スマホで撮った写真や動画を、家族みんなでテレビの大画面で見たい。そんなとき、ケーブルでつなぐのは面倒ですよね。
そこで登場するのが「Miracast(ミラキャスト)」です。
この記事では、Miracastの基本から使い方、トラブル対処法まで、初心者の方でもわかるように丁寧に解説していきます。
Miracastってどんな技術なの?

Miracastは、Wi-Fi Allianceという団体が作った無線通信の規格です。
簡単に言えば、スマホやパソコンの画面を、ケーブルなしでテレビやモニターに映し出せる技術なんですね。
「ワイヤレスHDMI」と呼ばれることもあります。HDMIケーブルで画面をつなぐのと同じことが、無線でできると考えればイメージしやすいでしょう。
Wi-Fi Directという仕組みを使っている
Miracastは「Wi-Fi Direct」という技術を使っています。
これは、無線LANルーターを介さずに、機器同士が直接つながる仕組みです。Bluetoothに似ていますが、データの転送速度はBluetoothの約10倍も速いんですよ。
だから、動画のような大容量データもスムーズに送れるわけですね。
2012年から使われている実績のある技術
Miracastは2012年に発表された技術で、すでに10年以上の実績があります。
Android 4.2で標準サポートされたことをきっかけに、多くのスマホやテレビに搭載されるようになりました。Windows 8.1以降のパソコンも対応しています。
どんな機器がMiracastに対応しているの?
Android端末の対応状況
Android 4.2以降のスマホやタブレットの多くが対応しています。
代表的な対応機種:
- Google Pixelシリーズ
- Samsung Galaxyシリーズ
- Sony Xperiaシリーズ
- AQUOS(シャープ)
- HTC Oneシリーズ
ただし注意点があります。Android 6.0(Marshmallow)以降では、Googleが公式サポートを削除してしまいました。そのため、新しいAndroid端末では機種によって対応状況が異なります。
自分の端末が対応しているかは、設定アプリから確認できますよ(確認方法は後ほど説明します)。
Windows搭載パソコンの対応状況
Windows 8.1以降のパソコンが対応しています。
- Windows 8.1
- Windows 10
- Windows 11
ただし、パソコンのWi-Fiチップやグラフィックドライバーが対応している必要があります。特にIntelの第4世代・第5世代Coreプロセッサ以降が搭載されたパソコンなら、多くの場合対応していますね。
iPhoneやiPadは対応していない
残念ながら、iPhoneやiPadはMiracastに対応していません。
AppleはMiracastの代わりに「AirPlay」という独自の技術を使っています。iPhoneの画面をテレビに映したい場合は、Apple TVやAirPlay対応テレビが必要です。
これはAppleが自社のエコシステムを重視しているためですね。
テレビやモニターの対応状況
最近のスマートテレビの多くがMiracastに対応しています。
主な対応メーカー:
- Samsung(Smart View機能として搭載)
- LG(SmartShare機能として搭載)
- Sony(画面ミラーリング機能として搭載)
- AQUOS(シャープ)
- REGZA(東芝)
- Panasonic
また、テレビが対応していなくても大丈夫です。Miracast対応の受信アダプター(ドングル)をテレビのHDMI端子に差し込めば、Miracastが使えるようになります。
こうした受信アダプターは数千円から購入できるので、手軽に導入できますよ。
Miracastで何ができるの?具体的な使い道
写真や動画を大画面で楽しむ
スマホで撮影した写真や動画を、テレビの大画面で家族や友人と一緒に見られます。
旅行の思い出をみんなで振り返ったり、子どもの成長記録を大画面で楽しんだり。小さなスマホ画面では味わえない迫力がありますね。
プレゼンテーションに活用
ビジネスシーンでも大活躍します。
会議室のプロジェクターにパソコンの画面をワイヤレスで映し出せば、ケーブルの接続に時間を取られることがありません。発表者も自由に動きながら説明できるので、会議の質が向上しますよ。
ゲームを大画面でプレイ
スマホゲームをテレビの大画面でプレイできます。
ただし注意点として、Miracastには若干の遅延(ラグ)が発生します。アクションゲームのような反応速度が重要なゲームには向いていません。パズルゲームやシミュレーションゲームなら快適に遊べるでしょう。
カーナビとの連携
最近の自動車のカーナビにもMiracast対応のものが増えています。
スマホのナビアプリや音楽を車載ディスプレイに表示できるので、車内エンターテインメントが充実します。トヨタ車など、一部の自動車メーカーが積極的に採用していますね。
Android端末でMiracastを使う方法
対応確認の手順
まず、お使いのAndroid端末がMiracastに対応しているか確認しましょう。
確認手順:
- 「設定」アプリを開く
- 「接続」「ネットワークとインターネット」などの項目を探す
- 「キャスト」「スクリーンミラーリング」「ワイヤレスディスプレイ」などの表示を探す
これらの項目が見つかれば、あなたの端末はMiracast対応です。
接続する手順
端末とテレビを接続してみましょう。
基本的な接続手順:
- テレビのMiracast機能をオンにする
- テレビのリモコンで「入力切換」を選択
- 「ワイヤレスディスプレイ」「ミラーリング」などの項目を選ぶ
- Android端末の設定を開く
- 「設定」→「接続」→「キャスト」をタップ
- 機種によって「画面のキャスト」「スクリーンミラーリング」という名称の場合もあります
- 表示されたテレビ名をタップ
- 接続が完了すると、スマホの画面がテレビに映ります
初回接続時にPINコードの入力を求められる場合がありますが、画面の指示に従えば問題ありません。
メーカー別の設定名称
メーカーによって機能の呼び方が異なるので、参考にしてください。
Samsung(Galaxy): Smart View
Sony(Xperia): スクリーンミラーリング
シャープ(AQUOS): ワイヤレスディスプレイ
LG: SmartShare
自分の端末メーカーの呼び方を覚えておくと、設定画面で迷わずに済みますね。
Windows 10/11でMiracastを使う方法

対応確認の手順
Windows搭載パソコンでMiracastが使えるか確認します。
確認手順:
- Windows キー + K を押す
- 「デバイスが Miracast をサポートしていないため…」と表示される場合は非対応
- ワイヤレスディスプレイの一覧が表示される場合は対応
別の確認方法として、コマンドプロンプトで「netsh wlan show drivers」を実行し、「Wireless Display Supported: Yes」と表示されるかチェックする方法もあります。
接続する手順
パソコンからテレビに画面を映してみましょう。
Windows 10の場合:
- テレビのMiracast機能をオンにする
- パソコンで Windows キー + K を押す
- 「接続」パネルが開く
- 一覧からテレビを選択
- 表示モードを選択(複製、拡張、セカンドスクリーンのみ)
Windows 11の場合:
- テレビのMiracast機能をオンにする
- Windows キー + K を押す
- 「キャスト」パネルが開く
- 一覧からテレビを選択
- 表示モードを選択
初回接続時に認証が必要な場合がありますが、2回目以降はスムーズに接続できるようになります。
画面表示モードの選択
接続時に3つの表示モードから選べます。
複製(ミラーリング): パソコンの画面がそのままテレビに映る
拡張(セカンドディスプレイ): テレビを第2モニターとして使える
セカンドスクリーンのみ: パソコン画面は消えて、テレビだけに表示
プレゼンテーションなら「複製」、作業効率を上げたいなら「拡張」がおすすめですよ。
Miracastのメリット
ケーブル不要の快適さ
最大のメリットは、やはりケーブルが不要なことです。
HDMIケーブルを探したり、長さが足りなくて困ったりすることがありません。スマホを手に持ったまま操作できるので、とても便利ですね。
ルーター不要で直接接続
一般的なWi-Fi接続と違って、無線LANルーターが不要です。
Miracastは機器同士が直接つながるので、Wi-Fi環境がない場所でも使えます。ホテルや会議室など、外出先でも活躍しますよ。
高画質・高音質対応
MiracastはフルHD(1080p)や4K解像度に対応しています。
音声も5.1チャンネルサラウンド対応なので、映画やドラマを高画質・高音質で楽しめます。自宅でちょっとした映画館気分が味わえますね。
クロスプラットフォーム対応
AndroidでもWindowsでも使える標準規格です。
ChromecastやAirPlayと違って、特定のメーカーに縛られません。メーカーが異なる機器同士でも、Miracast対応なら接続できるのは大きな利点ですよね。
Miracastのデメリットと注意点
若干の遅延が発生する
無線通信のため、わずかなタイムラグ(遅延)が発生します。
写真や動画の鑑賞、プレゼンテーションなら問題ありませんが、リアルタイム性が重要なアクションゲームには向いていません。
遅延は通常0.1~0.5秒程度ですが、電波環境によっては1秒以上になることもあります。
電波干渉の影響を受けやすい
MiracastはWi-Fiと同じ2.4GHz帯の電波を使います。
そのため、電子レンジやBluetoothなどの影響を受けることがあります。画像が乱れたり、音が途切れたりする場合は、これらの機器から離れた場所で使うといいでしょう。
バッテリー消費が激しい
スマホから無線で画面を送り続けるため、バッテリーの減りが早いです。
長時間使用する場合は、充電しながら使うことをおすすめします。特にプレゼンテーションなど、途中でバッテリーが切れると困る場面では注意が必要ですね。
同時接続は1対1のみ
Miracastは基本的に1台の送信機から1台の受信機への接続しかできません。
複数のテレビに同時に映したい場合は、Miracastでは対応できないので、別の方法を検討する必要があります。
ChromecastやAirPlayとの違い
Miracast vs Chromecast
Miracast:
- 画面全体をそのまま映す(ミラーリング専用)
- ルーター不要
- Android、Windowsで使える
- 無料(追加機器が必要な場合を除く)
Chromecast:
- アプリから直接コンテンツを送信
- ルーターが必要
- AndroidでもiPhoneでも使える
- 別売りのデバイス(約5,000円)が必要
Chromecastの方が柔軟性が高く、動画を送信した後もスマホを別の作業に使えます。一方、Miracastは画面全体を映すので、どんなアプリでも使えるという利点がありますね。
Miracast vs AirPlay
Miracast:
- オープンスタンダード(どのメーカーでも使える)
- Android、Windowsで使える
- ミラーリング専用
AirPlay:
- Apple独自規格
- iPhone、iPad、Macで使える
- ミラーリングとストリーミング両方に対応
- Apple TVが必要(15,000円~)
AirPlayはAppleエコシステム内では非常に便利ですが、他社製品とは使えません。Miracastは開放的な規格なので、幅広い機器で使えるのが強みです。
よくあるトラブルと解決方法
テレビが見つからない・接続できない
原因と対処法:
- テレビのMiracast機能がオフになっている
→ テレビの設定を確認し、Miracast(ワイヤレスディスプレイ)機能をオンにする - 機器が離れすぎている
→ Miracastの通信距離は通常5~10メートル。近づけてみる - ファームウェアが古い
→ テレビや受信アダプターのファームウェアを最新版にアップデート - デバイスを再起動してみる
→ スマホ、パソコン、テレビすべてを一度再起動する
完全にシャットダウンしてから起動し直すと、うまくいくケースが多いですよ。
画面が途切れる・映像が乱れる
原因と対処法:
- 電波干渉が起きている
→ 電子レンジ、Bluetooth機器、他のWi-Fi機器から離す
→ 無線LANルーターが複数ある環境では電波が混雑している可能性がある - Wi-Fiとの干渉
→ スマホのWi-Fi接続を一時的にオフにする(Miracast接続時) - 距離が遠すぎる
→ 送信機器と受信機器を近づける - 高ビットレートの動画を再生している
→ 画質設定を下げてみる
映像の乱れが頻繁に起こる場合は、有線接続(HDMIケーブル)を検討するのも一つの方法です。
音声が出ない・映像と音声がズレる
原因と対処法:
- テレビの音量設定
→ テレビ本体の音量を確認する
→ スマホとテレビ両方の音量が影響するので、両方調整する - Bluetoothオーディオとの競合
→ Bluetoothイヤホンやスピーカーを接続していると音が出ないことがある
→ Bluetoothオーディオを切断してみる - 音声出力先の設定
→ パソコンの場合、サウンド設定で出力先をMiracast接続のテレビに変更する
音声と映像のズレについては、残念ながらMiracastの仕様上ある程度は避けられません。
「Miracastがサポートされていません」と表示される
原因と対処法:
- デバイスが実際に非対応
→ 別の接続方法(HDMIケーブルやChromecast)を検討する - ドライバーが古い(Windows)
→ グラフィックドライバーとWi-Fiドライバーを最新版に更新する
→ メーカーの公式サイトからドライバーをダウンロード - Wi-Fiがオフになっている
→ デバイスのWi-Fi機能をオンにする
特にWindowsパソコンの場合、ドライバーの更新で解決することが多いですね。
まとめ:Miracastで快適なワイヤレス生活を
Miracastは、スマホやパソコンの画面をテレビに無線で映せる便利な技術です。
Miracastのポイント:
- ケーブル不要でスマホ画面をテレビに映せる
- ルーターがなくても機器同士が直接つながる
- Android 4.2以降、Windows 8.1以降で使える
- iPhoneは非対応(AirPlayを使用)
- 若干の遅延があるのでゲームには不向き
- 写真・動画鑑賞やプレゼンテーションに最適
設定も難しくないので、一度試してみる価値は十分にあります。
特に家族や友人と写真を見たり、仕事でプレゼンをしたりする機会が多い方には、とても便利な機能ですよ。
テレビがMiracast非対応でも、数千円の受信アダプターがあれば使えるようになります。ワイヤレスの快適さをぜひ体験してみてくださいね。

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