をする場合もあります。

老師はその応答から、修行僧がどれだけ深く理解しているかを見極めるんです。
形だけ真似ても通用しません。

心の底から体得していなければ、老師には見抜かれてしまいます。

また、公案は段階的に与えられます。
初心者向けの「初関」から始まり、徐々に難しい公案へと進んでいくんですね。

白隠禅師が組み直した公案体系には「法身」「機関」「言詮」「難透」「向上」という5つの段階があります。

禅問答一覧表

ここでは有名な禅問答を一覧表でまとめました。
各公案の概要を簡潔に紹介します。

公案名出典概要
趙州狗子(ちょうしゅうくし)無門関 第1則犬に仏性はあるかと問われ「無」と答える
百丈野狐(ひゃくじょうやこ)無門関 第2則悟った人は因果に落ちないのかを問う
倶胝竪指(ぐていじゅし)無門関 第3則何を問われても指一本を立てる倶胝和尚の話
胡子無鬚(こすむしゅ)無門関 第4則西域人にヒゲがないのはなぜか
香厳上樹(きょうげんじょうじゅ)無門関 第5則木の上で口に枝をくわえた状態で問いに答えよ
世尊拈花(せそんねんげ)無門関 第6則お釈迦様が花を拈じて微笑む
趙州洗鉢(ちょうしゅうせんぱつ)無門関 第7則粥を食べたら鉢を洗えという趙州の教え
奚仲造車(けいちゅうぞうしゃ)無門関 第8則車を作った奚仲と仏法の関係
大通智勝(だいつうちしょう)無門関 第9則仏が悟りを開くのに十劫かかった
清税孤貧(せいぜいこひん)無門関 第10則清税禅師の貧しさについて
州勘庵主(しゅうかんあんじゅ)無門関 第11則趙州が庵主を試す
巌喚主人(がんかんしゅじん)無門関 第12則巌和尚が自分を呼ぶ
徳山托鉢(とくさんたくはつ)無門関 第13則徳山和尚が托鉢に出る時間を間違える
南泉斬猫(なんせんざんみょう)無門関 第14則南泉和尚が猫を斬る
洞山三頓(とうざんさんとん)無門関 第15則洞山が三度叩かれる
鐘声七條(しょうしょうしちじょう)無門関 第16則鐘の音と七条の袈裟
国師三喚(こくしさんかん)無門関 第17則国師が侍者を三度呼ぶ
洞山三斤(とうざんさんぎん)無門関 第18則仏とは何かと問われ「三斤の麻」と答える
平常是道(びょうじょうぜどう)無門関 第19則平常心こそが道である
大力量人(だいりきりょうにん)無門関 第20則大力の人が自分の足を持ち上げられない
雲門屎橛(うんもんしけつ)無門関 第21則仏とは何かと問われ「乾いた糞べら」と答える
迦葉刹竿(かしょうせつかん)無門関 第22則迦葉尊者が刹竿を倒す
不思善悪(ふしぜんあく)無門関 第23則善でも悪でもない時の本来の面目
離却語言(りきゃくごごん)無門関 第24則言葉を離れて教えを説け
三座説法(さんざせっぽう)無門関 第25則三度法座に登って説法する
二僧巻簾(にそうけんれん)無門関 第26則二人の僧が簾を巻く
非心非仏(ひしんひぶつ)無門関 第27則心でもない、仏でもない
久嚮龍潭(くこうりゅうたん)無門関 第28則龍潭に長く憧れていた
非風非幡(ひふうひはん)無門関 第29則風でもなく幡でもなく、心が動く
即心即仏(そくしんそくぶつ)無門関 第30則心がそのまま仏である

碧巌録の有名な公案

公案名概要
聖諦第一義(しょうたいだいいちぎ)達磨と武帝の問答
趙州至道無難(ちょうしゅうしどうぶなん)至道は難しくない、選り好みしないだけ
馬大師不安(ばだいしふあん)馬祖禅師が病気の時の問答
徳山挟火(とくさんきょうか)徳山が火をつけて経典を燃やす
雲門日日是好日(うんもんにちにちぜこうじつ)毎日が良い日である

その他の有名な公案

公案名概要
隻手の声(せきしゅのこえ)白隠禅師作。片手の音を聞け
父母未生以前(ふぼみしょういぜん)両親が生まれる前の本来の面目
喫茶去(きっさこ)趙州が訪問者に「お茶でも飲んで行け」と言う
庭前柏樹子(ていぜんはくじゅし)祖師西来意の別名。庭の柏の木
無字(むじ)趙州狗子の別名

まとめ

禅問答(公案)について、重要なポイントをまとめます。

  • 禅問答は悟りを開くための修行ツールで、約1700則が存在する
  • 『無門関』『碧巌録』『従容録』が三大公案集として知られている
  • 「趙州狗子」「隻手の声」「祖師西来意」が特に有名
  • 論理的思考を超えた直観的理解を目指すもの
  • 白隠禅師が江戸時代に公案体系を整理し、新しい公案も創作した

禅問答は一見すると意味不明に見えるかもしれません。
でも、そこには深い智慧と、人間の本質を問う力強いメッセージが込められています。

正解を求めるのではなく、問いそのものと向き合い続けること。
それこそが禅問答の真髄なのかもしれませんね。

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