ホワイトバッファローウーマンとは?ラコタ族に聖なるパイプを授けた女神の伝説

神話・歴史・文化

「白いバッファローの子牛の女」と呼ばれる存在を知っていますか?
アメリカ先住民のラコタ族にとって、彼女は単なる神話上の存在ではありません。
今も生きた信仰の中心であり、2024年には「予言の成就」として世界的なニュースにもなりました。

この記事では、ホワイトバッファローウーマンの伝説から、彼女が授けた聖なる儀式、そして現代に続く信仰までをわかりやすく解説します。


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ホワイトバッファローウーマンの概要

ホワイトバッファローウーマン(White Buffalo Calf Woman)は、ラコタ語で「プテサンウィン(Ptesáŋwiŋ)」と呼ばれます。
ラコタ族をはじめとするスー族の神話において、最も神聖な存在のひとりです。

彼女は飢餓に苦しむ人々のもとに現れ、「聖なるパイプ(チャヌンパ)」と「七つの聖なる儀式」を授けました。
これによって人々は祈りの方法を知り、自然と調和して生きる術を学んだとされています。

伝承によれば、これは約19世代前——およそ2000年前の出来事だといわれています。


伝説の物語|二人の若者と聖なる女

物語は、大飢饉の時代から始まります。

ラコタの人々は食べるものがなく、バッファローの群れも姿を消していました。
酋長は二人の若い斥候を送り出し、獲物を探させます。

二人が丘の上に立って平原を見渡していると、遠くから白い雲のようなものが近づいてきました。
よく見ると、それは白い鹿革の衣をまとった美しい女性でした。

不敬な男の末路

一人の若者は、女性の美しさに心を奪われ、不純な考えを抱きます。
もう一人は「彼女は聖なる存在だ」と警告しましたが、聞き入れられませんでした。

欲望に駆られた男が女性に近づくと、突然二人は雲に包まれます。
雲が晴れたとき、そこにあったのは男の白骨だけ。蛇がその骨を這い回っていたといいます。

聖なる女からの使命

残った若者は恐れおののきますが、女性は穏やかに語りかけました。

「恐れることはありません。あなたの心は清いから。
村に戻り、大きなティピ(テント)を用意するよう伝えなさい。
4日後に、私は贈り物を持って訪れます」

若者は村に走り帰り、酋長に一部始終を報告しました。


聖なるパイプ(チャヌンパ)の意味

約束の4日後、女性は本当に現れました。
彼女が持っていたのが「聖なるパイプ」——チャヌンパです。

パイプのボウル(火皿)は赤い石でできており、これは大地を表しています。
柄の部分は木製で、地上に育つすべての植物を象徴しているとされます。
そしてボウルにはバッファローの姿が彫られ、四本足の動物たちを表していました。

パイプが結ぶもの

このパイプで祈ると、煙が天に昇っていきます。
この煙は「目に見える息吹」であり、人間の祈りをワカンタンカ(偉大なる神秘/グレートスピリット)へと届けるものだと教えられました。

つまり、聖なるパイプは「天と地」「人間と精霊」「あらゆる生命」を結びつける神聖な道具なのです。

興味深いのは、パイプの制作が男女の共同作業であること。
男性がボウルと柄を作り、女性がヤマアラシの針で装飾を施します。
これは男女の調和と協力を象徴しているといわれています。


七つの聖なる儀式

ホワイトバッファローウーマンは、パイプとともに「七つの聖なる儀式」を授けました。
これらはラコタの人々の精神生活の根幹をなすもので、現在も実践されています。

儀式名ラコタ語内容
魂の保持ワナギ・ユハピ亡くなった人の魂を1年間守り、解放する儀式
浄化の儀式イニピスウェットロッジで蒸気を浴び、心身を清める
ヴィジョンクエストハンブレチェヤ孤独と断食の中でビジョン(啓示)を求める
サンダンスウィワンヤン・ワチピ太陽に捧げる踊り。最も重要な儀式のひとつ
親族を作る儀式フンカピ血縁のない者を正式に家族として迎える
少女の成人儀式イスナティ・アウィチャロワンピ少女が大人の女性になることを祝う
球投げの儀式タパ・ワンカイェヤピバッファローの革で作った球を投げる。人生の道を象徴する

伝承によると、最初の儀式「魂の保持」はホワイトバッファローウーマンが直接教え、残りの6つは後に啓示として人々に伝えられたとされています。


ホワイトバッファローウーマンの去り方

すべてを教え終えると、彼女は村を去っていきました。
その去り方が、また印象的なのです。

丘を越えていく途中、彼女は大地に身を横たえ、転がりました。
すると彼女の姿は黒いバッファローに変わりました。

もう一度転がると、今度は赤茶色のバッファローに。
次は黄色いバッファローに。
そして最後に、真っ白なバッファローの姿になって、丘の向こうへ消えていったのです。

この4色は、四方位(東西南北)や人類の四つの人種を表すともいわれています。

彼女は去り際にこう告げました。

「私は四つの時代を通じてあなたたちを見守ります。
そして時代の終わりに、私は再び戻ってくるでしょう」


予言と白いバッファローの誕生

ホワイトバッファローウーマンは「白いバッファローの子牛の姿で戻ってくる」と予言しました。
そのため、白いバッファローの誕生は、ラコタの人々にとって極めて神聖な出来事なのです。

1994年「ミラクル」の誕生

1994年8月、ウィスコンシン州の農場で白いバッファローの子牛が生まれました。
「ミラクル(奇跡)」と名付けられたこの子牛は、1933年以来初めての白いバッファローとされ、多くの先住民が巡礼に訪れました。

2024年「ワカン・グリ」の誕生

2024年6月4日、イエローストーン国立公園で白いバッファローの子牛が確認されました。
野生の群れから白いバッファローが生まれるのは、100万頭に1頭以下の確率だといわれています。

この子牛は「ワカン・グリ(Wakan Gli)」と名付けられました。
ラコタ語で「聖なる帰還」を意味します。

命名式には約500人が集まり、第19代聖なるパイプの守り手であるアーボル・ルッキングホース酋長が儀式を執り行いました。


現代に続く信仰

聖なるパイプは、今もルッキングホース家によって守られています。
アーボル・ルッキングホース酋長は、12歳のときに祖母からこの役目を引き継ぎました。
19世代にわたって受け継がれてきた、生きた伝統なのです。

抑圧と復活

アメリカ政府は1890年代に先住民の宗教儀式を禁止しました。
サンダンスなどの儀式は違法とされ、人々は密かに信仰を守り続けました。

1978年の「アメリカン・インディアン宗教自由法」によって、ようやくすべての制限が解除されます。
現在、七つの聖なる儀式は公然と実践され、若い世代へと受け継がれています。

環境保護のシンボルとして

ホワイトバッファローウーマンの教えは、現代の環境問題とも深く結びついています。

ルッキングホース酋長は、2024年の白いバッファロー誕生について「祝福であると同時に警告でもある」と語りました。
「私たちは母なる大地のためにもっと行動しなければならない」というメッセージです。

彼は1996年から「世界平和と祈りの日」を主催し、環境保護と世界平和を訴え続けています。


まとめ

  • ホワイトバッファローウーマンは、ラコタ族に聖なるパイプと七つの儀式を授けた神聖な存在
  • 約2000年前、飢餓に苦しむ人々の前に現れたとされる
  • 聖なるパイプは天と地、人間と精霊を結ぶ神器
  • 去り際に4色のバッファローに変身し、最後は白いバッファローの姿で消えた
  • 「白いバッファローの子牛として戻る」という予言があり、その誕生は神聖視される
  • 2024年6月、イエローストーンで野生の白いバッファローが確認された
  • 聖なるパイプは19世代にわたり守られ、現在も生きた信仰として続いている

単なる「昔話」ではありません。
ホワイトバッファローウーマンの教えは、今この瞬間も、多くの人々の心の中で息づいているのです。

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