「VSCodeでローカルサーバーを立ち上げたけど、スマホで確認したい」
「チームメンバーに開発中のアプリを見せたい」
「ngrokみたいなツールなしで外部公開できないの?」
実は、VSCodeにはポート転送(Port Forwarding)機能が標準で搭載されています。
この機能を使えば、ローカル環境で動いているWebサーバーやアプリケーションを、外部から簡単にアクセスできるようにできるんです。
この記事では、VSCodeのポート転送機能の使い方を、初心者の方にもわかりやすく解説します。
VSCodeのポート転送とは

ポート転送(Port Forwarding)とは、ローカル環境(あなたのパソコン)で動いているサーバーを、インターネット経由で外部からアクセスできるようにする機能です。
なぜポート転送が必要?
通常、ローカルで開発しているWebサイトやアプリケーションは、localhost(127.0.0.1)でしかアクセスできません。
つまり、あなたのパソコンからしか見られないんです。
でも、こんなシーンで困りますよね。
困るシーン:
- スマホでの表示を確認したい
- デザイナーやクライアントに開発中の画面を見せたい
- チームメンバーとレビューしたい
- 外出先から自宅の開発環境にアクセスしたい
ポート転送を使えば:
- 外部からアクセス可能なURLが発行される
- そのURLを共有するだけで、誰でもアクセスできる
- ngrokなどの外部サービスを使わなくてもOK
VSCodeポート転送の仕組み
VSCodeのポート転送は、GitHubのサーバーを経由してトンネルを作成します。
流れ:
- あなたのパソコンで
localhost:3000でサーバーを起動 - VSCodeのポート転送機能で3000番ポートを転送
https://xxx.tunnel.vscode.devのような外部URLが発行される- このURLにアクセスすると、GitHubサーバー経由であなたのローカルサーバーに届く
安全に外部公開できるように、GitHubアカウントで認証されます。
いつから使える?
この機能は、VSCode version 1.82(2023年9月リリース)から標準搭載されています。
最新版のVSCodeを使っていれば、誰でも無料で使えます。
ポート転送を使う準備
必要なもの
- VSCode version 1.82以降
- GitHubアカウント(無料で作成可能)
GitHubアカウントでログイン
ポート転送機能を使うには、VSCodeでGitHubアカウントにログインする必要があります。
ログイン方法:
- VSCode左下のアカウントアイコン(人型アイコン)をクリック
- 「GitHubでサインイン」を選択
- ブラウザが開くので、GitHubの認証画面で許可
これで準備完了です。
ポート転送の基本的な使い方
実際にポート転送を使ってみましょう。
手順1:ローカルサーバーを起動
まず、ローカルでWebサーバーを起動します。
例1:Live Serverを使う場合
VSCodeの拡張機能「Live Server」をインストールしている場合:
- HTMLファイルを開く
- 右下の「Go Live」ボタンをクリック
- ブラウザで
localhost:5500が開く
例2:Node.jsサーバーを起動
# Reactアプリの場合
npm start
# ブラウザでlocalhost:3000が開く
# Next.jsの場合
npm run dev
# ブラウザでlocalhost:3000が開く
# Expressサーバーの場合
node server.js
# ターミナルに"Server running on port 3000"と表示
例3:Pythonの簡易サーバー
python -m http.server 8000
# ブラウザでlocalhost:8000にアクセス
どの方法でもOKです。まずはローカルでサーバーが動いていることを確認してください。
手順2:PORTSパネルを開く
VSCodeの画面下部(パネル)を見てください。
「ターミナル」「問題」などのタブの中に、「PORTS」(または「ポート」)というタブがあります。
開き方:
方法1:タブをクリック
- パネル下部の「PORTS」タブをクリック
方法2:ショートカットキー
- パネルが表示されていない場合は、Ctrl + J(MacはCmd + J)でパネルを開く
- その後、「PORTS」タブをクリック
方法3:ステータスバーから
- 画面右下のステータスバーにある「電波塔のようなアイコン」をクリック
手順3:ポート番号を入力
PORTSパネルを開くと、「Forward a Port」というボタンが表示されています。
操作:
- 「Forward a Port」ボタンをクリック
- 画面上部にポート番号の入力欄が表示される
- サーバーが動いているポート番号を入力(例:
3000) - Enterキーを押す
手順4:GitHub認証(初回のみ)
初めて使う場合は、ブラウザが開いてGitHub認証画面が表示されます。
表示されるメッセージ:
「次の場所の開発者用トンネルに接続しようとしています」
操作:
- 内容を確認
- 「Allow」または「続行」をクリック
これで、GitHubサーバー経由でポート転送が有効になります。
手順5:外部URLを取得
認証が完了すると、PORTSパネルに転送されたポート情報が表示されます。
表示される情報:
- Port:ポート番号(例:3000)
- Local Address:ローカルアドレス(localhost:3000)
- Forwarded Address:外部URLアドレス(例:
https://xxx-3000.tunnel.vscode.dev) - Visibility:公開範囲(Private または Public)
手順6:外部URLにアクセス
Forwarded Addressに表示されているURLをコピーして、ブラウザでアクセスしてみましょう。
初回アクセス時:
警告画面が表示されます。
「次の場所の開発者用トンネルに接続しようとしています」
操作:
「続行」ボタンをクリック
これで、ローカルで動いているサーバーに外部からアクセスできます!
公開範囲の設定(Private / Public)
デフォルトでは、転送されたポートはPrivate(プライベート)に設定されています。
Private(プライベート)
特徴:
- GitHubアカウントにログインしないとアクセスできない
- あなたのGitHubアカウントでログインした人だけが見られる
使いどころ:
- セキュリティを重視したい
- 限定されたメンバーとだけ共有したい
Public(パブリック)
特徴:
- GitHubログインなしで誰でもアクセスできる
- URLを知っていれば誰でも見られる
使いどころ:
- デザイナーやクライアントに見せたい(GitHubアカウントを持っていない人)
- スマホで確認したい
- 幅広い人に共有したい
公開範囲の変更方法
手順:
- PORTSパネルで、変更したいポートを右クリック
- 「Port Visibility」→「Public」を選択
または
- 「Visibility」列をクリック
- 「Public」に変更
これで、誰でもアクセスできるようになります。
便利な機能
ポートにラベルをつける
複数のポートを転送している場合、ラベルをつけると管理しやすくなります。
手順:
- PORTSパネルで、ラベルをつけたいポートを右クリック
- 「Set Port Label」を選択
- ラベル名を入力(例:「フロントエンド」「API サーバー」)
- Enterキーを押す
ポート転送を停止する
転送を停止したい場合は、簡単に削除できます。
手順:
- PORTSパネルで、停止したいポート上で右クリック
- 「Stop Forwarding Port」を選択
または
- ポートを選択
- PORTSパネル右上の「ゴミ箱アイコン」をクリック
VSCodeを閉じても、自動的に転送は停止されます。
ブラウザで直接開く
転送したURLを、VSCodeから直接ブラウザで開けます。
手順:
- PORTSパネルで、開きたいポート上で右クリック
- 「Open in Browser」を選択
自動的にポート転送する
毎回同じポートを使う場合、自動的に転送するように設定できます。
手順:
- プロジェクトのルートに
.vscodeフォルダを作成(なければ) .vscode/settings.jsonを開く(または作成)- 以下を追加:
{
"remote.autoForwardPorts": true,
"remote.portsAttributes": {
"3000": {
"label": "フロントエンド",
"onAutoForward": "notify"
},
"8000": {
"label": "バックエンド",
"onAutoForward": "openBrowser"
}
}
}
これで、サーバーを起動すると自動的にポート転送が開始されます。
よくある使い方シーン
シーン1:スマホで表示確認
手順:
- PCでローカルサーバーを起動
- VSCodeでポート転送を設定(Publicに)
- 発行されたURLをスマホのブラウザで開く
レスポンシブデザインの確認に便利です。
シーン2:デザイナーに確認してもらう
手順:
- VSCodeでポート転送を設定(Publicに)
- 発行されたURLをSlackやメールで共有
- デザイナーがブラウザでURLにアクセス
GitHubアカウントがなくても、URLだけで見てもらえます。
シーン3:チームレビュー
手順:
- VSCodeでポート転送を設定(Privateのまま)
- URLを共有(チームメンバーはGitHubアカウントでログイン)
- 全員で同じ開発環境を確認
セキュリティを保ちつつ、レビューできます。
シーン4:フロントエンドとバックエンドを同時に公開
手順:
- フロントエンドサーバーを起動(localhost:3000)
- バックエンドAPIサーバーを起動(localhost:8000)
- 両方のポートを転送
- それぞれのURLでアクセス
複数のサーバーを同時に公開できます。
Remote SSHでのポート転送

VSCodeのRemote SSH機能を使っている場合も、ポート転送が使えます。
使い方
リモートサーバーに接続している状態で、通常と同じ手順でポート転送を設定できます。
自動転送:
Remote SSH接続中は、リモートサーバーでサーバーを起動すると、VSCodeが自動的に検知してポート転送してくれます。
手動で追加:
- Ctrl + Shift + P(MacはCmd + Shift + P)でコマンドパレットを開く
- 「Forward a Port」と入力
- ポート番号を入力
リモートサーバーのポートが、あなたのローカル環境に転送されます。
WSL(Windows Subsystem for Linux)での使い方
WSLで開発している場合も、ポート転送が使えます。
基本的な流れ
- WSL内でサーバーを起動
- WSL側では自動的にWindowsホストにポートが転送される
- Windows側のVSCodeで「ポートの転送」を実行
- 外部URLが発行される
WSLを使っている場合、2段階のポート転送になりますが、操作は同じです。
注意点とセキュリティ
セキュリティリスク
ポート転送は便利ですが、セキュリティリスクもあります。
リスク:
- 外部にサーバーが公開される
- URLを知っている人がアクセスできる(Publicの場合)
- 機密情報が漏れる可能性
対策:
- 本番環境のデータは使わない
- 開発用のテストデータを使う
- 必要がなくなったらすぐに転送を停止する
- Publicは慎重に使う(基本はPrivateで)
VSCodeを閉じたらアクセスできなくなる
ポート転送は、VSCodeが起動している間だけ有効です。
VSCodeを閉じると、外部URLにアクセスできなくなります。
一時的な確認用として使いましょう。
長時間の公開には向かない
ポート転送は、あくまで一時的な確認・共有用です。
長時間公開したい場合は、以下を検討してください。
- Vercel、Netlifyなどのホスティングサービス
- Heroku、AWSなどのクラウドサービス
- Docker、クラウドのテスト環境
トラブルシューティング
Q1. PORTSタブが表示されない
A: VSCodeのバージョンが古い可能性があります。
確認方法:
- メニューから「ヘルプ」→「バージョン情報」
- version 1.82以降かチェック
古い場合は、VSCodeを最新版にアップデートしてください。
Q2. 「Forward a Port」ボタンが押せない
A: GitHubアカウントでログインしているか確認してください。
左下のアカウントアイコンから、GitHubでサインインしてください。
Q3. URLにアクセスしても表示されない
A: 以下を確認してください。
- ローカルサーバーが起動しているか
- ポート番号が正しいか
- VSCodeが起動しているか
- 公開範囲が正しいか(Publicにしたか)
Q4. 「Too many redirects」エラーが出る
A: ブラウザのキャッシュをクリアしてみてください。
または、シークレットモード(プライベートブラウジング)で試してみてください。
Q5. スマホからアクセスできない
A: 公開範囲がPublicになっているか確認してください。
Privateの場合、GitHubログインが必要です。
Q6. 複数のポートを同時に転送できる?
A: はい、できます。
「Forward a Port」を複数回実行すれば、複数のポートを同時に転送できます。
Q7. 転送したポートのURLを変更できる?
A: いいえ、URLは自動生成されます。
カスタムURLは設定できません。
Q8. ポート転送に料金はかかる?
A: いいえ、完全無料です。
VSCodeとGitHubアカウントがあれば、追加費用なしで使えます。
Q9. ngrokとの違いは?
A: 主な違い:
VSCodeポート転送:
- VSCode標準機能
- 無料
- GitHubアカウントが必要
- VSCodeから簡単に操作
ngrok:
- 独立したツール
- 無料プラン・有料プランあり
- カスタムドメイン設定可能(有料)
- より柔軟な設定が可能
簡単な確認ならVSCodeポート転送で十分です。
Q10. ポート転送が遅い
A: GitHubサーバーを経由するため、多少のレイテンシ(遅延)があります。
ローカルで確認するよりは遅くなることを理解しておきましょう。
まとめ:ポート転送を活用しよう!
VSCodeのポート転送機能についてまとめます。
ポート転送とは:
- ローカルサーバーを外部からアクセスできるようにする機能
- GitHubサーバー経由でトンネルを作成
- VSCode version 1.82から標準搭載
基本的な使い方:
- GitHubアカウントでログイン
- ローカルサーバーを起動
- PORTSパネルで「Forward a Port」をクリック
- ポート番号を入力
- 外部URLが発行される
公開範囲:
- Private:GitHubログインが必要(安全)
- Public:誰でもアクセス可能(便利だけど注意)
よく使うシーン:
- スマホでの表示確認
- デザイナーやクライアントへの共有
- チームレビュー
- リモート開発環境での作業
注意点:
- セキュリティリスクに注意
- あくまで一時的な確認用
- VSCodeを閉じるとアクセスできなくなる
- 機密情報は公開しない
メリット:
- 外部ツール不要
- 無料
- 設定が簡単
- VSCodeから直接操作できる
ポート転送機能を使えば、ngrokなどの外部サービスを使わずに、簡単にローカルサーバーを外部公開できます。
特に、スマホでの表示確認やチームメンバーとの共有に便利です。
ぜひ、この記事を参考に、VSCodeのポート転送機能を活用してみてください!


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