腕を曲げたり、歩いたり、笑ったり——私たちが当たり前にしている動きは、すべて筋肉のおかげって知っていましたか?
実は人間の体には600種類以上もの筋肉があるんです。体重の約40〜50%を占めるというから驚きですよね。しかも「筋肉」と一口に言っても、自分の意思で動かせるものから、心臓のように勝手に動き続けるものまで、種類はさまざま。
この記事では、人体にある筋肉を部位別に一覧で紹介しながら、それぞれの役割や面白い特徴をわかりやすく解説していきます。
筋肉とは?3つの種類を知ろう
まず基本から押さえておきましょう。人間の筋肉は大きく3種類に分けられます。
骨格筋(こっかくきん)
私たちが「筋肉」と聞いてイメージするのは、ほとんどがこれ。腕や脚、お腹、背中についていて、自分の意思で動かせる筋肉です。「随意筋(ずいいきん)」とも呼ばれます。
骨格筋は顕微鏡で見ると細かい縞模様があるため「横紋筋(おうもんきん)」という別名も。筋トレで鍛えるのは基本的にこの骨格筋ですね。
平滑筋(へいかつきん)
胃や腸、血管の壁にある筋肉です。自分の意思では動かせない「不随意筋」で、食べ物を消化したり、血液を全身に送ったりと、24時間休まず働いてくれています。
縞模様がなく「のっぺり」しているから平滑筋。地味だけど、生きていく上では絶対に欠かせない存在です。
心筋(しんきん)
心臓だけにある特別な筋肉。骨格筋と同じく縞模様がありますが、自分の意思では止められません。生まれてから死ぬまで、休むことなく収縮と弛緩を繰り返しています。
面白いのは、心筋は脳からの命令がなくても動けること。心臓には独自の「ペースメーカー」があって、自動的にリズムを刻んでいるんです。
「筋肉」の語源は「小さなネズミ」?
ちょっと面白い話をひとつ。英語で筋肉を意味する「muscle(マッスル)」は、ラテン語の「musculus」が由来です。
この「musculus」、実は「小さなネズミ」という意味なんですね。筋肉が収縮する様子が、皮膚の下でネズミが動いているように見えたからだとか。確かに、力こぶを作ると何かが動いているように見えるかも……?
骨格筋の分類と主要な筋肉
骨格筋は大きく「体幹筋」と「体肢筋」に分けられます。体幹筋は胴体部分、体肢筋は腕や脚の筋肉ですね。
ここからは部位別に、知っておきたい主要な筋肉を紹介していきます。
頭部・顔の筋肉
意外と知られていませんが、顔にもたくさんの筋肉があります。「表情筋」と呼ばれるもので、笑ったり怒ったりできるのはこの筋肉のおかげ。
注目ポイント:表情筋は骨につながっていない
普通の骨格筋は「骨→筋肉→骨」という形でつながっていますが、表情筋の多くは皮膚に直接くっついているんです。だから皮膚を細かく動かして、微妙な表情を作れるわけですね。
笑顔を作るには約17種類の筋肉が使われるのに対し、しかめっ面には約43種類もの筋肉が必要だという説も。笑っている方が省エネかもしれません。
首・肩の筋肉
デスクワークで凝りやすいのがこのあたり。肩こりの原因になる筋肉たちです。
僧帽筋(そうぼうきん)
背中の上部から首にかけて広がる大きな筋肉。名前の由来は、カトリックの修道士がかぶる「僧帽(フード)」の形に似ているから。肩をすくめたり、肩甲骨を動かしたりする働きがあります。
パソコン作業で猫背になると、この僧帽筋に負担がかかって肩こりに。現代人の宿敵とも言えるかもしれません。
胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)
首の横にある筋肉で、首を回したり傾けたりするときに使います。名前が長くて覚えにくいですが、「胸骨」「鎖骨」「乳様突起(耳の後ろの骨)」をつないでいることが由来です。
胸の筋肉
「厚い胸板」の正体がこちら。上半身の中でも特に大きな筋肉群です。
大胸筋(だいきょうきん)
胸の前面を覆う扇形の大きな筋肉。腕を前に押し出したり、腕を閉じたりする動きで使われます。腕立て伏せで鍛えられるのはこの筋肉ですね。
実は大胸筋は上部・中部・下部に分かれていて、それぞれ微妙に働きが違います。だから筋トレでも角度を変えて鍛える人が多いんです。
背中の筋肉
体の中で2番目に大きな筋肉群がある場所。姿勢を保つのに重要な役割を果たしています。
広背筋(こうはいきん)
背中の下部から脇の下にかけて広がる、上半身で最も大きな筋肉。懸垂や水泳のクロールで大活躍します。
「逆三角形の体型」を作るのに欠かせない筋肉で、ここを鍛えるとウエストが細く見える効果も。
脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)
背骨に沿って縦に走る筋肉群。「起立」の名の通り、体をまっすぐ立たせるのに必要です。腰痛の原因になることも多いので、デスクワーカーは要注意。
腕の筋肉
「力こぶ」でおなじみの部位。上腕と前腕で、働く筋肉が全く違います。
上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)
いわゆる「力こぶ」を作る筋肉。「二頭」の名前は、筋肉の上端が2つに分かれていることに由来します。肘を曲げるときに収縮して、腕を伸ばすと緩みます。
上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん)
力こぶの反対側、腕の裏側にある筋肉。実は上腕二頭筋より大きいんです。肘を伸ばすときに使われ、「二の腕のたるみ」が気になる人が鍛えたい場所でもあります。
名前通り、上端が3つに分かれているから「三頭筋」。二頭筋と三頭筋は正反対の動きをする「拮抗筋」の関係にあります。
お腹の筋肉
「腹筋を割りたい」と言うときの腹筋。実は複数の筋肉の総称です。
腹直筋(ふくちょくきん)
いわゆる「シックスパック」を作る筋肉。お腹の前面を縦に走っていて、「腱画」という横向きの線で区切られています。この腱画があるから、鍛えると6つ(人によっては8つ)に割れて見えるんですね。
腹斜筋(ふくしゃきん)
脇腹にある筋肉で、外腹斜筋と内腹斜筋があります。体をひねる動きで使われ、くびれを作るのに重要。ゴルフやテニスのスイングでも活躍します。
脚の筋肉
人体で最も大きな筋肉がある場所。立つ・歩く・走るといった基本動作を支えています。
大腿四頭筋(だいたいしとうきん)
太ももの前面にある、体で最も大きな筋肉群。4つの筋肉(大腿直筋・外側広筋・内側広筋・中間広筋)の総称です。膝を伸ばす動きを担当し、スクワットで鍛えられます。
ハムストリングス
太ももの裏側にある筋肉群の総称。大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋の3つで構成されています。膝を曲げたり、股関節を伸ばしたりする動きで活躍。
スポーツで「肉離れ」を起こしやすい部位としても有名。ダッシュやジャンプで急に力がかかると、筋繊維が断裂してしまうことがあります。
大臀筋(だいでんきん)
お尻の筋肉で、単独の筋肉としては人体最大。立ち上がる、階段を上る、走るといった動作の原動力になっています。人間が二足歩行できるのは、この大臀筋が発達しているおかげとも言われています。
下腿三頭筋(かたいさんとうきん)
ふくらはぎの筋肉。腓腹筋とヒラメ筋で構成されていて、つま先立ちするときに使います。「第二の心臓」とも呼ばれ、収縮することで下半身の血液を心臓に押し戻すポンプの役割も。
筋肉の名前に隠された意味
筋肉の名前には、ちゃんと意味があります。覚えるときの参考にしてください。
大きさを表すもの
- 大(だい)・小(しょう):大胸筋と小胸筋
- 長(ちょう)・短(たん):長内転筋と短内転筋
形を表すもの
- 三角筋:三角形の形
- 菱形筋:菱形の形
- 僧帽筋:僧侶の帽子の形
位置を表すもの
- 前(ぜん)・後(こう):前鋸筋、後脛骨筋
- 上(じょう)・下(か):上腕、下腿
- 内(ない)・外(がい):内側広筋、外側広筋
数を表すもの
- 二頭:上腕二頭筋(2つの頭を持つ)
- 三頭:上腕三頭筋(3つの頭を持つ)
- 四頭:大腿四頭筋(4つの頭を持つ)
筋肉の働き方:主動筋と拮抗筋
筋肉は単独では動きません。必ず反対の動きをする筋肉とペアになっています。
たとえば腕を曲げるとき、上腕二頭筋(力こぶ)が縮むと同時に、上腕三頭筋(裏側)は伸びます。この関係を「拮抗筋」と呼びます。
動きを起こす主役が「主動筋(アゴニスト)」、反対側で伸びるのが「拮抗筋(アンタゴニスト)」。さらに主動筋を補助する「協働筋(シナジスト)」もいて、複数の筋肉がチームワークで動いているんです。
速筋と遅筋:筋肉にも「タイプ」がある
骨格筋の筋繊維には、大きく分けて2つのタイプがあります。
速筋(白筋)
瞬発力に優れた筋繊維。短距離走やジャンプなど、素早い動きで活躍します。白っぽい色をしているので「白筋」とも。糖をエネルギー源にするため、長時間の運動には向きません。
遅筋(赤筋)
持久力に優れた筋繊維。マラソンなど長時間の運動で活躍します。酸素を運ぶミオグロビンが多いため、赤っぽい色をしています。
面白いことに、速筋と遅筋の比率は生まれつきほぼ決まっているんです。だから「短距離向きの体」「長距離向きの体」というのは、ある程度遺伝で決まっているわけですね。
部位別・筋肉一覧表
頭部・顔の筋肉
| 筋肉名 | 読み方 | 主な働き |
|---|---|---|
| 前頭筋 | ぜんとうきん | 眉を上げる、額にしわを作る |
| 後頭筋 | こうとうきん | 頭皮を後ろに引く |
| 眼輪筋 | がんりんきん | まぶたを閉じる |
| 口輪筋 | こうりんきん | 唇を閉じる、すぼめる |
| 大頬骨筋 | だいきょうこつきん | 口角を上外方に引く(笑顔) |
| 小頬骨筋 | しょうきょうこつきん | 上唇を引き上げる |
| 笑筋 | しょうきん | 口角を横に引く(えくぼを作る) |
| 口角下制筋 | こうかくかせいきん | 口角を下げる |
| 咬筋 | こうきん | 顎を閉じる(咀嚼) |
| 側頭筋 | そくとうきん | 顎を閉じる、顎を後ろに引く |
| 頬筋 | きょうきん | 頬を歯に押し付ける |
| 鼻筋 | びきん | 鼻孔を広げる・狭める |
| 皺眉筋 | しゅうびきん | 眉をひそめる |
| オトガイ筋 | おとがいきん | 下唇を突き出す |
首の筋肉
| 筋肉名 | 読み方 | 主な働き |
|---|---|---|
| 胸鎖乳突筋 | きょうさにゅうとつきん | 首を回す、傾ける |
| 斜角筋群 | しゃかくきんぐん | 首を傾ける、呼吸補助 |
| 頭板状筋 | とうばんじょうきん | 頭を後ろに反らす、回す |
| 頸板状筋 | けいばんじょうきん | 首を後ろに反らす、回す |
| 肩甲挙筋 | けんこうきょきん | 肩甲骨を上げる |
| 舌骨上筋群 | ぜっこつじょうきんぐん | 舌骨を上げる(嚥下) |
| 舌骨下筋群 | ぜっこつかきんぐん | 舌骨を下げる |
肩の筋肉
| 筋肉名 | 読み方 | 主な働き |
|---|---|---|
| 三角筋 | さんかくきん | 腕を上げる(前・横・後ろ) |
| 僧帽筋 | そうぼうきん | 肩甲骨を動かす、肩をすくめる |
| 棘上筋 | きょくじょうきん | 腕を横に上げる |
| 棘下筋 | きょくかきん | 腕を外に回す |
| 小円筋 | しょうえんきん | 腕を外に回す |
| 大円筋 | だいえんきん | 腕を内に回す、引く |
| 肩甲下筋 | けんこうかきん | 腕を内に回す |
胸の筋肉
| 筋肉名 | 読み方 | 主な働き |
|---|---|---|
| 大胸筋 | だいきょうきん | 腕を前に押す、閉じる |
| 小胸筋 | しょうきょうきん | 肩甲骨を前下方に引く |
| 前鋸筋 | ぜんきょきん | 肩甲骨を前に押し出す |
| 鎖骨下筋 | さこつかきん | 鎖骨を下げて固定 |
背中の筋肉
| 筋肉名 | 読み方 | 主な働き |
|---|---|---|
| 広背筋 | こうはいきん | 腕を引く、内に回す |
| 脊柱起立筋 | せきちゅうきりつきん | 体を起こす、姿勢を保つ |
| 菱形筋 | りょうけいきん | 肩甲骨を内側に引く |
| 多裂筋 | たれつきん | 背骨を安定させる |
| 回旋筋 | かいせんきん | 背骨を回す |
腕の筋肉
| 筋肉名 | 読み方 | 主な働き |
|---|---|---|
| 上腕二頭筋 | じょうわんにとうきん | 肘を曲げる、前腕を回す |
| 上腕三頭筋 | じょうわんさんとうきん | 肘を伸ばす |
| 上腕筋 | じょうわんきん | 肘を曲げる |
| 腕橈骨筋 | わんとうこつきん | 肘を曲げる |
| 円回内筋 | えんかいないきん | 前腕を内に回す |
| 回外筋 | かいがいきん | 前腕を外に回す |
| 橈側手根屈筋 | とうそくしゅこんくっきん | 手首を曲げる |
| 尺側手根屈筋 | しゃくそくしゅこんくっきん | 手首を曲げる |
| 長掌筋 | ちょうしょうきん | 手首を曲げる |
| 橈側手根伸筋 | とうそくしゅこんしんきん | 手首を反らす |
| 尺側手根伸筋 | しゃくそくしゅこんしんきん | 手首を反らす |
| 浅指屈筋 | せんしくっきん | 指を曲げる |
| 深指屈筋 | しんしくっきん | 指を曲げる |
| 総指伸筋 | そうししんきん | 指を伸ばす |
腹部の筋肉
| 筋肉名 | 読み方 | 主な働き |
|---|---|---|
| 腹直筋 | ふくちょくきん | 体を前に曲げる |
| 外腹斜筋 | がいふくしゃきん | 体をひねる、側屈 |
| 内腹斜筋 | ないふくしゃきん | 体をひねる、側屈 |
| 腹横筋 | ふくおうきん | 腹圧を高める |
| 腸腰筋 | ちょうようきん | 股関節を曲げる、姿勢を保つ |
| 腰方形筋 | ようほうけいきん | 体を横に曲げる |
臀部(お尻)の筋肉
| 筋肉名 | 読み方 | 主な働き |
|---|---|---|
| 大臀筋 | だいでんきん | 股関節を伸ばす、立ち上がる |
| 中臀筋 | ちゅうでんきん | 脚を横に開く、骨盤を安定 |
| 小臀筋 | しょうでんきん | 脚を横に開く |
| 梨状筋 | りじょうきん | 股関節を外に回す |
| 大腿筋膜張筋 | だいたいきんまくちょうきん | 脚を横に開く、膝を安定 |
太ももの筋肉
| 筋肉名 | 読み方 | 主な働き |
|---|---|---|
| 大腿四頭筋 | だいたいしとうきん | 膝を伸ばす |
| ├ 大腿直筋 | だいたいちょくきん | 膝を伸ばす、股関節を曲げる |
| ├ 外側広筋 | がいそくこうきん | 膝を伸ばす |
| ├ 内側広筋 | ないそくこうきん | 膝を伸ばす |
| └ 中間広筋 | ちゅうかんこうきん | 膝を伸ばす |
| 縫工筋 | ほうこうきん | あぐらをかく動き |
| 大腿二頭筋 | だいたいにとうきん | 膝を曲げる |
| 半腱様筋 | はんけんようきん | 膝を曲げる |
| 半膜様筋 | はんまくようきん | 膝を曲げる |
| 大内転筋 | だいないてんきん | 脚を閉じる |
| 長内転筋 | ちょうないてんきん | 脚を閉じる |
| 短内転筋 | たんないてんきん | 脚を閉じる |
| 薄筋 | はっきん | 脚を閉じる、膝を曲げる |
| 恥骨筋 | ちこつきん | 脚を閉じる |
ふくらはぎ・足の筋肉
| 筋肉名 | 読み方 | 主な働き |
|---|---|---|
| 腓腹筋 | ひふくきん | つま先立ち、膝を曲げる |
| ヒラメ筋 | ひらめきん | つま先立ち |
| 前脛骨筋 | ぜんけいこつきん | 足首を上に曲げる |
| 後脛骨筋 | こうけいこつきん | 足首を下・内に曲げる |
| 長腓骨筋 | ちょうひこつきん | 足首を下・外に曲げる |
| 短腓骨筋 | たんひこつきん | 足首を下・外に曲げる |
| 長趾伸筋 | ちょうししんきん | 足の指を伸ばす |
| 長趾屈筋 | ちょうしくっきん | 足の指を曲げる |
| 長母趾伸筋 | ちょうぼししんきん | 親指を伸ばす |
| 長母趾屈筋 | ちょうぼしくっきん | 親指を曲げる |
まとめ
この記事では、人体にある600以上の筋肉について解説してきました。
ポイントをおさらい
- 筋肉は骨格筋・平滑筋・心筋の3種類に分けられる
- 骨格筋は自分の意思で動かせる「随意筋」
- 「muscle」の語源は「小さなネズミ」を意味するラテン語
- 筋肉はペアで働く(主動筋と拮抗筋)
- 速筋と遅筋の比率は生まれつきほぼ決まっている
- 人体最大の筋肉は大臀筋(お尻)
普段何気なく使っている筋肉も、一つひとつに名前があって、それぞれ違う役割を持っています。自分の体の仕組みを知ると、運動やストレッチがもっと面白くなるかもしれませんね。

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